ヤンバルクイナ(山原水鶏、"Gallirallus okinawae")は、ツル目クイナ科ヤンバルクイナ属に分類される鳥類。日本(沖縄島北部の大宜味村・国頭村・東村)固有種模式標本の産地はフエンチヂ岳。和名ヤンバルは沖縄島北部を指す呼称である山原に由来する。1981年の数年前から山階鳥類研究所の研究者らは沖縄本島北部に位置する山原(やんばる)地域で種不明のクイナ類を目撃していたが1981年に調査を行った結果、2羽を捕獲し(これらはいずれも形態の検討等の後放鳥された)、同時に入手された1羽の死骸(剥製標本)とあわせて検討された結果、学界に未知の新種であることが判明し、同年末に和名をヤンバルクイナ、学名を"Rallus okinawae"として新種の記載論文が発表された。この剥製標本がホロタイプ標本とされたが、これは玉城長正が与那の道路際で発見した死骸が、友利哲夫を経由して、山階鳥類研究所に寄贈されたものである。この「発見」の後になって、本種が以前から、地元の人々にアガチ、アガチャ(「慌て者」の意)、ヤマドゥイ(「山の鳥」の意)等の名で知られていたことが広く知られるようになった。また、鳥声録音家、野鳥愛好家、写真家ほかによって録音、羽毛の拾得、生態写真の撮影等がなされていたことも判明した。全長35センチメートル。翼長15 - 16センチメートル。翼開長48 - 50センチメートル。体重340 - 430グラム。上面の羽衣は暗オリーブ褐色、顔や喉の羽衣は黒い。耳孔を被う羽毛(耳羽)から頸部にかけて白い筋模様が入り、眼先に白い斑点が入る。頸部から腹部にかけての下面の羽衣は黒く、白い横縞が入る。尾羽基部の下面を被う羽毛(下尾筒)は黒褐色で、下尾筒の羽先は黄褐色がかった白色。体重と比較して翼の面積は小型で、翼を動かす筋肉も貧弱。初列風切内では第10初列風切が最も短い。虹彩は赤い。眼瞼は赤橙色。嘴は太い。嘴の色彩は赤く、先端が白い。後肢は発達し太い。後肢の色彩は赤い。卵は長径4.9センチメートル、短径3.5センチメートル。幼鳥は虹彩や嘴が褐色で、後肢は黄褐色。1978年に与那覇岳で山階鳥類研究所員に発見されてから複数の目撃例があり、1981年に特別調査チームが編成され6月に幼鳥・7月に成鳥が捕獲された。発見後には現地で死骸の拾得・写真撮影・鳴き声の録音例・後述するように方言名の存在などが判明した。BirdLife Internationalでは2013年現在、本種を"Hypotaenidia"属に分類している。ムナオビクイナ、カラヤンクイナと近縁であると考えられている。平地から標高500メートル以下にある主に下映えが繁茂した常緑広葉樹林に生息する。夜間になると樹上で休むが、これはヘビを避けるためだと考えられている。ほとんど飛翔することはできず、樹上6メートルの高さにいた個体がほぼ羽ばたかず約45度の角度で滑空した観察例がある。薄明薄暮時に鳴き声を挙げ、縄張りが隣接する個体同士で鳴き声を挙げ縄張りを主張する。昆虫、甲殻類、両生類、種子などを食べる。林床で採食を行うが、浅い水中で採食を行うこともある。外部寄生虫として2005年に西銘岳で幼鳥2羽からシラミバエ科の一種"Ornithoica exilis"が採取された報告例がある。繁殖様式は卵生。地表に枯れ葉などを組み合わせた皿状の巣を作る。3 - 5個の卵を産む。方言名としてアガチー(せかせか歩くの意)・ヤマドゥイ(山鳥の意)・シジャドウイがある。森林伐採による生息地の破壊、道路・ダム建設による生息地の分断、交通事故、側溝への雛の滑落による衰弱死、人為的に移入されたイヌやノネコ・フイリマングースなどによる捕食などにより生息数は減少している。増加したハシブトガラス、新たに移入されたタイワンスジオなどによる影響も懸念されている。1996 - 2001年に本種の生態を利用し録音した鳴き声を再生して反応の有無により生息状況を確認するプレイバック法を用いた調査では、1985 - 1986年の調査と比較して分布の南限が10キロメートル北上し分布域が約25 %減少しているという結果が得られた。特にマングースについては沖縄本島南部から分布が北上するのとヤンバルクイナの分布の南限が北上するのがきわめてよく一致していることから、本種の減少の主因であると考えられている。2000年に大宜味村・2005年に東村ではほぼ見られなくなり、連続的に分布するのは国頭村に限られた。1998年6月 - 2003年6月に22羽の死亡報告例があり、そのうち16羽(年あたり平均3.4羽、死亡報告例の72.7 %)は交通事故が死因とされる。5 - 6月に交通事故による死亡が多い傾向にあり、これは繁殖期と重複することから雛に餌を与えるために活発に活動している・側溝に落下した雛の周囲で警戒している親鳥が交通事故に逢う可能性が高いことが示唆されている。2000年度から沖縄県(2001年度には環境省も)による罠を用いたマングースやネコの駆除・捕獲が進められているが、完全駆除の目途はたっていない。2005-2006年にかけては、マングースの北上を食い止めるために、沖縄本島の東西を横断するフェンス(北上防止柵)が、大宜味村塩屋湾?東村福地ダムを結ぶラインに設置された。ノネコの発生防止のために、国頭村、東村、大宜味村では2004年9月に相次いで飼い猫の適正飼養に関する条例が制定されており(たとえば、)、飼い猫をマイクロチップによって個体識別するなどの対策が実施されている。1998年から山階鳥類研究所による発信機を取り付けた生態調査が行われている。1999年には「やんばる野生生物保護センター」が設置された。2004年からは環境省で「ヤンバルクイナ保護増殖事業計画」が策定され、生態調査の実施や飼育下繁殖施設の建設が進められている。2005年にNPOどうぶつたちの病院によって「ヤンバルクイナ救急救命センター」の運営が開始された。日本では1982年に国指定の天然記念物に指定されている。1993年に種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている。5-6月に轢死による死亡例(ロードキル)が多いことも大きな問題で、巣立つ前の幼鳥に餌を与えるため親鳥が活発化することが原因だと考えられている。1995-2014年までに、交通事故確認件数が312件(うち278件死亡)されており、そのうち5月が75件(うち死亡69件)、6月が63件(うち死亡55件)と44%がこの時期に集中している。また、特に近年交通事故認知件数は増加傾向にあり、1998-2004年は年間1-6件だったものが、2014年は47件(うち死亡43件)発生している。1985 - 6年の生息数は約1800羽、2002年の生息数は約1,200羽と推定されている。2005年には717羽。2010年の生息数は845 - 1,350羽と推定されている。2006年以降はフイリマングース駆除事業のためか生息数は漸増傾向にあるが、完全駆除の見通しが立っていないこと・交通事故死が多いなど生息数減少の原因が未だ解決されていないという問題もある。マングース防除事業等の進展に伴って、2011年以降、分布域及び生息数は回復傾向にあり、2013-4年の推定生息数は1,500羽前後と推定。近年生息が確認できなかった大宜味村北部山中や東村高江での生息が確認されてきている。ただし、分布域も不連続で未だ安定生息とは言えない状況にある。繁殖については、1998年に沖縄県名護市のネオパークオキナワにて、野外から保護された卵からはじめて孵化に成功した他、2007年にNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の施設にて卵の救護による育成個体同士による自然孵化及び人工孵化、また、環境省がヤンバルクイナ飼育・繁殖施設にて、2012年に4羽の自然孵化に成功。また、2014-5年には、ヤンバルクイナ救命救急センター(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄所有)にて飼育下繁殖個体同士からの第2世代のヒナ3羽の孵化に成功している。和名は沖縄本島北部をヤンバル(山原)と呼ぶことに由来する。新種の記載に先立って、1981年に現地で捕獲調査を実施した山階鳥類研究所の調査チームの間では、和名として「ヤンバルクイナ」か「ヤンバルフミル(フミルはバンの地方名)」にしようという話し合いがなされていた。当時は「ヤンバル」という名前は一般的でない名称であったため、山階鳥類研究所の内部では「オキナワクイナ」という名称が相応しいという意見もあったが、「鳥の保護には地元の理解と協力が不可欠なので、それにはより具体的なヤンバルを名前に入れるのがよい」という判断から、最終的に「ヤンバルクイナ」という和名がつけられた。これ以前にも「ヤンバル」を冠した生物名称はあったが、全国的に広く知られるようになったのは本種の命名以来のことである。ヤンバルクイナの発見は、沖縄においても大きく取り上げられ、その目立つ姿も手伝って話題となった。1987年の沖縄・海邦国体ではマスコットキャラクターのクィクィとして用いられた。また、これに前後してヤンバルテナガコガネが発見されたこともあり、沖縄はいわば新種ブームのようなものが起こるに至った。当時全日本ライトフライ級のプロボクサーであった渡嘉敷勝男は所属ジムの会長から「ヤンバルクイナ」の通称をつけられるなど、多くの場所で本種の名前が使用された。本種があまりに有名になったので、沖縄の県鳥だと思っている人も多いが、それはノグチゲラである。沖縄県国頭郡国頭村安田にあるヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森において、実際では目にすることさえ難しいヤンバルクイナが目の前で観察する事ができる。国頭村安田の学習施設で飼育されているヤンバルクイナは、卵で保護されたので人に対する警戒心が少なく、名前は「キョンキョン」である。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。