クラトン(、)は、大陸地殻のうち、カンブリア紀以前に安定化した部分を指す。安定陸塊(あんていりくかい)、安定地塊(あんていちかい)、剛塊(ごうかい)とも呼ばれる。楯状地、プラットフォーム(卓状地)とほぼ一致し、造山帯、付加体に対立する概念である。代表例としては、カナダ楯状地を包含する北アメリカ・クラトン、インド楯状地、東ヨーロッパ・クラトン、東南極クラトンなどがある。これらは、最低でも5億年、大陸と超大陸の合体と分離の影響をほとんど受けずにきた大陸地殻の古い安定な部分である。いくつかのものは、20億年以上存在してきた。地表の侵食が進み、台地や準平原、構造平野などを形成している。クラトンは、通常は大陸の内部で見つかった。特徴として、花崗岩などの軽量の珪長質の火成岩から成る、古代の結晶質基盤岩の地殻からできている。これらは、厚い地殻と、マントル の中、200 kmの深さまでおよぶ根(下部リソスフェア)を持っている。クラトンという用語は、安定な大陸の内陸部分を、沈み込み帯などに伴って形成される、帯状の堆積物が成す地向斜性トラフ(つまり付加体)などから区別するのに使われる。散在する各大陸の中央クラトンは、楯状地とプラットフォームおよび結晶質基盤岩とほぼ一致する。楯状地はクラトンの一部であり、通常は先カンブリア時代の岩盤が、地表に散発的に露出している場所である。これに対して、プラットフォームは基盤岩が水平、またはほぼ水平な堆積物の層によって覆われたものである。クラトンという用語は、ドイツ人地質学者 L. Kober により、1921年に安定な大陸の台地(陸塊)"Kratogen"として導入された。また同時に、"orogen" が山あるいは造山帯を指す用語として導入された。後代の著作者たちが、前者を kraton と縮め、これがさらに craton となった。各クラトンは、地質学的にさらに細かい地質学的区域に分割される。各地質学的区域は、共通する地質学的な属性に基づいて空間的に仕切られた単体 (entity) である。各区域は、構造盆地や褶曲帯などの単一の支配的な構造要素のみを含む場合も、いくつかの連続した構造要素を含む場合もある。隣接する区域どうしは、同様の構造を持つ場合であっても、異なる形成履歴を持てば、別のものと見なされる場合もある。地質学的区域は、論議の文脈や背景によって、いくつかの異なる意味を持つ。大陸クラトンは、マントルの中まで達する深い根(下部リソスフェア)を持っている。マントルの地震波トモグラフィーによる解析では、クラトンがリソスフェアに相当する、異常に冷たいマントルの上に乗っており、このリソスフェアは、約100 kmの厚さを持つ、十分古い海洋性リソスフェア、あるいは非クラトン性大陸リソスフェアの、2倍以上の厚さを持つことを示している。従って、最深部では、いくつかのクラトンは、アセノスフェアに錨着しているのではないかとの論議がある。マントルの根は、化学的に区別されなければならない。なぜなら、クラトンは中立または正の浮力を持つはずであり、地熱反応による体積減少に伴う密度増加を相殺する程度に、本来の密度は低いことが要求されるからである。マントルの根の岩石サンプルはかんらん岩を含んでおり、これらは、キンバーライト・パイプと呼ばれる、ダイヤモンドを地下から地表に運び上げる、火山活動性のパイプの内容物として、地表に運び上げられる。これらの内容物は、クラトンの成分と矛盾しない密度を持ち、高温で部分融解を起こしたマントルの融け残り成分から構成されている。かんらん岩の団塊は、部分融解で変成したマントル岩石の一部分であり、深部の構成成分とクラトンの起源を理解するうえで重要である。斜方輝石かんらん岩 () はかんらん岩の一種であり、玄武岩やコマチアイトなどから、融解成分を取り除いた結晶質の残滓である。アルプス型かんらん岩は、最上部マントルのスラブ(多くは海洋リソスフェア)を起源にもち、やはり部分融解成分が抽出された残渣であるが、事後的に海洋地殻とともに、衝上断層に沿ってアルプス山脈まで押し上げられたものである。エクロジャイトと呼ばれる、かんらん岩に付随する一群の内容物は、成分的には海洋地殻に対応する岩石から構成されるが、深いマントル中の環境で変成作用を受けたものである。同位元素(アイソトープ)による研究は、多数のエクロジャイトの内容物は、古代の海洋地殻が、数十億年前に、キンバーライトのダイヤモンド領域に当たる、150 km以上の深さに沈み込んだものであることを明らかにした。これらは、深部で発生したマグマ噴出活動によって地表に運ばれるまで、浮遊状態のプレートの中に固定されたままであった。かんらん岩とエクロジャイトから成る内容物が、同時期に形成されたのであれば、かんらん岩も、数十億年前に海底を拡張した海嶺か、あるいは、海洋地殻の沈み込みの影響を受けたマントルに起源があることになる。地球形成後の初期の年代においては、惑星はもっと高温であり、海底を拡張する海嶺では、現在より大量の融解が発生し、厚い地殻(20 kmをはるかに越える厚さ)を持った海洋リソスフェアを生み出し、その分マントルの厚さは減殺された。従って、クラトン由来のマントルの根は、浮力を持ったまま沈み込んだ海洋リソスフェアから構成されていると考えられる。これらの深部のマントルの根は、クラトンの安定性、錨着力、存在の持続性を増大させ、プレート相互の衝突による、プレートの肥厚化や、堆積物の沈み込みに伴う破壊に対する、クラトンの感受性を大幅に低下させる働きを持つ。初期の岩石からクラトンが形成されたプロセスは、クラトン化 (cratonization) と呼ばれている。クラトン性の陸塊は、始生代に形成された。始生代初期においては、地球内部からの熱フローは、現在の3倍近くあった。これは、放射性同位元素の濃度が高かったことと、地球の降着形成 (accretion) 時の残熱が原因である。そのころのプレート運動および火山性活動は、現在より相当活発であった; マントルは現在よりも相当流動性が大きく、地殻はもっと薄かった。これは、海嶺とホットスポットにおける海洋地殻の急速な形成、および沈み込み帯における海洋地殻の、急速なリサイクリングの原因となった。地球の表面は、おそらく小さな多数のプレートに分断され、これに伴う火山島や弧状列島が大量に存在した。地殻性の岩石が、ホットスポットで融解と凝固を繰り返し、また沈み込み帯でリサイクルを繰り返すうちに、いくつかの始原大陸(つまりクラトン)が、形成された。始生代初期においては、大きな大陸は存在しなかった。おそらく、中始生代 (Mesoarchean) においては、高頻度の地殻変動が、より大きなユニットへの合体化を妨げたため、小さな始原大陸が普通であったろう。これらの珪長質の始原大陸(クラトン)は、ホットスポットでさまざまな材料: 珪長質岩を溶かし込んだ苦鉄質(mafic) のマグマ、部分融解した苦鉄質岩、変成作用を受けた珪長質岩の堆積物、などから形成されたであろう。最初のいくつかの大陸が始生代に形成されたにもかかわらず、この時代の岩石は、現在の世界のクラトンの7%を構成するにすぎない; 過去の形成物の侵食や破壊を勘案しても、証拠は、現在の大陸地殻のうち、始生代に形成されたのは、わずか5 - 40%程度に過ぎないことを示唆している (Stanley, 1999)。始生代に、クラトン化のプロセスが、最初どのようにして始まったかについての、一つの漸進的概観が、ハミルトンによって与えられている (Hamilton, 1999):大部分が海底にあった、非常に厚い苦鉄質の岩盤の部分、その下の超苦鉄質岩盤、火成岩の岩盤、そして最も若い、珪長質の火成岩、および堆積岩は、部分融解によって流動性となった地殻下部に駆動され上昇する、複数のドーム状の珪長質のバソリス(底盤)の間で圧縮されて、複雑な向斜を形成する。地殻上部の花崗岩とグリーンストーンの岩体は、ドーム状褶曲を伴う成分の転化を受けながら、穏やかな空間的な収縮を経て、地殻下部から切り離されるが、この後に、すぐにクラトン化が続く。トーナル岩性の基盤岩が、いくつかのグリーンストーンの区域の下に保存されているが、基盤岩直上の堆積岩 (supracrustal rock) は、ほとんどの場合、若い貫入岩に取って代わられる。マントルプルームはおそらくまだ存在せず、発達途上の大陸は、より冷えた地域に集められていった。熱い地域の上部マントルは、部分的に融解しており、大部分が超苦鉄質の大量のマグマが、地殻の最も薄い部分に一時的に集中的にできた、海底の火道や裂け目を通じて噴出した。現在まで生き残っている始生代の地殻は、より冷えた、マントルがより非活動的な地域でできた。そこでは、より大きな安定性が、部分的に融解した密度の低い珪長質岩が、通常はあり得ないほど厚い、火山性の集積物を形成することを許した。
出典:wikipedia
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