緊急警報放送(きんきゅうけいほうほうそう、、略称:EWS)とは、総務省令電波法施行規則第2条第1項第84号の2に規定する緊急警報信号を使用して、待機状態にあるテレビ・ラジオ受信機のスイッチを自動的にオンにして行われる放送である。地震など大規模災害が発生した場合や、津波警報が発表された場合などに行われ、災害の発生に伴う被害の予防や軽減に役立たせることを目的としている。テレビ・ラジオを自動的に起動させるためには緊急警報放送に対応した受信機が必要になる。なお、受信機のスイッチを自動的にオンにして行う放送として緊急告知FMラジオなどがあるが、これらは法令に基づく緊急警報信号を使用していないことが異なる。該当する地域の住民の生命・財産の保護のため、放送局が緊急警報信号(Emergency Warning Signal, 略称:EWS)と呼ばれる特別な信号を前置したうえで臨時に行う放送で、1985年9月から実施している。以下の条件のいずれかに該当する場合に行われる(放送法施行規則第82条(平成23年総務省令第62号による改正前は第17条の27)及び無線局運用規則138条の2 に規定している。緊急警報放送の受信に対応した受信機は、待機状態でも緊急警報信号を受信するための回路を作動させており、緊急警報信号を受信した際には直ちに電源をオンにして放送の受信状態に移行する。これにより、緊急警報放送の開始時に受信機の電源がオフの状態であったとしても、放送を受信することが可能である。アナログ放送の緊急警報信号は可聴音域の電子音(FSK信号)で送出される(「ピロピロ音」と俗称されている)。デジタル放送では放送波の中にデジタル信号で織り込まれているため人間が直接感知することはできない。また、デジタル放送では緊急警報放送の受信後、自動で電源が入った後はメッセージ(「緊急警報放送が放送されています」)が表示されるだけで警報音が鳴らない機種がほとんどのため、日本放送協会(NHK)ではデジタル放送でもアラーム代わりとして信号音を送出している。放送の内容は通常の災害報道であり、安否情報や火の元の安全を呼びかける放送、津波の到達が予想される場合は警報・注意報の発表状況、津波の到達予想時刻などが繰り返し放送される。緊急警報放送の開始・終了の際に使用される緊急警報信号には第1種開始信号、第2種開始信号、終了信号の3種ある。アナログ放送では、緊急警報信号は音声信号を使用し、デジタル信号の「1」を1024Hzの音声信号、「0」を640Hzの音声信号に周波数変調したものを使用して64bpsの通信速度で送信されている。そのため緊急警報信号の送出時に受信状態にあれば、専用の受信機がなくても警報信号音を直接耳で識別することができる。デジタル放送では、緊急警報信号は緊急警報放送識別子というデータで送信される。具体的には、伝送制御信号TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)の中の「起動制御信号」(起動フラグ)と、MPEG-TS信号のPMT(Program Map Table)の緊急情報記述子の中の信号、2種類を用いる。起動制御信号は全204ビットあるTMCCビット列の中の26番目に設定されており、これが「1」のときが緊急警報放送「放送中」、「0」の時が終了・通常放送中である。緊急情報記述子の中の関連する部分は、「1」「0」で放送中か否かを表す"start_end_flag"(1ビット)、第1種/第2種種別を示す符号(1ビット)、間に予備ビット(6ビット)を挟んで、地域符号の長さを示す符号(8ビット)、地域符号(12ビット)から構成される。受信機は起動制御信号を常時監視し、「1」となったら次は"start_end_flag"を監視し、これも「1」となったら緊急警報放送の受信を開始する。また、"start_end_flag"が「0」になるか、起動制御信号が「0」になれば受信を終了する。この信号は理論上はワンセグでも受信でき、現状機種は対応していないが、その手法の検討がいくつか行われている。その信号を受信した放送局に合わせると、「このチャンネルで緊急警報放送が放送されています」(シャープ製品の場合)というような情報が確認することができる。なお、対応機種はごく限られているため、すべてのデジタル放送受信機で表示されるわけではない。デジタル放送でも、アナログ放送のEWS信号音を音声信号と見なして放送できることが法律で認められているため、2012年現在、NHKはアナログ版緊急警報放送の信号音を音声として放送している。なお大多数の民放は可聴音を取りやめている。緊急警報信号には、特定の県にだけ警報を発する「県域符号」、より範囲の広い「広域符号」、全域に発する「地域共通符号」がある。緊急警報放送はその役割から、放送法施行規則第82条及び無線局運用規則第138条に、規定された理由以外での使用をしてはならないとしている。しかしながら、2010年3月7日のTBSテレビ『サンデーモーニング』において、前週の2010年2月28日に放映した内容を録画放映した際に、前日の2月27日チリで発生した大津波警報と津波警報と津波注意報が日本各地に発令されたときの緊急警報放送が入ったままのVTRを放映し、一部受信機が動作した事例が存在する。しかもこの事例では両規則で義務付けられた終了信号の送信を番組終了間際までの約80分余り実施しなかった。日本放送協会(NHK)とほとんどの民放各放送局では、緊急警報放送の受信機の動作などを確認するため、試験放送を月1回程度放送している。NHKは、毎月1日(1月のみ4日)の11:59 - 12:00に、総合テレビ、ラジオ第1、FM放送でいずれも各放送局別で、総合テレビのワンセグも含めて試験信号放送を送出している。なお、ラジオ・FMの同時配信を行う「NHKネットラジオ らじる★らじる」では試験信号放送自体(アナウンス・信号音共通)完全にカットされ、この間はクラシック(フィラー)音楽を流している。民放各局でも、試験放送(夜中か早朝(局名告知前後))を行っている。以下では、緊急警報放送の試験放送を実施している局を掲載。アナログ放送の対応機種は各社から計10種類程度は発売されたが、ほとんど普及しなかった。最後まで残っていたパナソニックRF-U99-Kも2004年で生産を打切り、市場在庫からも一旦姿を消した。のちに2007年6月10日より地震・津波などの災害時のFM緊急警報放送に対応したFM/AM2バンドラジオ「RF-U350」が改めて発売された。また2010年8月30日には、FMラジオ放送による緊急警報放送と緊急地震速報の両方に対応した地震津波警報機「EWR200」がユニデンから発売された。他にはエフ・アール・シーが、FMラジオによる緊急警報放送・緊急地震速報、果ては市町村防災行政無線同報系までが受信出来る特定小電力トランシーバー(同社では「防災ラジオ」と称している)「FC-R119D」を発売している。2001年末の段階でテレビ・ラジオの対応機種の出荷台数は計50万台であり、普及率約0.2%、500台に1台にとどまっている。なお、中央防災会議(2012年)の資料における対応受信機の推定普及台数は、テレビが400万台、ラジオが50万台となっている。同資料は普及率が低迷する原因として、待機電力がかかることや、「緊急警報放送への対応」が商品価値にはほとんど資さないことなどを挙げている。緊急警報放送により自動的に受信機が起動するということは連続して待機し続けることである。これは放送を復調する受信部と緊急警報信号の特殊なパターンと一致するか判断する解析部に常時通電しておくことになるが、しかしアナログ式受信機の待機電力は一般的な電化製品や映像機器より低く、これは超低消費電力と宣伝している最新機器に匹敵する低消費電力である。現在販売中のアナログ式地震津波警報機(緊急警報放送と緊急地震速報の両方に対応した超短波FM放送専用受信機(取扱説明書に監視時の消費電力約1.0W記載、品番EWR200、ユニデン製)の年間電気使用料は約193円、過去に販売された中で代表的なものとして緊急警報放送受信機(NHK緊急警報放送専用アナログテレビとFM放送対応、取扱説明書に監視時の消費電力約AC0.3Wの記載、品番RF-K1、パナソニック製)は約58円である。家電業界がカタログ表示に用いる全国10電力会社平均単価(1kWh=22円、月間使用量295kWh/月の場合、税込)を年間電気使用量の換算根拠とした。デジタル放送対応チューナーは、緊急警報放送の試験信号を受信しても受信した旨の警告文を表示したり、お知らせ項目に記録を残さない。緊急警報放送の本番信号(地震や津波)を受信しても、待機から自動的に起動したり、視聴中に特定のチャンネルに切り替える旨の告知文を表示させるかどうかは各メーカーの判断(仕様)に委ねられているので購入した機器が必ず動作するなどと過度の期待は持たない方が良い。NHKで緊急警報放送の本放送が行われる場合は、衛星放送も含めたテレビ・ラジオ全チャンネルを使って情報が伝達される(サイマル放送も参照。この場合、テレビ副音声とラジオ第2放送は外国語放送(英語、中国語、朝鮮語、ポルトガル語の4か国語で放送)となる。7つのチャンネルを用いて全国に中継されるため、「七波全中」という別名で呼ばれることがある(廣井脩「災害情報論」)。NHKワールドのテレビ・ラジオの放送も含まれるが、信号音はラジオ放送のみに流れる)。なお民放各局は、試験放送を行う局であっても、津波警報等が発表されても第2種開始信号等の緊急警報信号を送出しなかった事例が多数あるため(コミュニティ放送を除く)、手動で放送局を設定できる機種の場合はNHKが推奨される。民放では、津波警報の発表で緊急警報放送を送出することはほとんどないが、2010年2月と2011年3月の大津波警報発表時には、ほとんどの民放でも緊急警報放送を実施した。しかし、日頃からの運用例がないことなどから放送事故が発生しており、特にフジテレビではアニメ番組中だったものの、音声が出なかったり不要音が発生したりなどした。また、終了信号を数十時間に渡り送出しなかった放送局も存在した。2011年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で大津波警報が発表された際には、NHKをはじめとして岩手めんこいテレビやミヤギテレビ、テレビユー福島といった東北民放各局はもちろんのこと、関東地方の在京民放であるテレビ朝日・テレビ東京などが緊急警報信号を送出した。かつてNHKでは緊急警報放送の際に、開始と終了を予告していたこともある。つまり、津波警報発表の一報が入ると「緊急警報放送です」と、今から緊急警報放送が始まることを伝え放送を開始(長い信号音、いわゆる「長いピロピロ音」の発信)し、終了信号が発信される直前になると「緊急警報放送はこれで終了しますが、引き続きテレビやラジオでは津波に関する情報をお伝え致します。これから放送する(出す)信号でお宅のテレビやラジオの電源が切れた場合は、改めて電源を入れて頂きますようお願いします」と、放送終了の案内(言い換えれば緊急警報放送受信機を備えている家庭への気配り)をして終了信号(短い信号音、いわゆる「短いピロピロ音」を4回)を発信していた。しかし1987年3月の最初の適用例では唐突に始まり(津波警報が発表されてすぐ)、1994年以降になるとこの形式が常態化し、警報を発信する手前の「もし次の信号で電源が切れた場合は…」の案内も行わなくなった。ラジオでは、各局で開始時にアナウンスが入れられる。東北地方太平洋沖地震の際にはNHKでは「気象庁から大津波警報が発令されました。○○(放送局名)では只今から、緊急警報放送による『○○大津波警報』をお伝えします」の文言、TBSラジオ・ニッポン放送ではこれに準じたものの後に信号が発信された。冒頭で述べたように緊急警報放送は以下の条件のいずれかに該当する場合に行われる。緊急警報放送のように強制起動を含むものに限定しなければ、多くの報道機関で規格化・統一された警報を市民に伝える「公衆警報システム」という方式はいくつかの国で普及している。XML形式の (CAP)を用いた警報システムは、アメリカをはじめ、カナダ、メキシコなどで運用されている。アメリカ合衆国では、1950年代より多数の放送局に統一化された形式で警報を伝達するシステムが構築され、2012年現在は第3世代の (EAS)が整備され、全米のテレビ・ラジオ局を対象にしている。国家レベルの警報発信時には緊急事態管理庁(FEMA)経由で国内基幹放送局に、州や郡レベルの警報発信時には州レベルの放送局に、それぞ警報を伝達、そこから各支局に伝達して放送内容をコントロールする。ただし、日本の緊急警報放送のように受信機を強制起動するシステムではなく、合衆国政府や州政府が発信する統一形式の情報を各放送局に送り、自動化された警報文を字幕や音声で伝えるものである。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。