アイアイ（"Daubentonia madagascariensis"）は、霊長目アイアイ科アイアイ属に分類される霊長類。現生種では本種のみでアイアイ科アイアイ属を構成する。マダガスカル北部および東部・中西部固有種種小名"madagascariensis"は「マダガスカル産の」の意。体長36 - 44センチメートル。尾長44 - 53センチメートル。体重2 - 3キログラム。全身は粗く長い体毛で被われる。全身の毛衣は黒い。耳介は大型で三角形。歯列は門歯が上下2本、犬歯がなく、小臼歯が上顎のみ2本、大臼歯が上下6本の計18本。門歯は伸び続ける。指は細長く、特に第3指（中指）で顕著。第3指が長いことが独名Fingertierや中国語名の指猴、旧和名ユビザルの由来になっている。第1指（親指）は平爪だが、第2 - 5指は鉤爪。染色体数は2n=30。出産直後の幼獣は体重0.1キログラム。属名"Daubentonia"はLouis-Jean-Marie Daubentonへの献名。元々リス属として記載された。19世紀でも形態や門歯が伸び続けることから齧歯目の構成種と考えられていた。アイアイ科の現生種は本種のみだが、絶滅種として2,000年前にマダガスカル南部に分布していた本種よりも大型のジャイアントアイアイ"Daubentonia robsuta"がいる。1780年にフランスのP. Sonneratらによるマダガスカル島探検行にて発見された。発見後、アイアイの分類上の位置づけについて論争が引き起こされた。発見者のピエール･ソヌラや博物学者ジョルジュ・キュビエらは門歯の特徴からげっ歯類であるとしたが、イギリスの古生物学者Owenは、乳歯の特徴がキツネザルのものと類似していることを指摘し、1863年に霊長目に分類された。その後、アイアイは発見されることが無かったため一時は絶滅したと考えられていたが、1957年に再発見された。湿潤林や竹林、マングローブ林などに生息する。夜行性で、昼間は巣の中で休む。オスは他の個体と重複する広い行動圏内で生活するが、メスは他の個体と重複しない35ヘクタールの行動圏内で生活する。オスは同性間で優劣の関係があると考えられ、オスがある別のオスを避ける行動が観察された例がある。メス同士では激しく争う。食性は雑食で、昆虫、カンラン科の果実の胚乳、タビビトノキの花の蜜、樹皮、キノコなどを食べる。木の中にいる昆虫や果肉は歯で木の幹や果実の殻に穴をあけて、細長い中指でほじくりだして食べる。繁殖形態は胎生。妊娠期間は158日もしくは170 - 172日という説がある。10 - 11月に1回に1頭の幼獣を2-3年に1回だけ産む。授乳期間は7か月。オスは生後1年、メスは生後2年で性成熟する。最高寿命は23年。名前の由来とされるheh hehはマダガスカルのいくつかの現地語で「知らない」の意もあり、本種の呼称を尋ねられた原住民が「知らない」と答えたのを呼称と勘違いしたとする説もある。マダガスカルでの呼称はhay-hay、ahay、aiayがある。多くの生息地では死や不幸の前兆や悪魔の使い・不吉なものと信じられ、畏怖や恐怖・嫌悪の対象とされている。ココヤシ、サトウキビ、マンゴー、ライチなどを食害する害獣とみなされることもある。開発による生息地の破壊、不吉の象徴や害獣としての駆除などにより生息数は減少している。1967年にノシ・マンガベ島に9頭が人為的に移入され、保護区に指定されている。

出典:wikipedia