フェリー (ferry) は、旅客や貨物を鉄道車両や自動車ごと運搬できるようにした船のことである。フェリーは貨客船であり、貨物船の一種で自動車の海上輸送に用いられる「自動車専用船」とは分類上異なる。カーフェリー (Car ferry)、自動車渡船、自動車航送船などとも呼ぶ。なお、河川や湖沼、距離の短い海峡などで、日常の交通手段や観光に用いられる渡し船については、そちらの項目も参照のこと。英語の「ferry」は単に「渡し船」「渡し場」の意味であり、そのうち自動車も運ぶものを「car ferry」と呼んでいた。日本にこの種の船が導入された当時に、これが「カーフェリー」と呼ばれ、やがて「カー」が省かれ、21世紀初頭現在では「フェリー」だけで表現されることが多い。ただし英語の「car」は狭義には乗用車の意味で、トラックやトレーラーは含まれない。そのため多様な車両すべてを運ぶ船を「car ferry」と呼ぶと違和感があるため、近年では ROPAX (roll on/roll off passenger) vessel や Ro-Pax Ferry と呼ばれる場合がある。 日本で「ローパックス・フェリー」という表現が定着するかは不明である。 フェリーの最も特徴的な他船との構造上の違いは、船体内部に1層から3層程度の広い車輌甲板を持ち、大きなランプウェイ(斜路)を備えることである。運搬される車輌は、船の前後部や左舷に1-3つ程度の備えられたランプウェイを自走して車輌甲板内に搭載される。中大型のカーフェリーで船首ランプウェイを持つものは、波浪が直接、ランプウェイに当って破損されるの防ぐために、バウバイザー(Bow visor)と呼ばれる装置が船首部に備わっている船が多い。船首ランプウェイを持つ場合でも小型で航路が短いものではバウバイザーを備えず、荒天時には運休することで対応する船もある。多くのカーフェリーでは、船首と船尾、または船首近くと船尾近くの左舷側にランプウェイを持つことで、車輌甲板内での自動車の前後方向を転換するという時間と手間の掛かる方法を避けて、車輌用の入口と出口を両方備えることで車輌甲板内では一方通行で済むようにしている。さらに、小型で航路長が極めて短いルートの船では、ランプウェイを船首と船尾の両方備えるだけでなく、スクリュー・プロペラと舵を船の前後に備え、さらに操船用のブリッジも2箇所に持つことで、接岸時の船の転回の必要をなくしているものがあり、このような船は「両頭カーフェリー」と呼ばれる。旅客船と貨物船の2つの機能が求められるため、建造と運航がコスト高となる。鉄道連絡船のうちの車両渡船(旅客を搭乗させず鉄道車両のみを航送)。国土交通省では、片道100km - 300km未満のフェリー航路は中距離フェリー、300km以上のものは長距離フェリーとされている。船舶安全法において、旅客船に限らず日本船籍の船舶が航行できる区域は、それぞれ以下のとおり定められている。以上の航行区域を持つ船舶は、それぞれの船舶の航行区域、航行時間、総トン数などに応じて船体構造、通信設備、救命設備、旅客定員などが規定されている。また、このほかにもその近海区域、沿海区域などの航行区域を持つ船舶のうち、その航行区域を港などの陸岸に近い区域にのみ限定しているものも多数存在する。航行区域を限定することによって必要な構造・設備が軽減されるメリットがある。これらの航行区域は公式ではないが通称「限定近海区域」、「限定沿海区域」、「湖川港内限定区域」などと呼称される。日本の内航客船の多くは、その航行区域が「沿海区域」か「平水区域」であるが、「遠洋区域」や「近海区域」の航行区域を持つ船舶を内航客船に使用しても構わない。逆に「沿海区域」の航行区域を持つ船舶を外航客船に使用しても(その航行区域を外れない限り)構わない。渡し舟と初期のフェリーの違いは判然としないため、いつの時点から日本での最初のフェリーと呼んで良いかは断言できないが、1つの例として示せば、1934年に今の北九州市の若松区と戸畑区の間の400m程を結ぶ航路に43総トンの2隻のカーフェリー「第8若戸丸」と「第9若戸丸」が就航した事例が挙げられる。これらのフェリーは船の前後に舵とスクリューを備えた両頭船であり、最大でもトラック2台とオート三輪を4台を積載できるのみであった。1944年には鹿児島と桜島との間を結ぶ156総トンの木造船、「第一桜島丸」が就航した。第二次世界大戦後の1950年、下関と門司の間3.8kmを結んだ「第三関門丸」「第四関門丸」「第五関門丸」の3隻が就役した。また、瀬戸内海では1953年に宇野(岡山県)と高松(香川県)間を結ぶ「第一航走丸」150総トンが、1954年に明石海峡横断航路として明石 - 岩屋(兵庫県)間を結ぶ「あさぎり丸」220総トンが、同年に鳴門海峡航路として福良(兵庫県) - 鳴門(徳島県)間を結ぶ「若潮丸」220総トンがそれぞれ就航した。なお、1956年には宇野 - 高松間に55総トンの木造船「玉高丸」も就航している。昭和40年代(1964年以降)には中距離フェリーが現われ、またこの頃からモータリゼーションが本格化したこともあってフェリーの需要が急増し、1973年には168航路、1980年には241航路にまで増加した。1973年からの第一次オイルショックと1979年からの第二次オイルショックの影響により国内観光の需要が激減したが、これによる輸送量の減少によって運航会社の経営を圧迫し、多くの航路が閉鎖された。また、平成に入ってからの大きな変化として、本州四国連絡橋の完成によってそれまで瀬戸内海を結んでいた多くの航路が役割を終えて閉鎖されたことである。一方、一部の航路ではフェリーの高速化が企図され、2007年に青函航路に就航し当時の日本最速となった「ナッチャンRera」(のち休航)のほか、従来と比較して速力を増したフェリーが多くの航路に就航している。近年は、原油高が進んでいることおよび高速道路におけるETC割引制度の充実(特に、2009年4月から2011年6月まで政府の経済対策の一環として実施された休日特別割引、いわゆる「1000円高速」)により、自動車輸送の利用が低迷する航路が増加している。また、関西 - 九州航路は速達性にまさる新幹線や航空機との運賃差が縮小し、さらなる苦境にさらされている。これに対し、自動車輸送料金の値下げを行って対抗する会社もあるほか、物流以外の個人利用客の誘致のため、キャンペーンの実施、インターネット予約における割引の拡充、繁忙期適用期間の縮小などの施策をとっている会社も多い。日本では内航の旅客航路は一般旅客定期航路、特定旅客定期航路、旅客不定期航路の3つに分類される。2007年4月時点では、純客船も合わせた日本国内の内航客船事業者は964業者あり、1,659航路に2,385隻、計136万総トンが運航している。内航フェリーだけでは158事業者、187航路に366隻、計118万総トンが運航している。この数字からカーフェリーが船の中ではかなり大きいこと、航路数は内航客船の航路数全体に比べてそれほど多くないことが判る。2005年の国土交通省の国内輸送実績のデータでは、フェリーを含めた客船・貨客船での輸送は、旅客: 1億320万人、輸送人キロ: 40億2,500万人、トラック: 537万台、乗用車: 1,119万台となっている。日本では外航貨物定期航路事業、外航旅客定期航路事業、外航不定期航路事業に分類される。短距離航路では1から2クラスの船室区分となっているものが多いが、長距離になるほど多様な料金体系による船室区分が見られる。また、従来の等級に縛られない命名法(商船三井フェリーの場合、スイート、デラックス、スタンダード、カジュアル、エコノミーの5段階)も見られるようになってきた。国内の「フェリー標準運送約款」による。これは一般的説明なので、必ずしも各社の規定がこれに合致するとは限らない。フェリーの運賃は、鉄道などと多少異なり、大人1人につき小児1人まで無料となる、と定められている。また、指定されている座席または寝台を1人で使用する場合を除き無料となるのは、1歳未満の小児(鉄道でいう「乳児」)に限られる。また、自動車を載せる際の運賃には大人1人分の2等船室運賃があらかじめ含まれているので、2等船室に乗船する際には改めて運転士の運賃を支払う必要はない。ただし、1等船室に乗船する場合は、その差額が必要となる。手回り品は、20kgまでは無料となり、超過分は有料となる。持ち込むことができるのは30kgまでであるが、30kgまで無料というわけではなく、30kg持ち込んだ場合は10kg分は有料となる。ただし、車椅子、身体障害者補助犬は上記の重量制限に含めない。二輪車(自動二輪・軽二輪・原動機付き自転車)および人力で移動する軽車両(自転車・乳母車・荷車等)は「特殊手荷物」扱いとなり、四輪車(乗用車・貨物車)の車両運賃とは別建ての料金となる場合が多い。長距離航路では一般に特殊手荷物の運賃は車両運賃よりも大幅に安価である(750cc超の二輪車でも乗用車の数分の一)。二輪・四輪ともに「無人航送」と呼ばれるサービスを用意している航路もある。この場合は人間分の運賃が不要となる。発着港での積み下ろしサービス(有料)を利用すれば、必ずしも船の発着を待ち受けなくてもよい。長距離フェリーの場合無人航送を利用すれば、車両のみフェリーで送り人間は他の移動手段(航空機・鉄道等)を用いることで大幅な時間の節約が可能となる。カーフェリーは陸上の輸送手段に比べて経済性が比較的良いが、貨物輸送の経済性では貨物船での輸送が優れる。以下に経済性の比較を示す。日本では1970年代に運輸省が全国自治体に働きかけて旅客フェリー設備の整備が進められたが、港湾設備が整うと運航側が旅客営業を廃止し貨物船などに転換する「ただ乗り」現象が多発している。大阪港や神戸港と四国・九州の各港を結ぶ旅客フェリー航路は複数存在する一方、東京港から北海道方面に向かう旅客フェリー航路は大洗港などに拠点を移した。
出典:wikipedia
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