女真文字(じょしんもじ、女真文: 、発音: )は、中国の華北、東北部に金(アルチュフ)を建てた女真族が使用した文字。女真大字と女真小字の2種類の文字があるとされる。現在残されている文字が女真大字か女真小字かは今のところ判明していないが、大字とする説が有力で、小字とは(下記の『吾妻鏡』や銀簡に見られるような)大字の組み合わせ文字のことであろうとされる。大字を基礎にして、音を表す部品を加えるなどの修正が行われている。字形は、全体に正方形に収まる形をし、漢字と共通した部品が使われているなど、全体の構造が漢字に似ている。『女真訳語』に見られる文字の画数は10画未満で、隣国西夏の西夏文字のような複雑さはない。明らかに漢字から借用されたと思われる文字と、契丹文字由来と思われる文字、由来不明の文字等が混淆しているように見える。また、表音文字と表語文字が混在しており、表音表記も必ずしも一音節を表すとは限らず、音節文字としての法則は明らかではない。日本の国字とは相互に影響し合ってはいないと見られるが、「凩」に似た文字もある。書体には、楷書の他に草書も存在する。文献資料として、明代に編纂されたとされる華夷訳語のひとつ『女真訳語』があり、また女真文字を記した碑文や遺物も比較的(契丹文字よりは)多く存在する。現存の12件の女真大字石刻のうち、11件は12世紀から13世紀の金代に集中しており、1件は明代に属するものである。14世紀に金王朝の歴史を編纂した正史の『金史』によれば、1119年(天輔3年)に金の太祖阿骨打の命令により、完顔希于(完顔希尹)や葉魯らが契丹文字や漢字を参考に女真大字を作成したとされる。女真小字の方は、1138年(天眷元年)に金の第3代皇帝熙宗が制定し、1145年(皇統5年)に公布したという。大字小字共に『金史』に具体的な文字の詳細は述べられていない。金の公的な文字として西京に官立学校を建てて学ばせ、普及が図られた。『史記』『白氏策林』『論語』『孟子』『老子』などの女真文字を用いた翻訳もなされたらしいが、全て佚書となっており、内容は明らかではない。1234年(天興3年)の金滅亡以降も、中国東北部の女真族の間ではしばらく使われていたらしく、1413年(永楽11年)に作成されたと思われる碑文(奴児汗都司永寧寺碑)には、漢文、チベット文字、モンゴル文字に並んで女真文字も記されている。このことから、少なくとも明代、15世紀初頭の段階ではまだ女真文字を使用できる人々が暮らしていたと考えられている。女真族は後にモンゴル文字を参考にした満州文字を使用することとなるが、満州文字の使用された最も早い時期の碑文は1630年(崇禎三年)に作成されたものであり、少なくともこの時点までには既に女真文字は使用されなくなっていたと思われる。日本の『吾妻鏡』の中に、貞応3年2月29日(1224年3月20日)の記述として、女真の船が越後国寺泊(現在の新潟県長岡市寺泊)に漂着して、その際に乗船していた一行が持っていた銀簡に意味不明の4文字が記されていたことが書かれており、その文字が模写されている。江戸時代に林羅山が朝鮮通信使の文弘績にこの文字について尋ね、文弘績は「王国貴族」と読んだ、という逸話がある。明治になって、書かれている文字が女真文字であることは判明したが、内容は不明のままであった。後の研究により、この文字は「国之誠」と読め、銀簡は金国の通行証に当たるものであることがわかっている。1976年に、当時のソ連沿海地方のシャイギン城址で、『吾妻鏡』に書かれた文字と同じ文字を記した銀簡が発掘され、『吾妻鏡』の記述が正しかったことが明らかになった。一般にも手に入りやすい女真文字の研究資料としては、Wilhelm Grube『Die Sprache und Schrift der Jucen』(Leipzig, 1896)=葛魯貝『女真語言文字考』(Tientsin, 1941)、金光平・金啓孮『女真語言文字研究』(内蒙古大学出版社、1964)、Gisaburo N. Kiyose『A Study of the Jurchen Language and Script: Reconstruction and Decipherment』(Kyoto, 1977)、金光平・金啓孮『女真語言文字研究』(文物出版社、1980)、愛新覚羅烏拉熙春『女真言語文字新研究』(明善堂、2002)、『明代の女真人──『女真訳語』から『永寧寺記碑』へ──』(京都大学学術出版会、2009)、愛新覚羅烏拉熙春・吉本道雅『韓半島から眺めた契丹・女真』(京都大学学術出版会、2011) 、愛新覚羅烏拉熙春『명나라 시대 여진인:《여진역어》에서 《영영사기비》까지』(경진出版、2014)がある。
出典:wikipedia
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