法務省(ほうむしょう、英語:Ministry of Justice、略称:MOJ)は、日本の行政機関の一つである。法務省設置法3条では法務省は基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ることを任務とするとしている。国家行政組織法および法務省設置法に基づき省の一つとして設置されている。任務は「法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ること」である(法務省設置法3条)。司法制度、民事行政(国籍、戸籍、登記、供託)、刑事・民事制度の企画・立案、検察、矯正、更生保護、行政訴訟、人権擁護、出入国管理、破壊的団体の規制、司法書士および土地家屋調査士に関することなどを管轄する。かつては序列筆頭の省であった。法務省では桐紋を省の象徴として使用することが多い。桐紋は内閣や法治国家の象徴としても扱われるが、法務省では桐紋のなかでも主に五三桐を用いる。五三桐は省の標章として使用されており、法務省旧本館(中央合同庁舎第6号館赤れんが棟)の正門などに掲げられている。また、近年では、法務省の英語名称「Ministry of Justice」の頭文字「MOJ」を配置した図案もシンボルとして用いられている。法務省の起源は、明治維新後の1869年(明治2年)に設置された刑部省にまで遡るが、直接の前身は1871年(明治4年)7月9日に設置された司法省とされている。司法省は、裁判所の監督など、司法行政事務を含む広範な法務・司法に関する事務を司っていた。司法省の中でも検事局が主流を成しており、平沼騏一郎による検事主導の積極介入主義のもと、検事は、政党・軍部・官僚と並ぶ一大勢力に成長し、検察権力を第一義とする司法権の独立が明確化する。大正期から昭和戦前期には、「検尊判卑主義」が公然と囁かれるようになり、検事局・司法省・裁判所の要職を、検事がほぼ独占するようになっていた。1940年前後には、「司法権の独立」は、軍部の「統帥権の独立」と並ぶ政治的イデオロギーとなり、陸軍三長官会議をモデルに、司法大臣・大審院院長・検事総長による三長官会議の設置まで提唱されるようになる。第二次世界大戦での日本の敗戦から2年が経った1947年(昭和22年)5月3日、三権分立体制を明確にした日本国憲法および裁判所法と検察庁法の施行に伴い、司法官僚は、司法省・検察庁・最高裁判所事務総局など、大きく分けて3つに分散し、裁判所関係の司法行政事務は最高裁判所事務総局の所管に移されることになった。翌1948年(昭和23年)2月15日には司法省が廃止されて、法務全般を司る政府の最高法律顧問府として法務庁が設置された。法務庁は、1949年(昭和24年)6月1日の行政機構改革により、法務府に改称されて内部部局が簡素化された。そして、1952年(昭和27年)8月1日の行政機構改革により、法務府は法務省と改称され、法制に関する事務を内閣法制局に再び移管するなど、機構の大幅な整理が行われた。なお、この頃から、国家行政組織法別表において各省の筆頭に掲げられ、法務省は政府の各府省の建制順(列記する際の序列)では、内閣総理大臣が主任の大臣を務める総理府に次ぐ位置であった。2001年(平成13年)1月6日の中央省庁再編により、現行の法務省設置法が施行され、序列は総務省に次ぐ位置となっている。上述の法務省設置法3条に規定された任務を達成するため、同法4条は計40号にわたって所掌事務を列記している。具体的には以下に関することなどがある。法務省の内部組織は一般的に、法律の法務省設置法、政令の法務省組織令および省令の法務省組織規則が階層的に規定している。法務省の施設等機関には以下の7区分がある。検察庁法にもとづき、特別の機関として検察庁がある(法律14条)。検察庁には最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁の4区分に分かれ、それぞれ最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所に対応して置かれている(検察庁法2条1項)。法務省の地方支分部局には以下の6区分がある。独立行政法人は主管しないが、総合法律支援法にもとづいて設置され、独立行政法人通則法を準用する日本司法支援センターを主管している。特別の法律により設立される民間法人(特別民間法人)には2015年4月1日現在、日本司法書士会連合会および日本土地家屋調査士会連合会がある。特殊法人、地方共同法人、特別の法律により設立される法人および認可法人は主管しない。2014年度(平成26年度)一般会計予算における法務省所管の歳出予算は7298億6200万円である。機関別の内訳は法務本省が1818億4400万円、法務総合研究所が19億100万円、検察庁が1066億1000万円、矯正官署が2293億9600万円、更正保護官署が242億6500万円、法務局が1275億6200万円、地方入国管理官署が441億600万円、公安審査委員会が6700万円、公安調査庁が141億1300万円となっている。歳入予算は1023億6500万円で、全額が「雑収入」(5部)に分類される。そのうち、「許可及手数料」(5部3款06項)の413億7000万円と「懲罰及没収金」(5部3款08項)539億600万円が大半を占める。独自の項目としては刑務所作業収入と少年院職業補導収入から成る「矯正官署作業収入」(5部3款10項)があり、45億2900万円が計上されている。特別会計としてかつては登記特別会計を所管していたが、2010年度をもって廃止された。現在は復興庁などと東日本大震災復興特別会計を共管するのみである。一般職の在職者数(定員内)は2013年1月15日現在、法務省全体で5万1,758人(うち、女性8,962人)である。機関別内訳は本省が4万7,548人(8,390人)、公安審査委員会4人(1人)、公安調査庁1,512人(167人)、検察官2,694人(404人)となっている。行政機関職員定員令に定められた法務省の定員は特別職1人を含めて5万2400人である。うち、1万1796人は検察庁の職員の定員とされる。本省・各外局別の定員は省令の法務省定員規則に定められており、本省5万862人(うち検察庁1万1796人)、公安審査委員会4人(事務局)、公安調査庁1534人となっている。2014年度一般会計予算における予算定員は特別職8人、一般職5万2,332人の計5万2,340人である。機関別内訳は法務本省が818人、法務総合研究所が85人、検察庁が1万1,796人、矯正官署が2万3,550人、更生保護官署が1,735人、法務局が8,995人、地方入国管理官署が3,823人、公安審査委員会(事務局)が4人、公安調査庁が1,534人となっている。以上は定員内職員について述べたものであるが、これとは別に法務省には非常勤職員など多数の定員外職員が在籍している。非常勤職員については2013年7月1日現在の総数は5万5095人で、国の行政機関の非常勤職員(14万719人)のおよそ4割が法務省に在籍している計算である。これは更生保護ボランティアである保護司約4万7000人を含んでいることによる。ほかに委員顧問参与等職員が3297人おり、厚生労働省(8275人)の次に多い。続いて事務補助職員が2,602人、技能職員が548人、医療職員が434人、教育職員が308人などとなっている。教育職員は国の行政機関に任用された者の9割を占めている。非常勤職員とは別に再任用職員は1005人となっている。さらに傷病や労組専従による休職が184人いる。職員の競争試験による採用は国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)、国家公務員採用一般職試験(高卒程度試験)、刑務官採用試験、法務省専門職員(人間科学)採用試験の合格者の中から行われる。いずれも人事院が実施する。ただし検事の採用には国家公務員法の特例として検察庁法が適用され、主として司法修習生の修習を終えた者から任命される(検察庁法18条1項)。前記の通り法務省と最高裁判所事務総局は共に司法省を母体として設立された機関であり、両者は司法省の廃止後も判検交流と呼ばれる人事交流を行っていた。これは人材育成の一環として行われていたとされるが、検察と裁判所の癒着という指摘もあり、日弁連も指定代理人制度と絡めて廃止を求めてきていた。そのため、より職務の公正さを確保していくとして、民事部門での交流縮小に次ぎ、2012年4月をもって刑事部門での人事交流が停止された。法務省職員は一般職の国家公務員なので、給与は一般職の職員の給与に関する法律(一般職給与法)によって規律される。ただし、検察官には検察官の俸給等に関する法律が適用され、検事総長、次長検事及び検事長は特別職の職員の給与に関する法律、検事及び副検事については一般職給与法の規定に準じた給与制度が設けられている。俸給表は基本的に行政職俸給表(一)および指定職俸給表が適用されるが、人事院規則九―二の規定により、入国者収容所及び地方入国管理局の入国警備官(4条2号)と刑務所、少年刑務所、拘置所又は矯正管区に勤務する者並びに矯正研修所支所に勤務する教頭及び教官(4条3号)には公安職俸給表(一)が、検察事務官及び公安調査官(5条1号)と少年院、少年鑑別所又は婦人補導院に勤務する者(5条2号)には公安職俸給表(二)が適用され、検察官は検察官の俸給等に関する法律2条に規定された俸給表が適用される。平成26年度予算の予算定員を俸給表別にみると、公安職俸給表(一)が2万462人と最も多く、次いで行政職俸給表(一)が1万4,300人、公安職俸給表(二)が1万3,662人、検察官が2,734人などとなっている。矯正施設や更生保護施設には被収容者の矯正医療のために、厚生労働省と並んで多数の医療従事者が勤務していることから、医療職俸給表(一)の適用を受ける定員が330人、医療職俸給表(二)が137人、医療職俸給表(三)が365人、それぞれ措置されている。労働基本権のうち争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は保障されており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法108条の2第3項)。ただし、刑事施設に勤務する職員は国家公法によって団結権も認められておらず、職員団体を結成し、又はこれに加入してはならない(国公法108条の2第5項)。2011年3月31日現在、人事院に登録された職員団体の数は単一体1、支部30の計31団体となっている。組合員数は6,520人、27.5%となっている。主要な職員団体は全法務省労働組合(全法務)で、国公労連(全労連系)に加盟している。(2016年9月5日現在)法務省の事務次官や内部部局の長など一般職の要職には、一般の国の行政機関とは異なり、国家I種試験(現国家総合職試験)合格者から採用された者ではなく、検察官(判検交流により裁判官から任用された者を含む)が任用される傾向が強い。元検事総長の但木敬一は、犯罪者の更生を担当する矯正局、保護局などのトップは検事にこだわらず適材適所で考えた方がいい時代になったと思うと述べている。法秩序を維持する官庁ゆえの権威主義、行刑密行主義に代表される秘密主義が指摘されている。2002年の名古屋刑務所における受刑者死亡事件、検察庁での「調査活動費」不正流用疑惑などの不祥事が明るみに出た。少年犯罪に対する加害者への人権には配慮しており、1997年の神戸連続児童殺傷事件の際、実名報道をした『FOCUS』などの複数の雑誌に対し法務省が削除要請を行った。また、『週刊新潮』の実名報道に対しても、たびたび是正勧告を行っている。しかし刑務所や入国者収容所といった人権に制限を加える機関を持つ官庁が人権擁護活動を行うのは問題があるという意見もある。また、女性や在日外国人などの人権にも配慮がされており、毎年11月の人権週間では女性の人権を真っ先に取り上げ、DVやセクハラの無料相談を受け付けている。在日外国人に対しても人権侵害の問題を多く取り上げ外国人差別をしてきたホテル・銭湯等に是正を勧告したことがある。更にインターネット上の書き込みについても名誉毀損として法務省は厳しい姿勢を見せている。しかしその他の人々(特に男性)の人権配慮はなきに等しい。例えば痴漢冤罪(恐喝、虚偽告訴他の犯罪を同時に伴う場合特に『触らせ屋』とも通称される)などの冤罪事件には特段の対策をとる様子もなく、むしろ「やむを得ない」といった見方をしているという。2007年度新司法試験における慶應義塾大学法科大学院教授による類題講義では、当該行政法教授の考査委員解任以降、司法試験委員会による調査結果により、影響が明らかでないとして何ら是正措置はとられなかった。但し、合格発表後、難問の択一行政法18問目における慶大生の正答率が5%以上高かったこと、慶大の合格率は前年の9位から3位に上昇していたことなどが明らかとなっている。ただ、その調査方法は問題の渦中にあったと指摘された複数の慶大教授らの自己申告を調査報告とし、さらに自己申告を任意とし、申告なき者は当該調査から外されるなど不可解な点が多く指摘されている。また解任された行政法の教授に対するヒアリングなどもなされていない。これは、行政法同様に漏洩が指摘されていた刑事法では現職の派遣検察官が講義を行っていたためとされ、また、法務省が当初から結論ありきに終始していたためとも指摘されている。2015年度司法試験において、青柳幸一明治大学法科大学院教授が、自身が同試験考査委員として作成した憲法問題を同大学法科大学院出身の女性受験者に漏洩したとして、同年5月、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で東京地検特捜部に告発され、併せて法務省から考査委員を解任された。また、その他明大法科大学院生への影響の可能性も指摘されているが、調査等は実施されなかった。
出典:wikipedia
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