糠漬け(ぬかづけ)とは、米糠を乳酸菌発酵させて作った糠床(ぬかどこ)の中に野菜などを漬けこんで作る日本を代表する漬物の一つである。糠味噌漬け(ぬかみそづけ)・どぶ漬け・どぼ漬けとも呼ばれ、また漬け込む方法のことを指す場合もある。一般に胡瓜・茄子・大根といった水分が多い野菜を漬けこむことが多いが、肉、魚、ゆで卵、蒟蒻なども利用される。あまり漬かっていないものは浅漬け、一夜漬けと呼ばれ、漬かりすぎたものは古漬け、ひね漬けなどと呼ばれる。また、干した大根を糠に漬けたものを沢庵という。現在の形の糠漬けが出来たのは、江戸時代初期と言われている。もともとは、奈良時代に須須保利(すずほり)という漬床として臼で挽いた穀類と大豆を使った漬物があったという。江戸時代になって、精米の際に出る米糠をこの穀類と大豆の代わりに使ったのが糠漬けである。糠のビタミンB1が野菜に吸収されるのを利用して、当時流行していた脚気の被害をある程度防いだと考えられている。伝統製法による方法では、まず糠床を作る。適量の糠(炒ってから使う場合もある)に一度煮沸してから冷した15%濃度の食塩水を加える。水の量は糠床が味噌よりもやや固めになるぐらいである。一昼夜程度の短期間で仕上がる速醸製法では、一例として糠の70%程度の麹と7%の食塩を添加し水分量を50%に調整する。塩のはたらきは浸透圧による脱水作用で野菜などの食材中にある水分を細胞外に出す働きがある。また、pHを下げ菌をコントロールする作用もあり、塩の濃度により、漬物をおいしくする乳酸菌など有用菌の働きを活発にし食べ物を腐敗させる菌を抑える効果もある。野菜などを漬ける前に塩で揉むと、色素が安定し色が引き立ち、脱水作用により水分がぬけた食材の細胞の中に入り込んで食材に味をつける。唐辛子、昆布とともに壺やタッパー等に詰め、表面を平らにならして糠床の準備ができる。これに野菜くずを1週間ほど毎日取りかえて漬けると、野菜についていた乳酸菌等が繁殖し、一応、完成である。しかしこの段階では糠床は熟成していないため、漬物の風味は少ない。野菜を漬けこみ毎日手入れすることで発酵がすすみ、風味が増していくのである。夏場なら2ヶ月、冬場なら4ヶ月ほどでおいしい糠床が完成する。もっとも大型食料品店などで熟成済みの糠床が入れ物ごと売られているので、これを利用すれば手間がかからない。また、熟成した糠床を少量分けてもらうこと(床分けという)で短期間で熟成した糠床を作ることもできる。風味付けに果物の皮を漬ける人もいる。完成した糠床に、よく洗って塩で揉んだ野菜を漬けると糠漬けの完成である。漬けこむ時間は野菜の大きさや季節によっても変わるが、丸のままの胡瓜なら半日ほどで漬けあがる。あまり漬かっていなければ醤油をたらして食べ漬かり過ぎている場合は細かく刻んで軽く絞り、お茶漬けやチャーハンの具にしてもよい。普通は洗ってから切って食べるが、洗わずに糠味噌のついたまま食べる場合もある。糠漬けの味を手軽に早く実現する方法として、ヨーグルト漬けがしばしばメディアで紹介された。。ぬか漬けができるメカニズムには発酵と浸透がある。漬け込むことで糠に含まれる豊富な栄養が材料に浸透し、乳酸菌や酵母による発酵で甘みと香りが増す。糠と塩と水で作られるぬか床に野菜を日々出し入れすることにより独特の風味が形成される。ぬか床が作られた当初は土壌由来の大腸菌が80%を占めるが、1ヶ月後には大腸菌は姿を消し、乳酸菌が卓越するようになる。乳酸菌が生成する乳酸と添加している食塩により、腐敗菌は抑制される。2ヶ月後には野菜由来の酵母が出現し始めるとほぼ同時にぬか床が独特のの香りを持ち始める。ぬか床の脂質と野菜、乳酸菌と酵母の働きでぬか漬けの独特の香味が作られていると考えられている。糠床の腐敗を防ぐため、毎日底からかき混ぜて空気に触れていた部分を奥へと混ぜ込む必要がある。温度の高い夏には、1日2度かき混ぜないといけない場合もある。かき混ぜ終わったら平らにならしてふちについた糠を拭き、蓋を軽く置いておく。また、野菜を漬けていると糠床が水っぽくなり腐敗しやすくなるので1週間に1度は窪みを作って布巾で吸い取るか、新たに糠と塩を加えて硬さを元に戻しておく。旅行などでどうしても長期間手入れが出来ないときには、表面に塩を多めに振って冷蔵庫に入れておくとしばらくは腐敗が防げる。発酵が進み過ぎて糠漬けが酸っぱくなったときは、卵の殻を砕いて入れる。茄子の皮の色を綺麗に出したいときは鉄釘か専用の鉄製器具が売られているのでそれを入れておく。鉄釘を入れる場合、先端が尖ったまま入れてしまうとかき混ぜるときに負傷する恐れがあるので、手を傷つけない程度に丸めておく必要がある。強い刺激臭(セメダイン臭とかシンナー臭とも形容される)がする場合は、塩水を入れてよくかき混ぜるとよい。茄子の色素のナスニンというものでアントシアン系の色素の一種で、これがアルミニウムや鉄のイオンと結びつくと色が鮮やかな紫色になることが知られている。これは古釘から出る鉄イオンやミョウバンのアルミニウムイオンがナスニンの分子に直接結びついて青紫色の化合物を作るため。ただし、ミョウバンは入れすぎると味を悪くする。なお、きちんと手入れされた糠床は不快ではないが若干独特の発酵臭がするため、冷暗所で換気の良いところに置いた方がよい。細菌叢(微生物叢)は主に乳酸菌の "Lactobacillus" 属で構成されるが、漬け込む食材と時間経過によって大きく変化する。発酵初期には、環境由来の発酵とは無関係な環境菌群が多いが、次第に塩分の多い環境に適応した "Pediococcus pentosaceus" といった好塩乳酸球菌が存在し、発酵が進むと "L. plantarum" , "L. brevis" 等の乳酸桿菌へ菌叢が変化する熟成した漬け床では、好気性球菌や酵母が乳酸球菌よりも優勢であることもある。"L. plantarum" のほかには "L. acetotolerans" や "L. namurensis" など30種以上の細菌で複雑に構成されている。一方、魚を漬け込んだぬか床では有害菌としてヒスタミン生産菌が増殖する事もあり、生産菌由来の不揮発性アミンが含有される事がある。糠漬けは保存食品でありナトリウムが多いが、同時にカリウムも多く含まれるため食べ過ぎなければ問題がない。また。ただし高血圧症や腎臓病などの疾病により、ナトリウムやカリウムの摂取量に制限がある場合には、医師の指導に従う。
出典:wikipedia
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