阪急2300系電車(はんきゅう2300けいでんしゃ)は、阪急電鉄が保有している通勤形電車である。本項では解説の便宜上、梅田側先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:2315以下7両編成=2315F)する。本系列は、1960年(昭和35年)に神宝線用の2000系(既に編成としては消滅)の姉妹車として登場した。現在の阪急電車の基礎を築いた系列の一つであり、基本デザインは最新の1300系にも受け継がれている。2000系との相違点は、当時神宝線の架線電圧が直流600Vであったのに対して、京都線が直流1,500Vであったため機器が当初より直流1,500V対応となっている点と、2000系が東京芝浦電気製の電装品を採用しているのに対して、京都線は前身の新京阪鉄道時代から東洋電機製造製の電装品を使用しており、本系列もそれに倣ったことである。本系列は、以下の4形式78両が1960年から1967年にかけて阪急電鉄の子会社であるナニワ工機で製作された。当初は2300形 - 2350形の2両編成を基本単位とし、京都線ではこれを2本連ねて4両編成で運転された。それゆえ中間車は1962年(昭和37年)以降の追加製作となっており、運転台の有無に関わらず(電動車・トレーラーとも)、同一形式に押し込んでいたために例外発生で管理上混乱が生じた2000系の反省から別の形式が新たに起こされて区分されており、判りやすい番号体系となっている。1961年(昭和36年)には2000系とともに第一回鉄道友の会ローレル賞受賞車となる。製造開始当時は特急専用車の2800系がまだ登場していなかったため、特急から普通まで幅広く使用されていた。東海道新幹線の仮線を走行した車両で最後まで残った系列でもあった(新幹線の線路を先に走った阪急電車も参照)。2015年(平成27年)3月20日に定期運用を終了、同月22日に最後まで残った2313Fによるさよなら運転を正雀駅 - 河原町駅間で行うことが阪急電鉄により発表された。また、それに先立つ2月20日より、同編成にさよなら記念ヘッドマークを掲出すること、ならびに、車体側面部にある現行コーポレートマークを撤去のうえ、かつての旧社章をステッカーで再現すること、以上の2点が合わせて発表された。予定通り、3月22日にさよなら運転が実施され、本系列は55年におよぶ運行を終了した。2000系と共通のシンプルな構造の準張殻構造軽量車体を備える。窓配置は運転台付きがd1D3D3D2、中間車が2D3D3D2(d:乗務員扉、D:客用扉)で戸袋窓なしの1,300mm幅両開き扉を備え、側窓は伝統の1段下降式であるが、ユニット式の新設計品が採用されている。なお、昭和38年度製作車を境にしてこの客用窓の窓ガラス支持サッシュ形状、方式が変更されており、昭和38年度より前の製作車は、客用窓ガラス四辺を囲む形のフレームが設置されているフレームサッシュ形状を、以後の製作車は、ガラス上端部のみに下降用ヒンジの兼用となったフレームが取り付けられたのみのフレームレスサッシュが採用され、これがサイズの変更やパワーウインドウ化など、マイナーチェンジを繰り返しながら以後8300系まで続くスタンダードとなった。初期に製造されたFS333(電動車用)・FS33(制御車・付随車用)アルストム台車装備車の車体下部水切りは、その後の増備車に比べ前後に長いものとなっていたのが特徴であった。 側面には2000系同様に電光式の列車種別表示器が設けられた。当初、いずれの形式も両側共に側面から見た時、中央の扉より左側のはじめの客用窓の上に表示機を設置していたが、後に行われた自動回転式方向幕の取り付け改造の折には、元々の表示機部分を流用することはなく新たに中央の扉より右側2枚目の客用窓上に表示機を設置するという手法での改造がなされた。なお初期製造車を中心とした自動方向幕取り付け改造の対象から外された車両においては、電光式表示機は原型のまま存置された。新造時は1,080mm幅の広幅貫通路が用いられていたが、1964年以降の製造車両は通常の貫通扉付きで製造された。後に広幅貫通路の大半が通常の狭幅貫通路に改造されている。座席は低座面のロングシートで、現在でも通用する優れた座り心地であったが、特急運用時には並行する京阪電気鉄道の特急車がクロスシート主体で多客時には補助いすまで持ち込むサービスぶりであったことから不評を買い、これは特急専用車として2800系が投入される一因となった。阪急伝統のマルーン塗装や木目調(マホガニー)の内装を受け継ぎつつ、現在まで続くデザインを確立した。本系列の制御器は電動カム軸制御器による抵抗制御と、ゲルマニウムトランジスタを用いた増幅器によってサーボモーターで円筒状に配された227段の界磁抵抗器(FR:Field Register)を超多段制御する分巻界磁制御を組み合わせて構成される東洋電機製造製ES-755Aで、これによって実現される定速度運転機能は50・65・80・90・100・105km/hと中高速域の6段階に指令可能であった。なお、認可最高速度が110km/hの京都線で指令速度が最高105km/hとなったのは、速度計の誤差許容範囲を2.5%見込んだことと、下り勾配でパイロットモーターを用いる本制御器の追従遅れが発生する可能性があることを見込んでのものでマージンを確保したためである。なお、起動加速度は2.8km/h/s(45km/hまで)である。主電動機は複巻補償巻線付き直流電動機である東洋電機製造製TDK-812-Aを採用し、これを1両分4個で永久直列接続にして使用された。なお、端子電圧340Vの永久直列から各主電動機にかかる定格電圧の合計は340x4=1,360Vとなるが、これは最高速度で運転している状態から回生制動を使用した際に発生する電圧を低く抑えるための方策であり、約10%のマージンが確保されていることになる。駆動システムは東洋電機製造が独自開発した、たわみ板による中空軸平行カルダンで、歯数比は84:16 (5.25) で神宝線用の姉妹車である2000・2100系が採用したWNドライブとは駆動音が異なり、静粛性ではこちらの方がやや勝っていた。本系列の台車は、同時期新造の2000系と同様に住友金属工業製のアルストーム・リンクおよびミンデンドイツ式金属ばね台車を標準とし、電動車は住友金属FS333・FS345を、制御車および付随車は住友金属FS33・FS45をそれぞれ使用した。また、1300系に引き続き本系列でも一部について汽車製造製のエコノミカルトラックと称する1自由度系軸箱梁式台車が試験的に採用されており、KS-65A・KS-65B・KS-71A・KS-71Bの4種が装着された。KS-65系は京都線のライバルである京阪が2000系に採用したKS-63系とほぼ同一設計で、軸箱に巻かれた防振ゴム板が薄く特に高速走行時のビビリ振動が顕著であったが、KS-71系では増厚されて乗り心地の改善が図られていた。もっとも、これらはいずれにせよ金属ばね台車であるFS-345・45と比較して明確な優位性が得られるものではなく、軌道条件が優れた京都線では特に必要ないと判断されて以後は再びFS345・FS45に戻り、京都線では特急車であり、既にKS-74系シンドラー式空気ばね台車を装着していた2800系第4編成の増結車に対するKS-74系台車の追加採用という例外はあったものの、一般車向けでは3300系のFS369・FS069まで空気ばね台車の採用は途絶えることとなった。ブレーキは複巻電動機採用のメリットをフルに生かすべく、常用タイプの回生制動機能が搭載されており、このため空制系もこの電動車による回生制動→電動車の空気ブレーキ→制御/付随車の空気ブレーキの順にブレーキに優先順位を付けて使用するHSC-Rとなっている。回生制動の失効を避けるべく、パンタグラフは離線対策として電動車各車に東洋電機製造PT-42-Lを2基ずつ搭載されることになったが、当初Mc-M-Tcの3連で新造されたグループは4基のパンタグラフが隣接して架線に悪影響を及ぼすのを避けるため、本来ならば2330形に取り付けられるべきパンタグラフ2基を隣の2350形に取り付けられ、パンタ無しTCと区別するため2360番台が付与され高圧引き通し線で給電する、という構造となっていた。さらに、1966年に4両編成化のために製造された2330形2341 - 2343の3両も、パンタグラフ2基を搭載して竣工している。ただし、実際に運用を開始した後に各パンタグラフを流れる電流量の調査を行った所、回生制動時でも電動車2両でパンタグラフが2基あれば充分であることが判明したため、以後2360番台と2341 - 2343のパンタグラフは撤去され、2330形は2300形から高圧母線を介して直流1,500V給電を受ける様に変更されている。1978年から1981年にかけて冷房化および主回路の界磁チョッパ制御装置 (東洋電機製造ES773) への更新が施工され、電動車を編成中に2両組み込んでいる3・4両編成については、電動車2両を1ユニットとして機器の集約分散搭載を実施する1C8M制御方式への改造が実施された。この際、2300形のうち2306・2308の2両についてはユニット化でペアとなる2330形が不足したことから、その不足を補うべく運転台を撤去して中間電動車化改造がなされた。この際、両車は主制御器やパンタグラフなどを撤去し、改造後の2330形と同様にコンプレッサー、補助電源装置等を搭載した。なお、2308については補助電源装置がMGにかわって、SVH120-456形SIVの試験搭載車として選ばれ、2300系では唯一のSIV搭載車となっていた。また編成中間に組み込まれた先頭車については、これら2両以外についても一部を除いて運転台・正面貫通扉・乗務員扉を撤去し、簡易運転台車または中間車へと改造されている。なお、一部の2300形は1C4M方式のまま更新され、ペアを組んでいる2350形においては2330形同様にコンプレッサー、補助電源装置が搭載され、床下台車間の機器配置は2330形同様のものとなっている。
出典:wikipedia
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