時間外労働(じかんがいろうどう)とは、労働基準法等において、法定労働時間を超える労働のことをいう。同じ意味の言葉に、残業(ざんぎょう)、超過勤務(ちょうかきんむ)、超勤(ちょうきん)がある。日本の法令において、時間外労働が許されるのは以下の3つのうちのいずれかに当てはまる場合に限られる。労働者の自発的な時間外労働は、使用者の指示・命令によってなされたものとはいえないので、労働基準法上の時間外労働とは認められない(東京地判昭和58年8月5日)。ただし、使用者の指示した仕事が客観的にみて正規の時間内ではなされえないと認められる場合のように、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えた場合には時間外労働となる(昭和25年9月14日基収2983号)。「災害その他避けることができない事由」とは、災害発生が客観的に予見される場合をも含む(昭和33年2月13日基発90号)。具体的な判断は個別の事情によるが、以下のような取扱いとなっている(昭和22年9月13日基発17号、昭和26年10月11日基発696号)。第33条1項による事後届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる(第33条2項)。この場合、休業手当を支払う必要はない(昭和23年6月16日基収1935号)。なお、派遣労働者については、事前許可・事後届出を行う義務を負うのは、派遣先の使用者である(昭和61年6月6日基発333号)。三六協定による時間外労働時間を、災害等の事由によりさらに延長しても差支えない(昭和23年7月27日基収2622号)。「公務のために臨時の必要がある」か否かについての認定は、一応使用者たる行政官庁に委ねられており、広く公務のための臨時の必要を含むものである(昭和23年9月20日基収3352号)。災害等の場合と異なり、事前許可・事後届出は不要である。また非現業官公署においては三六協定は不要である(昭和23年7月5日基収1685号)。第36条は時間外・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、第36条は労使がこのことを十分意識したうえで三六協定を締結することを期待しているものである(昭和63年3月14日基発150号)。三六協定には、以下の事項を定めなければならない(施行規則第16条1項)。三六協定は労使協定であるので、使用者と、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は事業場の労働者の過半数の代表者)とが時間外労働、休日労働について書面で締結しなければならない。また、労使協定は一般に締結した段階で効力が発生するものであるが、三六協定については行政官庁に届出なければ効力は発生しない。法定の協定項目について協定されている限り、労使が合意すれば任意の事項を付け加えることも可能である(昭和28年7月14日基収2843号)。「過半数代表者」については、管理監督者以外の者から、三六協定を締結することの適否を判断する機会が当該事業場の労働者に与えられていて、かつ労働者の過半数がその者を支持していると認められる民主的な手続き(投票・挙手・話し合い・持ち回り決議等)により選出されることとしなければならない(昭和63年1月1日基発1号)。また「過半数」の算定には、労働者であれば管理監督者、出向労働者(時間については受入、賃金については支払労働者)、送り出し派遣労働者、パートやアルバイト、さらには時間外労働が制限される年少者等(昭和46年1月18日基収6206号)、協定の有効期間満了前に契約期間が終了する労働者(昭和36年1月6日基収6619号)をも含むが、解雇係争中の労働者(労働基準法に違反しないと認められる場合。昭和24年1月26日基収267号)、受入れ派遣労働者は含まない。事業場に管理監督者しかいない場合は、そもそも三六協定の締結の必要はない。使用者は、労働者が過半数代表者であることもしくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしないようにしなければならない(施行規則第6条の2)。事業場に2以上の労働組合がある場合、一の労働組合が労働者の過半数を組織していればその労働組合と三六協定を締結することで、他の組合員や組合員でない者に対しても効力は及ぶ(昭和23年4月5日基発535号)。また、協定の締結相手の要件は協定の成立要件であって、存続要件ではないと解される。したがって、三六協定の締結当事者が過半数代表者でなかった場合、その協定は無効であるが、いったん有効に締結した過半数代表者がその後過半数割れを起こしたり、異動で管理監督者になったとしてもその協定は有効のままである。更新も可能であり、その旨の協定を届出ることで三六協定の届出に代えることができる(施行規則第17条2項)。協定に自動更新規定がある場合は、労使双方から異議の申し出がなかった旨の書面を届出れば足りる(昭和29年6月29日基発355号)。労使委員会が設置されている事業場(第38条の4第1項)においては、その委員会の5分の4以上の多数による決議によって、三六協定に規定する事項について決議が行われた場合において、これを行政官庁に届け出た場合は、当該決議は三六協定と同様の効果を持つ(第38条の4第5項)。三六協定を締結していても、それだけでは監督官庁からの免罰効果しかなく、時間外労働をさせるには、就業規則等に、所定労働時間を超えて働かせる旨の合理的な内容の記述があって初めて業務指揮の根拠となる(労働契約法第7条、最判平成3年11月28日)。さらに、三六協定を締結していない場合には、第33条第1項・第3項に該当する場合にのみ時間外労働が許される。したがって、三六協定に定めた限度を超えて時間外労働をさせることは労働者の同意にかかわらず法違反となる(昭和53年11月20日基発642号)。時間外労働を常態化して行う三六協定であっても、労働基準監督署は受理して差し支えない扱いとなっている(昭和23年12月18日基収3970号)。こういった諸要件を具備した上で、指揮命令をうけた労働者が正当な事由なく時間外労働を拒否した場合、就業規則によって定める懲戒処分の対象となることがある。なお派遣労働者を三六協定によって時間外・休日労働させるには、派遣元の事業場においてその旨の協定を締結しておかなければならない。行政官庁への届出は、所定の様式(様式第9号)が用意されていて、届出時に必要事項を記入する。実際には様式第9号をそのまま三六協定書面として使用することが多い。厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、三六協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる(第36条2項)。これに基づき、「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(限度時間基準)が告示されている(平成21年5月29日厚生労働省告示316号)。労使とも、三六協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容がこの基準に適合したものとなるようにしなければならない(第36条3項)。労使当事者は、三六協定において1日を超える一定の期間についての延長することができる時間を定めるに当たっては、当該一定期間は「1日を超え3箇月以内の期間」及び「1年間」としなければならない(限度時間基準第2条)。そして延長時間は、基準で定める限度時間を超えないようにしなければならない(限度時間基準第3条1項)。具体的には表の通りである。なお「1日」の延長時間には制限がないので、翌日の始業時刻まで時間外労働を行わせる前提で協定時間を設定、締結することは可能である。延長時間の限度は、以下の事業・業務には適用されない(限度時間基準第5条)。労働時間管理等について別途行政指導を行っている分野については、現行の指導基準の水準に到達させることが先決であること、事業又は業務の性格から限度時間の適用になじまないものがあること等の理由によるものである。なお、限度時間基準に規定する時間を超える時間外労働が離職の日の属する月の前6月間において「いずれか連続する3か月で45時間」「いずれか1か月で100時間」又は「いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間」を超える時間外労働が行われたことにより離職した労働者は、雇用保険における基本手当の受給において「特定受給資格者」(倒産・解雇等により離職した者)として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる(雇用保険法第23条、雇用保険法施行規則第36条5号イ)。また特定受給資格者を発生させた事業主には、雇用保険法上の各種の雇い入れ関係の助成金が当分の間支給されなくなる。厚生労働省「平成25年度労働時間等総合実態調査」によれば、三六協定を締結している事業場は、301人以上の事業場では96.1%であるのに対し、10人未満の事業場では46.8%となっていて、事業場規模が小さくなるほど締結率が低い傾向となっている。また延長時間は、限度基準上限(月45時間・年360時間)に集中化する傾向がある。三六協定の締結にあたり、前項の限度時間以内の時間を一定期間についての延長時間の原則として定めたうえで、労使が合意すれば、弾力措置として、限度時間基準を超えた時間数を設定することができる(限度時間基準第3条1項但書)。これを特別条項という。1年単位の変形労働時間制により労働する労働者についても特別条項付き協定を締結することができるが、限度時間の制限がない上述の事業・業務には本項の適用はない。特別条項付き三六協定には以下の事項を定めなければならない。特別条項付の三六協定を締結していたとしても、特別条項により協定された延長時間を超えた場合や、延長する回数制限を超えた場合、そして限度時間を超えて時間外労働を行わせる場合に協定されている手続きを踏んでいなければ労働基準法違反に問われる。しかし、そもそも超える協定を届けられても、是正を求める等行政指導は行われるものの、その他の要件が整っている限り届出を受理しないことはできず、協定が無効となることもない。特別条項の適用は個人単位(事業所単位でない)であるので、人を交代して配置すれば事業場としては1年を通じて上述の制限時間を超えた労働者を配置することができる。また、特別条項は、時間外労働の限度に関する基準という告示であるので、告示を守らない三六協定であっても労働基準監督署は最終的には受付を拒否できない。たとえば、月45時間を年6回を超える年12回の三六協定が届け出られても、受付を拒否はできない。労使協定で必要な時間数を協定して届出をしてしまえば、事実上労働基準法上の残業時間数には上限がないというのが現状である。厚生労働省「平成25年度労働時間等総合実態調査」によれば、特別条項付きの三六協定を締結している事業場は、301人以上の事業場では96.1%であるのに対し、10人未満の事業場では35.7%となっていて、事業場規模が小さくなるほど締結率が低い傾向となっている。また月80時間超の延長時間を定めている事業場は、301人以上の事業場では34.7%、10人未満の事業場でも21.5%となっている。月100時間超の延長時間を定めている事業場となると、301人以上の事業場では10.6%、10人未満の事業場でも5.5%となっている。概して、延長時間数は実労働時間数と比べても相当長めに設定されている。時間外労働は、一部の業務については無制限にできるものではなく、以下については制限がある。第41条では、労働時間等に関する事項について適用除外とするものがある。これらの者については、法定労働時間を超えて労働させることができ、時間外労働に対する割増賃金の支払義務もない。しかし、深夜業に対する割増賃金の適用除外はされておらず、深夜業の割増賃金は支払う必要がある。このため、深夜業の時間帯については、以下の者についても把握し、賃金台帳に記載する義務がある。就業規則、労働協約で定められた各事業所の労働時間(法定労働時間を超えない所定労働時間)を超えて行われる時間外労働は、法定労働時間を超える時間外労働と一致しないことがあり、そのうち法定労働時間の枠内で行われる時間外労働については三六協定を必要とせず(昭和23年4月28日基収1497号)、また、割増賃金の支払いも義務付けられていない(昭和22年12月15日基発501号、昭和63年3月14日基発150号)。しかし、日において超えていなくても、週において、あるいは、変形労働時間制にあっては変形期間において、法定労働時間を超過していないか、確認する必要がある。割増義務のない所定時間外労働における賃金の支払い根拠は労働協約・就業規則他に定めるところによる(昭和23年11月4日基発1592号)。労働者が遅刻をした場合に、その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、時間外労働は発生しない(昭和29年12月1日基収6143号)。また交通機関のストライキ等のために始終業時刻を繰上げ・繰下げすることは、実働8時間の範囲内であれば時間外労働の問題は生じない(昭和26年10月11日基発696号、昭和63年3月14日基発150号)。またこれらの場合に割増賃金の支給も不要である。所定休日のうち、週1回または4週4日(変形週休制)の法定休日における労働時間は時間外労働に含まれず休日割増賃金の対象となる。法定以上に付与する法定外休日における労働時間は、休日割増賃金相当の額が支払われても休日労働とはならず、法定労働時間内か時間外労働にあたるかの判断の対象となる。ただし、4週4日の休日制度を採用していれば、休日出勤を4週で4日までは法定休日出勤として時間外労働から除外することができる。法定休日が就業規則等に特定されていなくとも、所定休日労働における3割5分増し以上の賃金を払うとした対象日のうち、週の最後の1回または4週の最後の4日をもって法定休日と定めたものとして扱われる(平成6年1月4日労働省基発第1号)。労働基準監督官による臨検(強制立入調査、第101条以下)が行われた場合、三六協定が未締結であったり、三六協定に定める限度時間を超えて時間外労働をさせている、三六協定の労働者代表の選任方法が妥当ではない等の事実が認められると、36条違反を是正するよう指導される。世間の求めに応じ、近年監督実施件数は増加傾向にある。原則として臨検を拒否することは出来ず、監督官の臨検を拒んだり、妨げたり、尋問に答えなかったり、虚偽の陳述をしたり、帳簿・書類(法定帳簿・書類のみならず、第109条でいう「その他労働関係に関する重要な書類」を含み、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者自ら労働時間の記録をした報告書などが該当しよう(平成13年4月6日基発339号)とされており、労働時間が記録されたものすべてが該当するかどうかについては明確にされた通達ではない)を提出しなかったり、虚偽の帳簿・書類を提出した場合は、30万円以下の罰金に処せられる(第120条)。ただし、これらの記録には、会社への入退場の警備記録やパソコンのログなどは含まれないので、これらについては監督署からの提出は法的根拠がなく、提出を拒否しても罰則は適用されない。また過労死を引き起こす脳・心臓疾患の場合、発症前1ヶ月に100時間を超える時間外労働、あるいは直近の2~6ヶ月間の平均で80時間を超える時間外労働をしている場合には、その業務と発症の関連性が強いと判断され、労働基準監督署が業務災害を認定する可能性が高くなる(平成22年5月7日基発0507第3号)。うつ病などの精神障害の場合、発症前2ヶ月間につき120時間以上、あるいは発症前3ヶ月間に月100時間以上の時間外労働がある場合、強い心理的負荷(ストレス)があったと判断され、やはり労働基準監督署が業務災害を認定する可能性が高くなる(平成23年12月26日基発1226第1号)。事業者は、月100時間超の時間外労働により疲労の蓄積が認められる労働者(算定期日前1月以内に面接指導を受けた労働者その他面接指導の必要がないと医師が認めた者を除く)に対し、当該労働者の申出により、医師による面接指導を行わなければならない(労働安全衛生法第66条の8)。事業者は面接指導が行われた後、遅滞なく(おおむね1月以内。緊急に就業上の措置を講ずべき必要がある場合には可能な限り速やかに)当該医師から意見を聴かなければならない。事業者は、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。但し、1年間に臨検が行われてる事業場数は、毎年全事業場数の5%未満であるが、三六協定がない場合、三六協定の協定時間を超えている場合には是正勧告が行われる。しかし、三六協定の協定時間を増やして再協定を行えば、追加の行政指導が行われる可能性はあるものの、法律違反は簡単に解消してしまう。また、限度時間を超えていれば行政指導は行われるものの、行政指導には法的強制力は全くなく、「指導には従いません」という報告がされれば、行政指導の継続は問題となることがあり、中断せざるを得ない。三六協定を定めるに当たり、労働法についての知識が無い、労働組合等情報を共有する場が無い、労働者の入れ替わりが多い等の状況で十分な理解や話し合いの時間が無いまま協定が定められている場合もあり。協定に意見が公平に反映されない、最終的に書類を届け出る使用者の意向が反映される、内容が見直される事の無いまま協定が更新されるなど協定に必要な労使の合意が不十分な場合もある。また、立入調査等の対象の選定には1月80時間、1月100時間の基準があることから、1月79時間、1月99時間の協定にしておけば選定の対象から外れる可能性が高くなる。最近はこういう対策が多いため、1月78時間、1月98時間の協定にしておかなければ、選定の対象になってしまうこともある。また、なお、三六協定やその特別条項の範囲内での残業であれば、月100時間を超える時間外労働をさせていても36条違反ではないため、そのことのみをもって送検されることはない。もっとも、業務災害の認定に当たっては三六協定で定めた時間数にかかわらず、実際の時間外労働の時間数で判断される。時間外労働を行った場合、通常の労働時間(休日労働の場合は、労働日)の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(第37条第1項)。政令において定める率の最低限度として、時間外労働は2割5分、休日労働は3割5分ととしている。第33条・第36条に定める手続を取らずに時間外・休日労働をさせたとしても、割増賃金の支払い義務は生じる(昭和63年3月14日基発150号)。第37条は強行規定であるので、割増賃金を支払わない旨の労使合意は無効である(昭和24年1月10日基収68号)。また、使用者が午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域または期間については午後11時から午前6時まで)の間に労働させた場合においては、通常の労働時間における賃金の計算額の2割5分以上(時間外労働が深夜に及ぶ場合は5割以上、休日労働が深夜に及ぶ場合は6割以上)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(第37条第3項、労働基準法施行規則第20条)。なお、休日労働とされる日に時間外労働という考えはなく、休日労働が深夜に及ばない限り、何時間労働しても休日労働としての割増賃金を支払えばよい(昭和22年11月21日基発366号、昭和33年2月13日基発90号)。時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合、たとえ暦日を異にする場合であっても一勤務として取り扱い、その勤務は始業時刻の属する日の「1日」の労働とされる。したがって、時間外労働の割増賃金は、翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して支払えばよい(昭和26年2月26日基収3406号)。一方、翌日が法定休日であった場合は、翌日の午前0時以降の部分は休日労働としての割増賃金を支払わなければならない(昭和23年11月9日基収2968号)。どちらの場合においても、深夜時間帯については、深夜労働に対する割増賃金を合わせて支払わなければならない。平成22年4月施行改正法においては、時間外労働が月間60時間超となった場合、上の率は5割(時間外労働が深夜に及ぶ場合は7割5分)となる。なお以下の事業主(中小事業主。事業場単位ではなく企業単位)への適用は当面猶予され(第138条)、施行3年後に改正後の施行状況を勘案し、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じることとされる(附則第3条)。平成25年4月以降に厚生労働省が全国規模の施行状況の調査を開始している。第41条による適用除外者については、時間外・休日労働の割増賃金を支払う必要はないが、深夜業の割増賃金は支払わなければならない(労働協約・就業規則等により深夜の割増賃金を含めて所定賃金が定められている場合を除く)。この場合、当該深夜業に対する割増賃金の計算の基礎は、当該職種の労働者について定められた所定労働時間による(昭和22年12月15日基発502号)。派遣労働者については、派遣先の使用者に時間外労働をさせる権限があるかどうかにか関わらず、派遣先の使用者が派遣労働者に法定時間外労働をさせた場合は、派遣元の使用者に割増賃金の支払い義務が生じる(昭和61年6月6日基発333号)。1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることとすることは、事務を簡便にするという考えから第24条・第37条違反として取扱わない。また1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合や、1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることも同様に第24条・第37条違反とはしない(昭和63年3月14日基発第150号)。が、割増賃金の算定に用いる時間給となる(施行規則第19条)。こうして求めた時間給に、所定の割増率を乗じて求めた額を支払わなければならない。割増賃金の基礎となる賃金には、以下のものは算入しない(第37条第5項、施行規則第21条)。これらは限定列挙であって、これにあてはまらない賃金は、労働に付帯するものとしてすべて計算の基礎に含まれる(例えば、危険な作業が時間外・休日に行われた場合における危険作業手当は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない(昭和23年11月22日基発1681号))。またこれらに該当するか否かは、名称にとらわれず実質で判断しなければならない。なお、時間帯ごとに時間給が異なる場合は、就業規則等に特段の定めがなければ、その超えた時間帯における時間給に対して割増を行えば良い。例えば業務の繁閑により8時〜17時(休憩1時間)の時間給が1,000円で、17時〜22時は時間給800円である場合、所定労働時間が8時〜17時の者については17時以降は原則として1日8時間超えの時間外労働となり、800円を25%割増した1,000円を支払う必要がある。結果、事実上の割り増しがない場合もある。また、まれな例ではあるが、住宅手当が高額である場合には、1時間の単価が最低賃金を下回ることもある。例えば、1か月の住宅手当が15万円、1か月の基本給が1万円の場合、基本給の1万円が割増賃金の算定の基礎となるので、1時間の単価は、1万円を1月の法定労働時間の173時間程度で割ればよい。このため、1時間の単価は58円程度でよく、2割5分の割り増しをしても1時間当たり73円を払えば適法となる。また、最低賃金は住宅手当15万円と基本給が1万円を足した16万円を基準に考えるので、最低賃金額も問題なくなる。割増賃金が最低賃金を下回ることは少ないとしても、賃金のうち住宅手当の比率が高ければ高いほど、割増賃金の単価が下がるという関係になってはくる。年俸制の場合でも同法では時間外労働をした場合には年俸とは別に時間外手当を支給しなければならないことになっている。しかし、あらかじめ時間外の割増賃金を年俸に含めて支給することもできる(例:1ヶ月に45時間の時間外労働を含めて年俸制で支給する)。実際に時間外労働が発生しなくても支払われるこの割増賃金を「みなし残業手当」などと呼ぶこともある。この場合でも、その決定明記した時間外労働時数を超えて時間外労働をした場合については、毎月払いの原則があるため、その差額をその月の給与に加算して支払わなければならない。年俸制において、毎月払い部分と賞与部分とを合計して、あらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければならない。時間外労働が月60時間超となったために、5割以上の割増賃金を支払わなければならない労働者に対しては、労使協定の定めにより、当該労働者が代替休暇を取得したときは、その時間分の労働については割増賃金を支払わなくてもよい(第37条3項)。なお、割増賃金と代替休暇のどちらを選択するかは労働者の判断により、使用者が代替休暇の取得を強制することはできない。代替休暇を取得した日・時間については、通常の労働時間の賃金が支払われる。労使協定には以下の事項を定めなくてはならない。なおこの労使協定は行政官庁に届出る必要はない。代替休暇を取得して終日出勤しなかった日は、年次有給休暇の算定基礎となる「全労働日」に含まないものとして取り扱うこととされる(平成21年5月29日基発0529001号)。国際労働機関の第1号条約(日本は未批准)では、例外規定はあるが「家内労働者を除いた工業におけるすべての労働者の労働時間は1日8時間、1週48時間を超えてはならない」と決められている。主な批准国は、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、ポルトガル、スペイン、ニュージーランド、スロバキア、チリ、イスラエル。
出典:wikipedia
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