航空交通管制(こうくうこうつうかんせい Air traffic control, ATC)とは、航空機の安全かつ円滑な運航を行うために、主に地上から航空交通の指示や情報を航空機に与える業務のことである。航空管制とも。航空交通管制は、「航空機相互間及び走行地域における航空機と障害物との間の衝突予防並びに航空交通の秩序ある流れを維持促進するための業務」をいい、管制業務を行う資格を有し、かつ当該業務に従事している者を航空管制官(Air traffic controller)という。また、航空管制が実施されている空域を管制空域()と呼ぶ。管制業務は航空交通業務のうちの1つとして位置付けられており、航空交通業務は以下の業務の総称をいう。管制業務を行う機関を管制所といい、管制所で行う管制業務には6つの業務(技能試験を行う対象としての業務は8つ)がある。カッコ内は各管制所の無線呼出符号。各管制所は管制業務の他に上記に掲げた飛行情報業務と警急業務も行う。飛行場管制所は、空港内管制塔のVFRルームで、ターミナル管制所は大抵管制塔内VFRルーム階下にあるIFRルーム(レーダールーム)で業務を行っている。日本では管轄する空域(福岡飛行情報区)を大きく5つに分割し、札幌、東京、福岡、那覇の各航空交通管制部と航空交通管理センターで航空路管制業務を行っている。レーダー管制業務を開始するためには航空機に対してレーダー識別をしなければならず、識別されるまではレーダーを用いない航空路管制業務が実施される。したがってレーダーを用いない航空路管制業務はレーダーを用いる航空路管制業務の技能試験を受験する際に予め取得していなければならない。東京国際空港(羽田空港)から大阪国際空港(伊丹空港)までのIFR(計器飛行方式)による飛行を例にとると、出発から到着までの管制業務の流れは概ね次のようになる:国際民間航空機関(ICAO)の規定に基づき、英語もしくは母国語で交信する。実際は国籍にかかわらず英語を使用することがほとんどだが、緊急事態の場合はパイロットの負担を考慮して母国語に切り替えることがある。空港の管制塔では、飛行場とその周辺を航行する航空機を、原則として目視により管制する。飛行場管制は、無線交信を担当する席と直通電話等を使用して調整を行う2席のみであるが、交通量の多い空港においては2席のみではトラフィックを捌ききれないため、いくつかの席に分けて行われている。誘導路の交差点で「止まれ」「進んでよし」を指示する、道路交通における交通信号機と同じ役割。即座に空港もしくは飛行場の環境をコントロールする第一の方法は管制塔(コントロール・タワー、TWR)からの目視による監視である。このタワーは飛行場敷地内に建てられており、飛行場面や周辺を飛行する航空機が見渡せるように高く、風に強い構造である。タワーにいる管制官は、飛行場周辺の上空(管制圏内およびその周辺)を飛ぶ航空機 、飛行場内の誘導路と滑走路上で移動する航空機や業務車両などの交通整理の責任を負っている。空港によっては、地上の航空機などを表示するレーダーを備えるところもある。グランド・コントロール(GND)は航空機などの地上走行(タクシング)・移動に指示を与える管制部門。比較的交通量の多い空港に設置されている。正しくはgrand(雄大な・立派な)ではなく「グラウンド」(ground、地上)なのだが転訛発音が定着してしまった。グランド・コントロールは、滑走路以外の空港内(エプロン内を除く)での航空機や業務用車両(牽引車、除雪車、路面点検車両など)の移動を管制業務の対象とする。このため、出発機や到着機はもちろん、夜間のスポットチェンジなど牽引車が航空機を移動させる場合にも、許可や指示を与える。一般的に航空無線の公用語は英語であるが、航空機以外の業務用車両と交信する場合は、現地の言葉で行われる事もある。なお、滑走路に係る地上移動(滑走路の横断など)はローカル・コントロールが管轄する。日本では、航空管制官が管制するほぼすべての空港に設置されている。基本的には、管制圏内を飛行する航空機の管制と、滑走路への離着陸の許可を発する管制部門である。一般的なコールサインは「タワー」。規模が小さくグランド・コントロールやクリアランス・デリバリーが設置されていない空港では、これらの役割も担当する。航空機の飛行方式には、大別して計器飛行方式 (IFR) と有視界飛行方式 (VFR) の2種類がある。このうちIFRで飛行する航空機が管制空域を飛行する場合は飛行計画を承認される必要があり、クリアランス・デリバリー(または単にデリバリー。CLR)はこの管制承認を無線で伝達する機関である。一般航空会社の大型旅客機はほとんどすべてがこのIFRで飛行するので、最初にクリアランス・デリバリーと交信し、目的空港と巡航予定高度を通報して飛行計画の承認を要求する。飛行経路はあらかじめ提出されているフライト・プラン(飛行計画)にそって管制官によって確認される。管制承認として、目的空港・出発経路 (SID・Transition)を含めた飛行経路・離陸後維持する高度・巡航高度・トランスポンダー識別コードが伝達され、パイロットは復唱する。復唱が確認されると、グランド・コントロール(地上管制席)と交信するよう指示される。クリアランス・デリバリーは、日本では旧第一種空港をはじめとするトラフィックの多い空港に設置されている。地方空港などでは、グランド・コントロールやタワーが役割を代替しているケースが見られる。トラフィックの少ない地方空港などでは航空管制官が配置されておらず、航空管制運航情報官が交通情報・気象情報を提供するレディオ空港 (RDO) や航空管制運航情報官が遠隔地より情報を提供するリモート空港がある。航空管制官が配置されている日本の空港は以下の通り。空港名とIATA/ICAO空港コード交通量の多い空港には、周辺の空域を管制するためのレーダー管制設備が備えられており、これらはアメリカ合衆国ではTRACON(Terminal Radar Approach CONtrol, ターミナルレーダー進入管制)と呼ばれている。おのおのの空港で違いがあるが、TRACONは普通空港から30 - 50 海里及び地上から10,000フィートの範囲で交通の管制を行っている。交通量の少ない空港では、レーダーを用いない進入管制業務が行われている。ディパーチャー(出域管制、DEP)は、離陸したIFR機をレーダーを使って航空路まで誘導、監視を行う部門あるいは管制席。タワーで離陸許可を得て離陸後、上昇飛行を続ける航空機は、飛行場管制席から出域管制席に管制移管される。原則として各飛行場には SID(Standard Instrument Departure, 標準計器出発方式)というものが設定されていて、航空機はそのルートや高度制限に従って飛行して、航空路に合流することになる。また、このSID終了点が航空路に接続しておらず、航空路まで移転経路 (Transition Route,TR) が設定されている場合もある。出域管制席の管制官は、離陸した航空機が指定したSIDやTRに従って飛行や上昇しているかを監視し、場合によってはレーダー誘導を行う。アプローチ(入域管制、APP)は航空路を飛行中の航空機を、計器進入開始点、もしくは場周経路(トラフィックパターン)まで誘導、監視を行う管制部門。航空機は目的地飛行場に近づくと、航空路を離れ降下しながら滑走路に向かう。通常、航空路は滑走路まで設定されることはなく、航空路から飛行場(正しくは着陸する滑走路に対する計器進入を開始する地点)まで、STAR(STandard instrument ARrival, 標準計器到着方式)というものが設定されている。航空路を飛行中の航空機は、STARに従って進入開始点へ向かうことになる。ただし管制圏の設定のない飛行場によってはSTARが設定されていない場合もある。入域管制(席)の管制官は、航空機がSTARに従って飛行や降下しているかを監視、もしくはレーダー誘導によって到着機同士の管制間隔を設定し、進入許可を発出する。交通量の多い飛行場の場合、到着の航空機はあらゆる方向から飛んでくるため複数のSTARが設定されている。到着機が複数ある場合、STARを飛行中の航空機が順序良く着陸できるように航空機同士の間隔を設定する必要がある。入域管制を担当する管制官はレーダーを用いて速度調整や誘導(レーダーベクター)を行い、進入順位を決めて航空機を並べていく。STAR上に悪天候空域が存在し航空機から回避の要求があればそれに応じて経路を変更したり、何らかの事情で滑走路が閉鎖になった場合は上空で待機の指示を出したりする。離陸後四方八方に分かれる出発と違い、複数地点から来る航空機を要求された間隔で最終的にひとつの地点に誘導しなくてはならないので、管制官にも即時の判断や誘導技術が問われるセクションである。進入許可を発出すると、タワーとの交信が指示され、飛行場管制所に業務が引き継がれる。管制官が音声により航空機を滑走路まで誘導する管制席。管制官はPAR(精測進入レーダー)を用いて、航空機に対して一方的かつ連続的に機首方位などを指示し、航空機を誘導限界点まで誘導する。おもに計器着陸装置(ILS)を備えていない航空機、特に戦闘機などに対して行われる。肉声で誘導するが精度としてはILSのカテゴリーⅠに相当する。ATIS(エイティス、アティス。Automatic Terminal Information Service, 飛行場情報放送業務)は滑走路への着陸方式・使用滑走路・空港の気象情報・航空保安施設の運用状況等を地上から航空機へ無線を使って連続的に放送するサービス。航空機の飛来が多い空港で行われている業務である。通常は毎時0分に更新され、交通量の多い空港では毎時30分にも更新される。また、着陸方式や使用滑走路などが変更されたときや、パイロットから乱気流に関する報告があったとき、気象状況が規程の値を超えて変化したときなどは随時更新される。情報が改訂された場合はA(アルファ)からZ(ズールー)までのアルファベットを順に使って識別される。放送内容は英語で送信される。航空管制運航情報官(旧:航空管制通信官)の録音によるもの、または合成音声(録音された単語データを必要に応じて組み合わせる 電話の時報と同じ手法)によるものがある。出発や到着前には、最新の情報を受信し、自分が持っている情報(情報記号AなのかBなのか)を管制官に報告することが求められている。最新の情報をもっている旨通報された管制官は、航空機への通報事項を省略することができる。日本のATIS設置空港は、上記の放送例と同じ形式で放送される。30分の間に" "の部分が更新されたことになる。着陸方式がILS36からILS18に、風向きは80度から160度に、QNHが30.00インチから29.90インチに変わっている。パイロットによって持っている情報が違うときがある。例えば、最初の交信でパイロットが "We have Alpha" と管制官に報告した場合、最新の情報番号は Bravo なので、管制官はパイロットに対して、"Now informartion Bravo. Using runway 18, QNH 29.90." などとAlphaとBravoで情報が変わっている部分を訂正する必要がある。航空機が飛行場を離陸して航空路に合流すると、出域管制から航空路管制に管制移管される。目的地の飛行場への着陸進入体制に入る(アプローチへの管制移管)まで、飛行中は航空路管制の管轄になる。航空路管制(エンルート)のことをセンターとも呼ぶ。センターの管制官はアメリカなどの場合エアルート交通管制センター (ARTCC)、日本などの場合エリア管制センター (ACC) と呼ばれる機関で業務を行っている。各センターは何千平方マイルといった膨大な空域を航行中の航空機の動向をレーダーを用いて監視している。洋上を航行している航空機に対し、主要空港の気象情報を短波 (SSB) を使って放送している。日本は太平洋ボルメット地域に属しており、2,863・6,679・8,828・13,282の各kHzで、毎時10分と40分に気象庁本庁から放送している。聴き続けていると管轄各地の天気が分かる。日本では国土交通省航空局の管轄下において、航空交通管理センターと4つの航空交通管制部を設置して航空路管制業務をおこなっている。 日本国内に発着しない飛行機も、管制空域内では日本の管制下におかれる。なお航空交通管制部では、小規模空港におけるレーダーを用いない進入管制業務も行っている。2005年と2006年に種子島宇宙センターから打ち上げられた運輸多目的衛星(MTSAT)「ひまわり6号(MTSAT-1R)」および「ひまわり7号(MTSAT-2)」を使って、洋上やVHF通信のブラインドエリアを飛行している航空機と管制機関の間で、各種データ通信を行う事ができるようになった。 そのため、レーダーでの監視ができない洋上において、運航本数を増やす事ができるようになる。MTSATによるサービスを受けるためには、衛星通信用の設定と航空当局への登録が必要になる。従って、設定していない国内・国外の航空機はサービスを受けられないことがある。レーダーは主に飛行中の航空機の位置と高度を把握するために用いられ、日本国内のレーダーサイトは、主に航空自衛隊により警戒管制や飛行管制などに用いられている。国土交通省の航空局レーダーサイトには空港監視レーダー (ASR)・二次監視レーダー (SSR)・空港面探知レーダー (ASDE)・精測進入レーダー (PAR)・航空路監視レーダー (ARSR) ・洋上監視レーダー(ORSR)などがある。レーダースクリーン上には航空機の速度も表示されるが、これは二次レーダーによるものではなく、一次レーダーの情報から解析した対地速度である。航空用の気象情報は、いくつかの情報がある。
出典:wikipedia
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