マジックナンバー(magic number)とは、プロ野球の用語で、「他のチームの試合結果に関わらず、自チームがあと何勝すれば優勝が決定する」と言える勝ち数を意味する。日本では一般にマジックと呼ばれる。他チームが残り試合に全勝することを仮定して算出される数であるため、実際に優勝までにあと何回勝たねばならないかよりも大きめの値となるのが普通である。日本では他の全チームに自力優勝の可能性がなくなった状況でのみこの値を用い、この条件を満たすことをマジックナンバーが「点灯」したという。野球チームは優勝までに、マジック点灯⇒マジックナンバーを減らす⇒優勝決定という経過を通常たどる。マジックナンバーはチームが優勝するまでの道筋として用いられる。米国では自力優勝の条件が満たされない場合でもマジックナンバーを用いる。そのため「点灯」の概念はない。また米国では野球以外のスポーツでもマジックナンバーを用いる。プロ野球のリーグ戦は総当たり戦(×複数回)の勝率により順位が決まるため、チームBがチームCに勝って勝率を上げたかどうかがそれらとは別のチームAの順位に影響する。したがってチームA,Bの順位はA対Bの試合(A,Bの直接対決という)の結果だけでなく、AとCとの試合結果やBとCとの試合結果にも影響される。リーグ戦の途中段階で、チームAのマジックナンバーとは、が全てのチームXに対して成り立つ最小の"n" のことである。以上の定義から分かるように、Aのマジックナンバーを計算するには、上式の左辺を上式の右辺が最も大きくなるチーム((マジック)対象チーム)と比較する。AのマジックナンバーはAが勝つ度に大抵1減り、マジックナンバーが0なら優勝が確定する。またリーグ中マジックナンバーは減ることはあっても増えることはない。またマジック対象チームBが負けた場合にもAとBとの勝利数の差が減少するので、マジック対象チームが負けた場合もAのマジックナンバーが大抵1減る。このため、マジックナンバーは大抵、優勝が確定するまでに必要な勝利数よりも多めの数になる。しかし例外的なケースではこれらが成り立たず、試合に勝ってもマジックナンバーが減らない、また逆に2減る、といったことがあるため、マジックナンバーは必ずしも優勝確定までの勝利数と一致しない。マジックナンバーが不規則な振る舞いをするケースは3つある。まず第一に、マジック対象チームが入れ替わるケースがある。マジック対象チームBが負けても、新しくマジック対象チームになった別のチームCに対するマジックナンバーが減るとは限らないので、この場合マジックナンバーが減るとは限らない。第二に、Aがマジック対象チームBと直接対決するケースがある。両者が直接対決した場合、「Aの勝利によるマジックナンバーの減少」と「Bの敗北による(Aの)マジックナンバーの減少」が両方起こるため、通常はマジックナンバーが2減る。これはマジックナンバーの定義で、AとXとの直接対決が残っている場合には「Aが今後"n" 勝した時」と「Xが残り全ての試合に勝った時」とが同時に起こらないことを無視しているからである(Xとの直接対決で「Aが"n" 勝した場合」、Xは"n" 回敗北するので「Xが残り全ての試合に勝つ」が満たされない)。したがって直接対決の場合にはAの勝利とXの敗北が二重カウントされる。さらに特殊なケースとして、直接対決によるBの敗北の結果マジック対象チームが別のチームCに入れ替われば、Aのマジックナンバーの減少が0の場合も1の場合もある。また非常に特殊なケースとして同率だった場合の順位決定ルールによっては、マジックナンバーが3つ減ることもありうる。第三のケースはAが試合で引き分けた場合である。日本プロ野球ではリーグでの順位は勝ち数でなく勝率で決まることと勝率の分母に引き分けを入れないことの影響で、引き分けが起こると、AとBとで勝率計算の分母が異なってしまう。これが原因で、Aが引き分けた場合、状況によってAのマジックナンバーが1減る場合も減らない場合もある。また、Aの引き分け数とBの引き分け数が極端に大きい状況下では、Bの敗北によりマジックナンバーが減らないことも2減ることもありうる。これは、引き分け数が偏ると勝率の分母から引き分け数を引いていることが原因で勝率の分母がチームごとに異なるので、勝率の分子である1勝の価値がチームごとに違ってくるためである。さらに言えば、引き分けによってマジック対象チームが入れ替わることも考慮する必要がある。引き分けがない場合、勝率の大小は勝ち数の大小に一致するので、チームAのマジックナンバーはの式で求めることができる。ここでBはマジック対象チーム、formula_2、formula_3 はそれぞれ現時点でのA,Bの勝ち数、formula_4 はBの残り試合数(最後の+1はAの勝ち数formula_5Bの勝ち数を保障するために必要)。引き分けがある場合は前述した理由でより複雑な計算が必要になる。詳細は計算方法の項を参照のこと。なお引き分けがなく、さらに今後マジック対象チームの入れ替わりもないとすれば、となるため、優勝とマジックナンバーとの関係が明解である。日本では「A以外のチームが自力優勝可能ではなくなった」という条件を満たした場合のみマジックナンバーを用い、Aがこの条件を満たした場合にAのマジックが点灯したという。またAのマジックが一旦点灯した後にA以外のチームの自力優勝の可能性が復活した場合には、Aのマジックが消滅したという。上述したことから分かるように、自力優勝の条件を満たしていなくても原理的にはマジックナンバーを定義できる。マジックが点灯していない状態でのマジックナンバーを隠れマジックということがあり、マジック消滅後再点灯しそうな状況などで用いられる。「マジック対象チームBが残り試合を全勝した場合」というマジックナンバー計算の仮定をする場合、マジック点灯チームAの残り試合のうちBとの直接対戦でAの負けを想定することになる。「それでもBとの対戦以外を勝てば、Aが優勝できる」ということを意味する「マジック点灯」には、一位二位が歴然として残り試合が多いケースで合理性がある。順位決定方法によっては、マジックナンバーが2種類点灯することもある。セントラル・リーグでは2001年から2006年までの間、勝率1位球団が勝利数で勝率2位球団を下回った場合(2001年のみ勝率1位球団が勝利数1位でない場合)はプレーオフを行うという取り決めがあり、マジックも勝率1位決定マジックと優勝決定マジックの2つが存在していた。以下のケースではマジックナンバーの「点灯」は優勝に対する適切な指標にならない。チームA,Xに対し、を満たす最小の"n" をformula_6とすれば、Aのマジックナンバーはにより表されるので、以下formula_6の計算方法を説明する。リーグの総試合数がformula_9 、チームXの現時点での成績が、勝ち数formula_10、負け数formula_11、勝ち越し数formula_12、引き分け数formula_13、残り試合数formula_14のとき、チームAが今後formula_15 試合勝ってリーグが終了した場合のAの勝率formula_16 はである。チームBをマジック対象チームとするとき、チームBが全ての残り試合に勝った場合のBの勝率formula_18 はである。Aの勝率がBの勝率を上回るにはformula_20 である必要がある。これに上式を代入して整理すると、formula_22は上の式を満たす最小の整数nなので、チームAのBに対するマジックナンバーformula_23はとなる。ここでformula_25 は床関数。引き分け数が同じ、または引き分けが無い場合、すなわちformula_26 の場合、formula_27 でしかもformula_28 は整数なので、formula_22はは前述した式に一致する。引き分けのあるなしに関わらず、formula_22は以下の方法でも求められることが簡単な計算で確かめられる。また上述の(1)式を変形することにより導かれる。の式を用いてもformula_22を計算することができる。定義より、マジックナンバーが増加することはありえないが、リーグ戦が進むとマジックナンバーが減ることがある。マジック点灯チームA、およびマジック対象チームBの勝敗により、Aのマジックナンバーは以下の挙動を示す。ここでformula_40 、formula_41 、formula_42 、formula_43 は、で表される整数とする。以上をまとめると次のようになる。ただし、マジック対象チームが交代する場合には上記のような挙動には必ずしも当てはまらない。引き分けの場合は1つ減るかどうかは勝率により左右されるが、引き分け再試合制でない場合、点灯チームと対象チームの双方が引き分ければ通常は1つ減るが、引き分け数にばらつきがある場合に変則的な減り方をすることがまれにある。いったん消滅した後に再点灯した場合も、消滅した時の数字より小さくなる。それは各チームがそれぞれに個別にマジックナンバーがあり、はじめは直接対決などの考慮に入れないいわゆる隠れマジックとなっており、隠れマジックの状態でも試合に勝利したり対戦相手が敗れれば数字が減少するからである。なお、マジックナンバーが点灯したチームが変われば数字上は増えることはありうる。※パ・リーグの前後期優勝およびプレーオフ進出マジックは含まない米国の場合は、他チームの自力優勝の可能性を考慮しない。よって、「点灯」という概念がなく、消滅もしない。2001年にアメリカンリーグ西地区のシアトル・マリナーズが独走した時、シーズン前半にして早くも地区優勝マジック97が点灯していたが、話題にしていたのは日本のメディアのみで、現地のメディアは取り上げなかった。なお、現地時間の2001年5月31日の試合を終えた時点で、アメリカンリーグ西地区の成績はで、この時点でのマリナーズとアスレチックスとの残り直接対決数は13試合あった。アスレチックスが残り110試合に全勝すれば136勝26敗(勝率.840)になるが、マリナーズがアスレチックス戦を除いた97試合に全部勝つと137勝25敗(勝率.846)となるため、アスレチックスの自力優勝は消滅した。エンゼルス・レンジャーズも自力優勝は消滅していた。またメジャーリーグでは引き分けがないため、マジックナンバーの計算に前述した簡単な式を用いることができる。ビンゴゲームで、日本でいう「リーチ」状態の時に、ビンゴ完成のために必要な番号をマジックナンバーと呼ぶのが語源とされている。「この数字が出てちょうだい」と呪文(magic word)のようにお祈りする数字で、それが転用されて「実現を願う数字」を意味する語として使われるようになり、特にリーグ戦方式のスポーツでは「そのチームの優勝までに必要な最小勝利数」の意味に使われるようになった。野球では1947年には使われていたとされる。日本では、ビンゴに独自に「リーチ」という言葉が定着しているため、語源までは伝わらなかった。そのため、いくつかの俗説が流布している。「ついたり消えたりするから」という説があるが、米国では他チームの自力優勝の可能性と関係なく数える。また「(カレンダーのように)マジックで数字を消していくから」という説もあるが、日本のマジックインキ、米国のマジックマーカー共に1950年代の発売であり、「マジックナンバー」の語が使われ始めた1940年代よりも後である。2006年のパシフィック・リーグでは、9月22日に1位の北海道日本ハムファイターズ以外のチームに自力シーズン1位の可能性がなくなったにもかかわらず、日本ハムにマジックナンバー(レギュラーシーズン1位決定マジック)が付かないという異例のケースが起こった。9月22日時点でのパ・リーグの1位から3位までの順位を下に示す。※4位以下(ロッテ・オリックス・楽天)はすでにBクラスが確定一方、上位3チームが残り試合を全勝した場合の勝率は以下の通りである。既に日本ハムとの直接対決を終えていた西武の自力シーズン1位は消滅していた。しかしソフトバンクは日本ハムとの直接対決を2試合残していた為、ソフトバンクが残り試合に全勝した場合、日本ハムは最高でも2勝しかできない。この場合、日本ハムの最高勝率は.603(82勝54敗0分け)となり、ソフトバンクが日本ハムを上回ることになる。しかしそのソフトバンクも直接対決がもうない西武の勝率を自力で上回ることは出来ない為、自力シーズン1位はやはり消滅していた。以上をまとめると、「自力で1位になれるのは日本ハムのみであり、3位のソフトバンクは1位である日本ハムの勝率を自力で上回れるものの2位である西武の勝率を自力では上回れない」という三すくみの状況となった。1位チームの勝率を自力で上回れるチームがあれば、そのチームが2位チームでなくとも、また自力優勝の可能性がなくともマジックは付かないので、日本ハムのマジックは点灯しなかった。ちなみに22日は3チームの中で西武だけが試合があり、西武が負けたためこのような状況になった。21日の段階では西武が2位ながら日本ハムに対しても自力で勝率を上回ることができたので、西武に「逆マジック5」が点灯していた。「逆マジック」も数年に1度程度しか出ないものである。単に「目標まであといくつ」という意味で用いられることもある。自力優勝に関係なく「優勝まであとn勝」など、トーナメント戦でも決勝進出のことを「マジック1」など、「2000本安打までマジック9」などのような使われ方をする場合もある。これらはすべて派生的な用法である。マジックナンバー点灯チームが、必ずしもその時点での首位のチームとは限らない。これは、ある日付に残り試合数が異なっていると、残り試合の多い方が最終勝率・勝利数を高められる場合があるためである。マジックナンバー点灯チームよりマジックナンバー対象チームが上位にいる場合「逆マジック」ともいう。なお「逆マジック」は、あと何敗すると最下位が決定するか、もしくは優勝やポストシーズン進出が消滅するかといった、敗北状態へのカウントダウンのために用いられる場合もある。特に前者の意味では「裏マジック」・「最下位マジック」という言葉もある。米国では後者の意味で「エリミネーション・ナンバー」が用いられ、ポストシーズン進出が消滅したチームには「E」で表される。2004年からパシフィック・リーグがプレーオフを導入。また、2007年から両リーグでクライマックスシリーズ(以下「CS」という。)がスタートした。これに進出できるまでのマジックを、それぞれ「プレーオフ進出マジック」「クライマックスシリーズ進出マジック(略してCSマジック、あるいはCMと表記される)」。自力で今いる順位に入る可能性がなくなったチームが3チーム以上になった場合にそのチームに点灯する。なお、パリーグでは2004年からの3年間はプレーオフの結果でリーグ順位を決定していたため、従来指標によるマジックは「レギュラーシーズン1位決定マジック」としていた。対象となるチームは4位以下(Bクラス)の全チームであることが多いが、残り試合数に差があれば、優勝マジックと同様にBクラスのチームに点灯する可能性もある。主な概要は優勝マジックと同じである。また、下位のチームの勝率が5割以下になることが確定した場合、マジックが3減ることもある。最速点灯記録は7月8日の阪神(2008年・M55)。CSへは、各リーグ6チーム中上位3チームが出場できるため、自チームが残り試合全敗で、他チームのうち、残り試合全勝でも自チームより勝率が上回れないチームが3チーム以上あれば、自チームのCS進出が決まる(CSマジックがゼロになる)。CSマジックの場合、マジック点灯チーム、マジック対象チームのいずれも複数のため、その計算はリーグ優勝マジックよりも複雑である。特にリーグ戦では、下位チームの試合消化が遅いと現在より下の順位に自力で入れないケースが生ずるため、計算がさらに煩雑になりやすい。例えば2位甲が71勝65敗6分、3位乙が68勝64敗5分、4位丙が63勝63敗5分の場合、甲は残り2試合に全勝すると73勝65敗6分(勝率.52899)となるが、乙が残り7試合を6勝1敗で、丙が残り13試合を11勝2敗で終えると、乙と丙が74勝65敗5分(勝率.53237)で並ぶため、甲は残り2試合がともに乙戦でない限り、2位でありながらより下の3位に自力で入れない。プレーオフマジックの発生を、メディアが見落とすこともまれにある。メディアの多くは、共同通信社が配信する順位表に依存している。2009年9月19日付け以降、共同通信社の配信記事を転載している新聞で、プロ野球のセ・パ両リーグの順位表には、CS進出決定の☆マークのみの掲載となった。これは、配信元である共同通信社の「マジックナンバー計算プログラム」の一部に不具合が生じたためである。ただし、リーグ優勝へのマジックナンバーは掲載されているため、同プログラムの不具合はCSマジックのみだと思われる。なお、記事本文にはCSマジックの状況は記載されているほか、残る1枠(3位)に対しての進出マジックについても、優勝マジックの条件と大差ないため数値が記載されることもあった。こうした経緯もあり、共同通信社では2010年シーズンはCS進出決定となるまでの勝利数の指標として「CSクリンチナンバー」を配信することとした。詳細はクライマックスシリーズ#クリンチナンバーも併せて参照。共同通信社の「マジックナンバー計算プログラム」の不具合として、以下の事例が挙げられる。2009年9月12日に、CMが1となった巨人のクライマックスシリーズ進出決定が報じられた。9月11日終了時、セ・リーグで、巨人は75勝39敗9分で勝率.658。CM「1」と報じられていた。巨人は残り21試合全敗した場合の最終勝率.556(75勝60敗9分)となる。6位の横浜(43勝78敗0分)は残り23試合に全勝しても最終勝率は.458、5位の広島(55勝63敗4分)も残り22試合に全勝しても最終勝率.550であり、この2チームはいずれも巨人を上回れない。一方、3位のヤクルトは56勝61敗1分で、残り26試合全勝すると最終勝率は.573、4位の阪神は56勝62敗4分で、残り22試合に全勝すると最終勝率は.557となり、いずれも巨人が残り試合全敗した場合の最終勝率を上回る。このため、共同通信社の配信記事は、巨人のCMを「1」としていた。しかし、この時点で阪神は残り試合に全勝しないと巨人の勝率を上回ることはできない状態にあり、一方のヤクルトは2敗以内であれば巨人を上回る可能性はあったものの、ヤクルトと阪神の直接対決が6試合残っていたために両チームが揃って巨人を上回る可能性はなく、同時に巨人が4位以下になる可能性もなくなっていたため、CS進出が既に確定していたことが発覚した。この事例では、阪神とヤクルトが「巨人を上回れる最低成績での敗戦数の合計」が「阪神・ヤクルトの直接対決の数(6)」未満となれば、いずれか一方はその他の試合を全勝しても巨人の成績を上回れなくなるため、その時点で巨人の3位以上は確定する。そのため、実際には9月11日の前日の9月10日の時点で、巨人のCS進出は決定していたことになる。(9月11日時点での成績から、それ以前の試合結果を元に成績及び最低・最高勝率を算出)
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。