マルファン症候群 (マルファンしょうこうぐん、Marfan syndrome、MFS)とは、常染色体優性遺伝の形式をとる細胞間接着因子(フィブリンと弾性線維)の先天異常症による結合組織病(遺伝障害、遺伝病)。マルファンはドイツ語式発音によるもの。結合組織とは組織の間を埋める組織であり、全身に存在する。結合組織は細胞成分と細胞外基質からなる。細胞外基質は蛋白質で出来ている。細胞外基質を構成する蛋白質の一つに細胞間接着因子がある。細胞間接着因子には細胞外基質の強度を保つ蛋白質FBN1やTGFBR2、等がある。本症ではこれらの蛋白質が充分機能しないために、全身に奇形等を起こす。多発奇形症候群。細胞外基質の異常から結合組織が脆弱となり細胞に弾力性を減少させ大動脈や網膜、硬膜、骨の形成等に異常をもたらす。マルファン症候群は皆、同じ欠陥遺伝子を持っているという点で「可変的な表現」で遺伝病であるが誰でも同じ程度に同じ症状を経験するというわけではない。生まれたときから非常に重篤な症状もあれば中高年になるまで大きな症状が出ることがない、あるいは循環器系の症状が重い、様々な症状を持ち合わせる、または知的障害を併せ持つ症状、など様々である。現在、1型、2型がみとめられている。組織の間を埋める結合組織に必要な蛋白質の種類によって幾つか原因が特定されている。マルファン症候群は、出生時にも発見される。しかし青春期または青年期まで診断される可能性のほうが高く一般的である。30歳前後に突然の大動脈解離によって自覚することもしばしばある。発生頻度は全ての人種と男女にかかわらず3,000〜10,000人あたり1人といわれる。日本には20,000人、米国には約50,000人がいると推定される。おおよそ75%が親からの常染色体優性遺伝で25%は新たな突然変異によるもの。医学の発展と共に長期生存率も上昇。原因遺伝子が完全に解明されれば新たな型が発見されて、その数を含めると患者予想数も増加すると思われる。マルファン症候群の突然変異を根本的に予防する方法はない。病気による要因の無い低身長の両親の間からも発生する。最も危険な合併症は、心臓血管の壁の結合組織に起こる弱体化。血管の内圧を常に下げ鼓動の力強さを減少させることによって解離の危険性を減少させておくことが重要。激しい動きを伴わない生活でも本人が自覚することなく動脈弁輪の拡張(後述)が進行して、日常生活の何気ない動作の中で解離や破裂といった形で発症することもある。病気の突然死(Sudden Death)を防ぐためには早期診断が大きな鍵となる。結合組織は全身に存在するため、様々な症状を呈する。結合組織のひとつとして膠原(コラーゲン)線維がある。それらは主に骨や皮膚、腱、歯、軟骨、大動脈などにある。一般的にコラーゲンは年齢と共に減少し始める。しかしマルファン症候群は元もとコラーゲンなどの結合組織の形成に異常がある。それらの理由から大きく分類して体の3つの主要器官系統に影響を及ぼす。大動脈は内膜、中膜、外膜の3層構造になっている。マルファン症候群は先天性に中膜が脆弱である。中膜にある結合組織が上手く機能せず袋状に壊死を起こす。これを嚢胞性中膜壊死と言う。中膜の外側2/3位の位置で中膜が解離し解離した部位に血液が流れ(リエントリー)、さらに末梢部で血液が再び血管腔に流れ込むこともあり、これを大動脈解離という。嚢疱性中膜壊死になって脆弱化した上行大動脈の基部の動脈壁は血行力学的な負荷を受けて(大動脈弁輪が引っ張られ)内腔が大動脈弁を囲む輪が広がってしまう。これを大動脈弁輪拡張症(AAE)と言う。つまり大動脈起始部分(大動脈が大動脈弁につながる領域)が拡張(広がる)する。僧帽弁の弁尖と、弁尖が逆流方向へ開かないようにふんばる腱索の結合組織が弱まって薄くなると、変性を起こして弁の支持が弱まる。バルサルバ洞の拡大を伴う。末梢血管の脆弱性から頭痛を起こす。循環器以外の胸部症状として、肺を覆う膜に穴が開く。肺を覆う膜を胸膜と言う。胸膜を形作る結合組織が弱まるために、胸膜に穴が開く。胸膜に穴が開くと気胸になる。減呼吸症候群、気道の内側を覆っている組織の変わった柔軟性に起因する睡眠時の無呼吸等を起こす。ひいては大動脈解離の危険度を増す。肺動脈解離、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の65〜75%に水晶体亜脱臼(水晶体転位)。水晶体の支持組織であるチン氏帯が弱まり水晶体が上に転位する。水晶体がずれ、上に転位する事を水晶体上方脱臼と言う。結合組織の虚弱のため眼の後ろの光を感じる部分(網膜)離、無処置の網膜剥離によって、盲目、緑内障、白内障(時々40歳という早い時期に生じる)等から視力低下、または視力喪失、失明を起こす。他の眼症状として、近視、結膜が青色に見える青色強膜、虹彩の欠損、虹彩炎、角膜変形(扁平)、斜視、弱視、不随意の眼球運動等(眼振)を起こす。2型でなければ近視はもっとも頻度の高い眼症候で、しばしば小児期の間に急速に進行する。口蓋裂、高口蓋、下顎前突症、低口圧、歯の形成の異常、硬膜の拡張、髄膜ヘルニア、脳の大動脈解離、及び瘤、右頸動脈解離、伝音性および感音性の難聴等を起こす。顎関節の習慣性脱臼が見られることも有る。急速な体重増加または骨格の成長に起因する皮膚のストレッチマーク(皮膚割れ線、皮膚萎縮線、妊娠線)が多い。若い年齢で肩部、臀部と下背の上にしばしば出現するが健康上に問題はない。引っ張ると通常より伸びやすいことが多い。筋肉や脂肪の付き方が充分な栄養や運動を取っているにもかかわらず、減少したり蓄積したりしてアンバランスである。マルファン症候群を持つ小児が一般集団よりわずかに注意欠陥・多動性障害(AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder) の可能性を持つ若干の臨床所見がある。しかしそれらは一般人口集団と同頻度で生じていると思われる。多くの場合、疾患は年齢と共に進行し結合組織の変化が起こるにつれて、症状は目立つようになる。マルファン症候群と診断された場合、あるいはマルファン症候群の疑いがあると診断された場合は治療の時期を逃さないためにも心臓専門医による心臓血管への定期的な検査による診断が生涯に渡り必要である。心臓弁膜症の診断は心エコーによって見つけられる可能性がある。大動脈の解離、拡張がなくても半年に一度の定期検査で行われる。心臓弁と大動脈をよく見るために超音波検査を含む。大動脈拡張や大動脈解離や腰椎仙骨部の硬膜拡張はよく見るためにマルチCTやMRI検査を用いる。解離により突然の移動する胸背部痛、あるいは両下肢の麻痺が起き排尿しづらいなどの膀胱直腸障害などの症状が出て判明することもある。遺伝子検査による診断。遺伝学カウンセリングは、マルファン症候群の遺伝の可能性がある家族に利用できる。マルファン症候群患者の親族は本症の所見がないか検査をうけるべきである。出生前診断は不可能である。診断基準は、心臓血管系、循環器系、体格、骨格系、眼科系、硬膜拡張の検査。家族歴。採血による遺伝検査。等。上記のうち二つしか認められなくてもあるいはいくつかの症状から不全型としてマルファン症候群が疑われ経過観察となる場合がある。以上のことから今後、不全型が増える傾向にある。とくに若年の場合、症状に個人差が大きく慎重な診断と経過観察が求められる。マルファン症候群の患者は必ずしも平均身長より背が高くはないと。遺伝的な予想身長よりも背が高くなるというだけであり高身長でない人にもマルファン症候群は認められている。下垂体性小人症を同時に患う症例もあり。マルファン症候群の根本的な治癒はない。しかし、効果的な処置及び危険な合併症の予防を行うことで多くの患者が通常の寿命を生きることができる。心臓血管系の疾患について大手術が必要となるので、そのような手術ができる病院を選ぶことが大切。先天疾患のため対症療法を行う。対症療法として矯正や手術療法を行う。歯並びの異常は歯列矯正術を行う。極端に高身長の女児に対してはエストロゲンとプロゲステロンにより思春期早発を誘発させることで最終身長を抑える方法もある。チン氏帯脆弱性が原因となり、水晶体変位や水晶体亜脱臼、その前症状としての視力低下などが起こる。視力の矯正や治療のため手術を行う。レーザー手術による視力矯正が可能な場合や、水晶体脱臼の場合、水晶体包摘出をし眼内レンズ毛様溝縫着術を行う。大動脈壁は正常より柔らかく、もろい。あるいは弱く、伸びやすく、形がくずれて膨張する傾向があることが多い。また、進行する動脈拡張の出現や拡張の速度は極めて多様であり診察に注意が必要である。マルファン症候群の約90%の人々は心臓血管になんらかの異常がある。特に心臓から血液を他の体へ運ぶ大動脈の壁の三層部分が弱くなって、切れたり拡大する。そのため解離・破裂に注意する。大動脈の人工血管への待機置換術の手術による死亡率は低いが急性大動脈解離による緊急血行再建術の場合、術後の早期死亡率が高い。適切な手術時期の見極めが大事。心臓の血管への負担を減らし、高血圧を防ぎ、負荷の軽い運動を選択する。降圧剤のベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)は、大動脈瘤のような合併症の一部を制御するのに用いられる。ベータ受容体遮断薬に対するアレルギーがある患者は、ベラパミルのようなカルシウムブロッカーを与えられる可能性がある。最近、降圧剤ロサルタンは、マルファン症候群を持つマウスで、大動脈瘤と肺の問題を予防することが発見された。マルファン症候群は多岐の症状を抱えたり、多くの合併症が起こることもあるが適切な治療を受ければ通常の寿命である。近年、外科的手術の成績は上がってきておりこの30年にわたって、ちょうど61歳以上まで、マルファン患者の平均余命は注意深い医学的管理により、ほぼ2倍になった。この劇的な改善は、医療の新しい手術手技、改善された診断と新しい技術のものであると考えられ手術により寿命を延ばすことは可能になってきている。高齢のマルファンも増加傾向にあり老化による病状の問題への取り組みも注目される。以前はマルファンをもつ女性は大動脈拡大または解離の危険度のため、妊娠はしないように勧められたが、妊娠は大動脈の状態を注意深く検査した上で、医師の診断と管理の元に可能である。大動脈が拡張している場合は勧められない。血圧の増加により動脈解離の危険性も増加する。帝王切開による出産も選択される。人工弁置換者の妊婦の出産例も国内にあり。新生児マルファンの予後は多臓器にわたる重症で急速に進行することも多くあまりよくない。心臓血管外科、循環器科、整形外科、眼科、神経内科、リウマチ科、遺伝科、内分泌科、小児科、等。各科目の連携が必要であり、幅広い知識と経験の医師の協力が欠かせない。マルファン症候群の症状と類似したな徴候があるものは以下の通り:腹部の筋弛緩を主徴とするマルファン症候群があることから生じることがあるが、マルファン症候群でなくても一般的に起こりえる症状は以下の通り:
出典:wikipedia
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