転移RNA(てんい-、)は73〜93塩基の長さの小さなRNAである。リボソームのタンパク質合成部位でmRNA上の塩基配列(コドン)を認識し、対応するアミノ酸を合成中のポリペプチド鎖に転移させるためのアダプター分子である。運搬RNA、トランスファーRNAなどとも呼ぶが、通常tRNAと略記される。通常は、D・アンチコドン・Tという3つのアームを持つクローバーリーフと呼ばれる二次構造を持ち、これが折り畳まれて3次元的にはL字型になる。L字の長い側の先端にはアンチコドンがありmRNA上のコドンと対合する。短い側の先端にはアミノ酸が結合しポリペプチド合成に用いられる。tRNAの塩基は化学修飾を受けているものも多く、なかでもメチル化は頻繁に見られる。セレノシステイン-tRNAと、ピロリジン()-tRNA は例外的に他のtRNAにない様々な特徴を持つ。mRNA上のコドンと対合する3塩基をアンチコドンと呼ぶ。例えばAAAというコドンはリジンをコードしているが、これに対応するリジンtRNAのアンチコドンはUUUとなっている。しかしこの対応関係は1対1とは限らず、1つのアンチコドンが同じアミノ酸をコードする複数のコドンを認識する場合がある。仮に1対1だとすれば61種のtRNAが必要になるが、通常はこれよりも少ない種類のtRNAしか存在しない。アンチコドンの1文字目は化学修飾によりイノシン(I)またはシュードウリジン(Ψ)になっている場合がある。これらの修飾塩基は複数の塩基と水素結合を形成できるため、こうしたtRNAは3文字目だけが異なる複数のコドンを認識できる。例えばグリシンをコードするコドンは、GGU・GGC・GGA・GGGの4つだが、アンチコドンの1文字目が化学修飾されていれば1つのtRNAで4つのコドンを読むことが可能である。tRNAはそれぞれ特定のアミノ酸としか結合しないが、遺伝暗号が縮重しているため、異なるアンチコドンを持つtRNAが同じアミノ酸と結合する場合がある。1つのアミノ酸に対して2種類以上のtRNAが存在し、1つのtRNAは複数のコドンに対応しうるため、30から40種のtRNAが1つの翻訳系で使われる。tRNAの3'末端にあるCCAのアデノシン残基には、tRNAごとに特定のアミノ酸が結合してアミノアシルtRNAとなる。この反応をアミノアシル化といい、アミノアシルtRNA合成酵素によって触媒される。通常はアミノ酸ごとに1種類のアミノアシルtRNAシンセテースが存在しており、アンチコドンが異なる複数のtRNAを1種の酵素が認識してアミノアシル化を触媒している。コドンとアミノ酸の正確な対応には、tRNAとアミノアシルtRNAシンセテースの特異的な相互作用が必須となる。この対応関係はアンチコドンだけを認識して決定しているわけではないらしい。ゲノム中のtRNA遺伝子の数は生物により様々である。線虫C. elegansの核ゲノムには全部で19000遺伝子があるが、そのうち659がtRNAをコードしている。出芽酵母では275である。ヒトでは497個が知られており、アンチコドンごとに整理すると49種となる。またヒトのゲノム中にはtRNA由来の偽遺伝子が324個見つかっている。真核生物では、mRNAがRNAポリメラーゼIIにより転写されるのに対し、tRNAはRNAポリメラーゼIIIによって転写される。その後Pre-tRNA スプライシングや塩基修飾を経て成熟型のtRNA分子へと加工される。学術用語集では植物学編・遺伝学編が「転移RNA(運搬RNA)」、動物学編が「運搬RNA」としている(すべて増訂版)。JISの生体工学用語(K3610)では「転移RNA」である。一般には「転移RNA」の方が好んで用いられる傾向にあるが、高校教育では「運搬RNA」が用いられている。
出典:wikipedia
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