バター()とは、牛乳から分離したクリームを練って固めた食品である。バターは、牛乳から分離したクリームを凝固させた(練るなどして固めた)食品である。乳製品の一種。常温ではわずかに黄色味をおびた白色の固体。主成分は脂肪(乳脂肪)である。ビタミンAをはじめ各種ビタミンや栄養素を豊富に含んでいる。100gのバターを得るために、原料乳は約4.8リットル必要とされる。「」は広義には、なんらかの乳を原料とし、クリームを得て、乳中の脂肪分を凝固させたものを広く指している。だが、バター () という語は を元としており、牛のチーズを意味する を由来としている。また漢語では牛酪である。このような表記が行われることからも明らかなように、バターはウシの乳汁、つまり牛乳を原料とするのが一般的である。なお、ウシ以外の乳汁を原料としたバターが作られる場合もあるものの、本稿では以降、特に断りがない限り、牛乳を原料としたバターについて記述する。日本では近年、低脂肪乳が好まれるようになり、副産物の乳脂肪は生産過剰気味と言われていたが、2007年末からしばらくの間、乳牛の生産調整などの悪条件が重なり、バター不足が発生した。詳細についてはバター不足を参照のこと。原料乳を乳酸発酵させてから作る「発酵バター」(醗酵クリームバター)と、そのまま作る「無発酵バター」(スイートクリームバター)とがあり、それらに食塩を添加した「有塩バター」と添加しない「食塩不使用」バターがあり、2 x 2 = 4で計4種類に分かれる。食塩不使用バターは、かつて「無塩バター」と称していたが、無塩で製造しても生乳に由来する塩分が微量含まれることから、厚生労働省の栄養表示基準により食品の正規表示が求められ、「無塩」という言葉が使えなくなった。日本で市販されているバターは「無発酵、有塩」または「無発酵、食塩不使用」が多く、発酵バターはほとんど流通していない。なお家庭でも上記の方法で市販の動物性生クリームから作ることも可能だが、市販品に比べて割高となる。10℃以下での保存が望ましいとされる。冷凍庫に入れておくと長持ちする。レストランなどではバターディッシュやバタークーラーなどの容器に入れてテーブルに供されることもある。容器に入れた生乳が偶然揺れただけでもバターは出来るため、起源は不明。少なくともメソポタミア文明の時代には存在していた。『聖書』や『マハーバーラタ』(乳脂として)にも記述が存在するのでその時代には存在していたとされる。バターが作られだした当初は皮製の袋に生乳を入れて木に吊るし、それを棒で打って揺すって作っていたと見られる。その後バターはケルト、ヴァイキング、ベドウィンといった牧畜の盛んな諸民族へと伝わっていった。バターは古代ギリシア時代にスキタイから地中海世界に渡り、ブトゥルム(buturum)-ウシのチーズ-と呼ばれた。野蛮人の食べ物と見られたこと、オリーブオイルが普及していたこと、チーズと違い保存性が無いことなどから、髪や体に塗る薬、化粧品、潤滑油として、ごく一部で使われていた。南ヨーロッパでは中世になってもバターはほとんど知られておらず、イタリアの料理書にバターが登場するのは15世紀になってからのことである。ピレネー・アルプス以北のヴァイキングとノルマン人の征服を受けた地域からバターは定着し始め、14世紀にかけてオランダ、スイスへと広がったが、ノルマン系ではない貴族にとっては「野蛮人の食べ物」という見方は変わらず、貧しい者の食べ物とみなされていた。フランスで本格的に食用として利用されだすと、ようやく貴族もバターを食べ始めた。歴史学者のジャン・ルイ・フランドランは14世紀から17世紀のヨーロッパにおけるバター・オイル圏を画定しているが、現在でもヨーロッパでは「オリーブオイルが主流の地域」と「バターが主流の地域」がはっきりと分かれている。基本的に、バターを保存しやすい寒冷な土地でバターが普及していると見てもいい。それ故、スカンジナビアでは少なくとも12世紀頃にバターの輸出が始まった。12世紀にサン=ドニの司祭により、四旬節の期間中にバターを食べることが「肉断ち」の禁を犯すかどうか、初めて問題提起された。その後、14世紀になって正式に罪になると決められた。既にバターに慣れ親しんでいた地域の貴族や富裕層は禁欲日にバターを食べる贖宥状を取り付け、そのための寄進でカトリック教会は大いに潤った。ジャン・ルイ・フランドランは、16世紀の宗教改革とバター・オイル文化圏の地図上の関連について指摘している。また、バターはランプの油の代用ともされた。ルーアン大聖堂()の『バターの塔』は16世紀の四旬節に実際にランプの油にバターを使っていたことからこう名付けられたとされる。日本では江戸時代に徳川吉宗が、明治時代にはエドウィン・ダンがバターを試作している。江戸時代にはごくわずかではあるが生産されており、オランダ語に由来する「ぼうとろ」、あるいは「白牛酪」という名称で呼ばれ、購入者は削って食べたり、湯に溶かして飲んだ。本格的にバターが日本に広まったのは明治維新の後、明治政府が外国人相手に乳製品を供給するため、酪農の普及を指示してからである。19世紀末、戦争の混乱でバターの価格が高騰し、ナポレオン3世の命令で、バターの安価な代用品として作られたのがマーガリンである。調味料のほか、パンなどのスプレッド、ソースの材料、ソテーの焼き油や炒め油など、幅広く使われる。特に小麦粉との相性が極めて良い。小麦粉を主原料とした食品、料理であれば、ほぼ何にでも合うが有塩と食塩不使用で用途が異なることもある。食塩不使用バターは洋菓子によく使われる。トーストやホットケーキなどに使うものは有塩のものが多いが、塩分を控えている人などや、海外の例では食塩不使用のものを使う場合もある。そのほか、様々な食材や香辛料などを加えたバターもある。たとえばバターの中にレーズンを入れたレーズンバターもある。クラッカーの上などにそのかたまりを乗せて食べる場合などに利用される。パセリバター、レモンバター、にんにくバターなどもあり、オードブルのほかにステーキやカレーライスなどに添えられる。ラードの代わりとしてラーメンに使われることもある。香港や台湾の「ラードごはん」のように、米飯にバターと醤油をまぶして食べる人もいる(バターご飯)。アメリカではバターを衣で包んで揚げた揚げバターと呼ばれるスナック菓子も作られている。既述の通り、歴史的にはランプの燃料として使用された例もある。またチベット仏教の寺院では、蝋燭ではなくバターランプが使われる。バターに砂糖、さらに卵白あるいは卵黄を練り合わせ、空気を入れて撹拌させてクリーム状にしたものはバタークリーム(buttercream)と呼ばれ、ケーキのアイシング(糖衣)や詰め物に使われる。冷蔵・冷凍設備が普及し、生クリームでデコレーションすることが容易になるまでは、バタークリームを使うことが多かった。ただし、純正のバターではなく、マーガリンやショートニングを使用してクリームに加工したものもあった。「マーガリン」は 植物油など他の材料から作られ、バターの安価な代替品として使われる場合がある。マーガリンは冷蔵庫内などの低温下においても固くならない性質があり、使用しやすい面がある。しかし風味の点でマーガリンはバターに及ばない。多くのマーガリンには香料が使用されており、加熱すると風味が飛んでしまうが、バターはかえって風味が増す。また、マーガリンにはトランス脂肪酸が8%程度含まれているため、体に悪い。口語ではマーガリンを指してバターと呼ぶこともあるが誤用である。ピーナッツバターのように用途や外観は似ているがバターを含まない食品や、バターピーナッツなど実際にはパーム油などが使われるがバターに似た風味を持たせた食品に名前が使われることもある。マーガリン等と区別するため、本来のバターを「本バター」と呼称することもある。その他の類似のものとして、ジアセチルという食品用香料もあり、バター風味のポップコーンなどに多く用いられている。インド 433万トン、EU圏 206万トン、アメリカ 82万トン、ニュージーランド 47万トン、日本 6.3万トン。(2011年)インドではヒンドゥー教の教義によって、牛肉の食用が制限されているため、菜食主義者が多い。彼らは足りない栄養を主に殺生せずに得られる牛乳やバターで補う。日本では2007年末からバターの原材料である生乳(酪農家が牛から搾る乳)生産量の減少によりバター不足が業界各メーカーで発生している。これは以前の牛乳余剰を原因とする2006年度からの生産調整で乳牛が削減されているのに加え、国内の猛暑や輸入元のオーストラリアやヨーロッパの旱魃により生産が減少したためである。各メーカーでは出荷数量の制限や価格の改定を実施している。小売店においても特売の減少や一人当たりの購入数量の制限、在庫切れによる販売中止など、一般消費者にも影響が生じている。またバターを使用したケーキ類の値上げなどの影響も出た。これらのバター不足に対して当時農林水産大臣だった若林正俊は、乳業メーカーに対し、バターの増産を要請した。また、農畜産業振興機構は業務用の冷凍バターの輸入を前倒しして実施し、追加輸入を行う等の対策を行った(バターは日本では関税割当制指定物品)。これらの対策の結果、少し時間はかかったもののバター不足は収まった。ノルウェーやフィンランド等の北欧諸国では2011年秋からバターの供給不足による価格高騰が発生した。これは、北欧諸国で昨今の健康志向で油脂類の摂取を控えるようになってバターの消費量が落ち込んだうえ、この年の夏の長雨が原因で生乳の生産量が落ち込んでバターの供給量が減った所に、今度は炭水化物抜きダイエット(アトキンスダイエット)の流行が冬場のクリスマスシーズン(北欧ではクリスマスに大量の焼き菓子を作る風習があるのと、高カロリーの食事を取らないと冬の寒さをしのげない)を直撃したためである。これらの国では乳製品市場が特定企業による寡占状態なのと、バターの輸入にかかる関税の高さもあって品薄状態が解消される目処が立たず、バターを密輸しようとして拘束される者も出た。西洋では、生活の象徴として「バター」という言葉が用いられることがある。「大砲かバターか」という言葉は軍事(大砲)か生活(バター)のどちらを優先するか、という意味で用いられる。バターは神聖な、魔術的な食料と見なされていた。民話の赤ずきんがお見舞いにバターの壺を持っていくように、ブルターニュではバターに病気を吸い取る力があるとされ、患者のベッドの傍らにバターを置いた。そして患者が亡くなるとバターも土に埋める風習があった。『リグ・ヴェーダ』では火中にバターを焚き神に祈ったとある。酸敗したヤクのバターから作るチベットのバター茶も神聖な飲み物として飲まれる。また、脂肪分の多い物の象徴ともなっており、例えば、ペカンは脂肪分の多いナッツが採れることから、俗に「バターの木」と呼ばれる。他にも、アボカドは果肉に脂肪分が約16%も含まれているのが特徴だが、これほど果肉に脂肪が豊富なことは、いわゆる「果物」の範疇に入るものとしては珍しい。このため、俗に「バターフルーツ」とも「森のバター」とも呼ばれる。日本では、「バター」が西洋風の象徴として扱われ、西洋の物や西洋かぶれに対して「バタ臭い」と形容することがある。
出典:wikipedia
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