ターザン(英:"Tarzan")は、アメリカの小説家エドガー・ライス・バローズが創造した架空のキャラクター。小説ターザン・シリーズ、及び映画化作品の主人公を務めるが、脇役として登場する事もある。本項では、まず小説版について説明する。映画版については、#映画、TVのターザン以降を参照。なお、日本語表記はハヤカワ文庫特別版SFに準じる。小説版は多くの映画と違い、知的な面を持っている(端的には、複数の言語を自在に操る)。また、文明批判の目も厳しい。本名はグレイストーク卿ジョン・クレイトン。イギリス人であり、その称号の示す通り貴族である(ただし、命名されていないため、本名は父親の名をそのまま受け継いでいる)。なお、脇役として登場するのは、外伝的作品『石器時代から来た男』と、第4巻『ターザンの逆襲』、少年ものの『ターザンの双生児』2作("Tarzan and the Tarzan Twins"と"Tarzan and the Tarzan Twins with Jad-Bal-Ja, the Golden Lion")である。ターザンは野生児として育ったが、由緒正しい貴族の生まれである。彼の特徴は、外見(外面)と内面の両方に渡る。詳細は後述。当初は彼と家族に成長(経年)が訪れていたが、孫息子の登場(第10巻『ターザンと蟻人間』(1924年))を境に、ターザンから経年(老化)の兆候が見られなくなり、不老長寿、あるいは不老不死の様相を示してくる(両親の船出が1888年5月、結婚がその3ヶ月前である事から、ターザンの生年は1889年、ないしは1888年である。後述のフィリップ・ホセ・ファーマーは1888年説を採っている模様)。肉親の出番も見られなくなっていく。なお、ターザンのモデルについては、ロムルスとレムス(ローマ帝国の建国にかかわる兄弟で、「狼に育てられた」という伝説を持つ)が、参考作品としては『ジャングル・ブック』(ラドヤード・キップリングの小説)が挙げられている。詳細はターザン・シリーズ#参考作品を参照。他のバローズの長期シリーズである火星シリーズ(1912年~)、ペルシダー・シリーズ(1914年~)の場合、主人公はその世界を紹介する側面がある。このため、ジョン・カーター(火星(バルスーム)大元帥)、デヴィッド・イネス(ペルシダー皇帝)は、性格や思考は保守的(中立的)であり、物語の中では読者の分身として驚き役を示している 。これに対し、ターザンは彼自身が驚異として読者の前に登場する(つまり、タイトル通り、各シリーズの主役はバルスーム、ペルシダー、アムター(金星)、ターザン、といえる)。ただし、第8巻以降は、ほぼ「秘境もの」に転換し、読者の前には新たな世界が驚異として登場する。また、ヒロインとの関係も象徴的である。3大シリーズの場合、物語は初期において一度完結する(火星は3部作、本シリーズとペルシダーは2部作)。火星、ペルシダーの第1巻では、ヒーローとヒロインは心を通わせるものの、何らかの物理的な要因で引き裂かれてしまう(火星の場合は事故、ペルシダーの場合は狡猾なライバルの邪悪な企み)。しかし、ターザンとジェーンは心を通わせあうものの、それぞれの思惑(心理的要因)によって別れることになる(ジェーンには迷いがあり、ターザンは相手を愛するが故に別れを選ぶ)。この辺りにも、ターザンというキャラクター(物語)の持つ複雑さが表れている。とはいえ、火星、ペルシダーは最後までデジャー・ソリス、ダイアンがヒロインで有り続けたのに対し、ジェーンの登場はほぼ第10巻までで、以後は『ターザンと女戦士』(1936年〜1937年)に「妻」が短い出番を与えられているのみ、となっている(名前すら明記されていない)。ターザンの能力や家庭、友人、血縁など。父は英国貴族、グレイストーク卿ジョン・クレイトン(Lord Greystoke, John Clayton)。母はアリス・ラザフォード(結婚時、まだ10代だった)。夫妻は赴任先である英領西アフリカに向かう途中、船員の反乱に遭遇し、アフリカの西海岸に置き去りにされた。ターザンは夫妻が海岸に作りあげた小屋で生まれ、彼が1才になった時に母親は亡くなった。父は類人猿カーチャク(Kerchak)に殺されたが、ターザンは類人猿カラ(Kala)に救われた。カラは子供を亡くしたばかりであり、群れのリーダーであるカーチャクに逆らい、ターザンの養母となった。ちなみに、「ターザン」とはカラがつけた名前で、類人猿の言葉で「白い肌(White-Skin)」を意味する。成人後、指紋鑑定でグレイストーク卿の息子と判明(第1巻終盤にて)、第2巻終盤以降は父の名を受け継いだ。なお、第1巻冒頭では、「主要人物には架空の名前を用いる」と宣言されている。前述のダルノー中尉は、第1巻で親友となった。交際は以後も続き、第4巻『ターザンの逆襲』ではフランス海軍の提督となっており、メリームと親族の再会に一役買っている。しかし、『ターザンと禁じられた都』(1938年)で久しぶりに登場した際は、海軍大尉だった。『石器時代から来た男』には、アメリカ人バーナード(バーニー)・カスターと、その妹のヴィクトリア・カスター、彼らの友人でルータ王国(バローズの創り出した架空の国家)の軍人であるバッツォー中尉が登場した。ヴィクトリアは当該作のヒロインであり、バーニーは『ルータ王国の危機』の主人公である。全2部で構成されている『石器時代から来た男』は、ターザン・シリーズの第2巻と第3巻の間に位置している(実際に登場するのは第1部のみ。第2部は、第3巻の後で発表された)。ターザンとジェーンが結ばれたのは、第2巻のラストだが、ここではそれから1年ほどが経過していると見え、愛息子ジャックが誕生し、エスメラルダが乳母を務めている。 ターザンは「かつて猿人ターザンと呼ばれた」と説明され、ターザンと書かれている場面は少なく、ほぼ「グレーストーク(もしくはグレーストーク卿)」や「クレートン」と呼ばれ、それに相応しい衣服を身にまとっている。一方で、ジェーンは「グレーストーク夫人」と表現され、家庭に収まっており、あまり目立たない。また、悪漢の討伐に際しても、ターザンは半裸になることも単独行動を取ることもなく、集団でライフルを抱えて行動している。さらに、自分の感覚よりも「常識」を優先して判断している、など、現役の猿人(第2巻までと、第3巻以降)とは違った描写がなされている。しかし、第2部のラスト(15.洞窟の秘密)にてドンデン返しがあり、第1部のほとんどは「なかったこと」にされている。なお、リチャード・A・ルポフによると、『石器時代から来た男』の主人公である原始人ヌーは、猿人ターザンの同類(分身)である。本節は、『恐怖王ターザン』に寄せた森優の解説、「ターザンは実在する?」による。アメリカのSF作家フィリップ・ホセ・ファーマーは、ターザンの伝記として『実在するターザン─グレイストーク卿の決定的伝記』を執筆、ダブルディ社から出版された。これは、「バローズの作品(ターザン・シリーズ)はフィクションとして綴られ、資料が少ない部分は想像で補ったため、矛盾などの不備がある」とし、「この伝記では、彼の切り捨てた資料等で補遺している」、というスタンスである。また、「実際にターザンに会い、インタビューした」とも書かれている。インタビューの場所は、ガボンのリバーヴィルにあるホテルで、「写真も撮らず、録音もしない」と条件がつけられていた。インタビュー当時、ターザンは80歳であったが(当該作では、生年は1888年とされている模様)、35歳くらいにしか見えなかったという。この若さは、1912年1月にウガンダで助けたまじない師から渡された秘薬によるもの、と説明されている。また、ファーマーがターザンの家系を8世分、遡って調査したところ、血縁にシャーロック・ホームズ、パーシー・ブレイクニー准男爵、ドック・サヴェジ、ネロ・ウルフ、ピーター・ウィムジイ卿、ブルドッグ・ドラモンドらがいることが判明した。彼ら英傑の由来としては、1795年にイギリスに落ちた隕石による突然変異、と説明されている。なお、本作は早川書房が版権を取得し、「ハヤカワ版(TARZAN BOOKS)完結の暁には、シリーズ別巻として刊行される」、と予告されていたが、未訳のままである(2011年9月現在)。映画のターザンは、陽性のヒーローとして登場する(ただし、『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(1983年) "Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes" のような、原作重視の例外も存在する)。ジャングルの王者として君臨し、密猟者や秩序を乱す猛獣に鉄槌を下す。また、多くの場合、言語に不自由で、片言しか(英語、ないしは人間の言葉を)喋れない。マスコットとしてチータ(チーター)というチンパンジーを連れている場合もあるが、原作には登場していない(そもそもチンパンジーが登場しない)。ただし、それに類する小猿は登場しており、ンキマという小猿が複数回、登場している。エルモ・リンカーンが主演したサイレント映画『ターザン』(1918年)を皮切りに、数多くの映画が製作され、ターザンの名は一躍有名になった。中でも『類猿人ターザン』(1932年)をはじめとするジョニー・ワイズミュラーのターザンは有名である。ワイズミュラーは水泳の金メダリストであり、元は俳優ではなかったが、そのぎこちなさ故に、野生児としてのターザンはハマリ役だった。ワイズミュラー映画で有名な「アーア・アー」というターザンの雄叫びは、豹の鳴き声など十数種の音源をミックスしてMGMの特殊効果部が作り上げた。なお、ワイズミュラーは1971年の世界SF大会(に参加した、バロウズ・インコーポレイテッドの)主催の昼食会に主賓として招かれたが、70歳を過ぎているにも関わらず若々しく(ただし、髪は白髪になり、顔はシワが増えていた)、矢野徹から「ターザン・シリーズの日本での翻訳が開始された」と知らされると、非常に喜んでいた。ロバート・フェントンによると、1914年春、バローズが妻とカルフォルニア州サンディエゴで休暇がてら第3作『ターザンの凱歌』を執筆していた時、ニューヨークのジョゼフ・W・スターン商会から連絡があり、映画化の話が持ち上がったのがきっかけである。この企画は流れたが、バローズは自作の映画化への可能性を知る。シカゴへ帰った彼は、ニューヨークのオーサーズ・フォトプレイ・エージェンシーに『類猿人ターザン』の映画化への売込みを依頼した。また、出版社A・C・マックラーグとは、劇化・映画化の際の著作権が著作者に帰属する契約書を交わしている(ただし、第2作『ターザンの復讐』以降分)。しかし、映画化の話は思うように進まず、バローズは直接行動に出る。ウィリアム・N・セリグ大佐(シカゴにある、セリグ・ポリスコープ・カンパニーの社長)に、『類猿人ターザン』と、未発表の原稿1本(『砂漠のプリンス』 (The Lad and the Lion))を送りつけたところ、セリグは『砂漠のプリンス』に興味を示し、500ドルで映画化権を購入する(1915年1月)。バローズはさらに2本ほどセリグに送り、ユニヴァーサル・フィルムズやアメリカン・フィルム・カンパニー等にも打診するが、全て断られてしまう。「小説としては面白いが、映画には向かない」と酷評も受ける。1916年6月、シカゴのウィリアム・パーソンズと『類猿人ターザン』の映画化権に関する契約を取り付ける。しかし、パーソンズは映画業界の素人であり、計画は頓挫しかける。10月末、なんとかパーソンズの会社が設立され、映画完成への目途がつく。1917年4月、セリグ・プロの映画『砂漠のプリンス』(主演、ヴィヴィアン・リード)が公開され、好評を得る。ただし、原作者の意向が無視されたため、バローズは複雑な思いだった。本節はエドガー・ライス・バロウズ 「ターザン、フィルムランドへゆく」『ターザンとアトランティスの秘宝』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、1972年、森優、300-301頁による。映画『ターザン』は、自身の意向が反映されず(バローズはパーソンズの会社の重役であるにも関わらず)、さらには支払いのトラブルにより、パーソンズとの仲が冷えてしまった。映画のターザンは自分のイメージと違っていたため、落胆した、とも言われている。MGMのターザン映画に不満だったバローズは自ら映画会社を興し、ハーマン・ブリックス主演の連続活劇を製作した。()内はターザン役。作者の日本語表記については表記ゆれがあり、早川書房(ハヤカワ文庫)は「エドガー・ライス・バロウズ」、東京創元社(創元推理文庫、創元SF文庫)は「エドガー・ライス・バローズ」となっている。
出典:wikipedia
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