フルートは木管楽器の一種で、リードを使わないエアリード(無簧)式の横笛である。今日一般にフルートというと、銀色または金色の金属製の筒に複雑なキー装置を備えた横笛、つまりコンサート・フルートを指すが、古くは広く笛一般を指していた。特にJ.S.バッハなどバロック音楽の時代にあっては、単にフルートというと、現在一般にリコーダーと呼ばれる縦笛を指し、現在のフルートの直接の前身楽器である横笛は、「トラヴェルソ(横向きの)」という修飾語を付けて「フラウト・トラヴェルソ」と呼ばれていた。かつてはもっぱら木で作られていたが、後に出現した金属製が現在では主流となっている。しかし、フルートは唇の振動を用いないエアリード式の楽器なので、金属でできていても木管楽器に分類される。現代のフルート(モダン・フルート)は、バス・フルートなどの同属楽器と区別する場合、グランド・フルートまたはコンサート・フルートとも呼ばれ、通常C管である。19世紀半ばに、ドイツ人フルート奏者で楽器製作者でもあったテオバルト・ベームにより音響学の理論に基づいて大幅に改良され、正確な半音階と大きな音量、精密な貴金属の管体、優美な外観を持つに至った。このドイツ生まれのフルートは、最初にフランスでその優秀性が認められ、ついには旧式のフルートを世界から駆逐してしまった。今日単にフルートと言った場合は、例外なく下図のような「ベーム式フルート」のことである。フルートはキーを右側にして構え、下顎と左手の人さし指の付け根、右手の親指で支える(三点支持)。両肩を結ぶ線と平行に持つのではなく、右手を左手より下方、前方に伸ばす。奏者は正面ではなくやや左を向き、右に首をかしげて唇を歌口に当てる。発音にリードを用いないため、ほかの管楽器よりもタンギングの柔軟性は高い。運動性能も管楽器の中では最も高く、かなり急速な楽句を奏することも可能である。音量は小さい方であるが、高音域は倍音が少なく明瞭で澄んだ音なので、オーケストラの中にあっても埋もれることなく聞こえてくる。フルートの音色は鳥の鳴き声を想起させることから、楽曲中で鳥の模倣としても用いられる。有名でわかりやすい例として、サン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』の「大きな鳥籠」、プロコフィエフの交響的物語『ピーターと狼』などが挙げられる。フルートは主にクラシック音楽の分野で用いられるが、ジャズやロックなど、他の音楽ジャンルで使用されることもある。しかし、ジャズ専門のフルート奏者は少なく、サクソフォーンなどのプレイヤーが持ち替えるか、クラシックとジャズの両方で活動するというケースが多い。フルートを広義にとらえて、「リードを用いず、管などの空洞に向かって息を吹き付けて発音する楽器」とするならば、最も古いものとしては、およそ4万年前のネアンデルタール人のものと推定されるアナグマ類の足の骨で作られた「笛」がスロヴェニアの洞窟で発見されている。また、ほぼ同じ頃現生人類によって作られたと推定される、ハゲワシの骨でできた5つの指穴のあるフルートが、ドイツの洞窟で発見されている。それほど古いものでなくとも数千年前の骨で作られた笛は各地から出土しており、博物館などに収められている。しかし、世界各地で用いられていた原始的な笛は、ギリシャ神話の牧神パンが吹いたとされるパンフルートのような葦などで作られた縦笛か、オカリナのような形状の石笛(いわぶえ)や土笛がほとんどであった。一方、現在我々が使用しているフルートにつながる横向きに構える方式の笛が、いつどこで最初に用いられたのかはわかっていないが、一説には紀元前9世紀あるいはそれ以前の中央アジアに発祥したといわれており、これがシルクロードを通ってインドや中国に伝わり、さらに日本やヨーロッパにも伝えられていったと考えられている。奈良・正倉院の宝物の中に横笛があるので、奈良時代までに日本にも伝わっていたことは明らかである。西洋では、現在リコーダーと呼ばれている縦笛が古くから知られており、当初はこちらが「フルート」と呼ばれていた。13世紀になるとフランスに、「フラウスト・トラヴェルセーヌ(;「横向きのフルート」の意)」といった名称が散見されるようになるが、ルネサンス期に入ってもなお、ヨーロッパでは横笛はあまり一般的な楽器ではなく、軍楽隊や旅芸人などが演奏するだけのものであった。しかし、16世紀に入る頃から、市民の間で行われるコンソートと呼ばれる合奏の中で、横笛も次第に使われるようになった。左図はオーストリアのローラウ城ハラッハ伯爵家所蔵の絵画で、横笛とリュート、歌唱によるブロークン・コンソートの様子が描かれている。この絵の横笛はテナーであるが、他にもソプラノ、バスといった種類があり、当時のものがわずかな数ながらイタリアのヴェローナなどに残っている。木製の管で内面は円筒形、外面は歌口側がやや太い円錐形、トーンホールが6つ、キーはなく、分割できないものが多い。テナーの横笛はD-dur(ニ長調)の音階が出せるように作られており、いわゆるD管である。軽快によく鳴るが、音域によって音量や音色がかなり変化する。現在では、このような横笛を「ルネサンス・フルート」と呼んでおり、古楽器として今も復元楽器が製作されている。17世紀初頭から始まったバロック時代、多くの楽器が改良されていく中で、ルネサンス・フルートはピッチの調節ができない上、半音を出すのが苦手で、低音と高音の音色の違いが大きいといった欠点があったため、次第に顧みられなくなった。17世紀は横笛にとって雌伏の時代であり、新たな工夫が加えられた横笛が改めて人気を博するのは、18世紀も間近となってからのことである。この時代も、単に「フルート」といえば縦笛(リコーダー)のことであり、現在のフルートの原型となった横笛は「フラウト・トラヴェルソ(;同じく「横向きのフルート」の意)」と呼ばれていた。省略して単に「トラヴェルソ」ともいい、「バロック・フルート」と呼ばれることもある。典型的なバロック・フルートの多くは木製で、テナーのルネサンス・フルートと同様にD管であるが、管体が3分割または4分割されており、結合部を抜き挿ししたり管を交換することによって、ピッチの調節が可能になった。トーンホールは7つに増え、上流側の6つはルネサンス・フルートと同様に指で直接ふさぐ。最下流の1つは指が届かないので、右手小指で押すと穴が開くシーソー形のキーが付いており、この形態から「1キーフルート」とも呼ばれている。このキーのおかげで、ルネサンス・フルートには最も出しにくかった半音D#(E♭)が容易に出せるようになった。管の内面はルネサンス・フルートのような円筒形ではなく、頭部管から足部管に向かって次第に細くなる円錐形になっている。これによって音色がややこもった暗い感じにはなったものの、低音から高音まで音色の統一感が向上した。こうした改良によって、横笛は次第に縦笛に取って代わる存在となっていった。アムステルダムの木管楽器製作家リチャード・ハッカ(1645年 - 1705年)の作った3分割フルートが、現存する最古のバロック・フルートであるといわれているが、いつ頃誰によって最初に考え出されたのか、確かなことはわかっていない。最低音はD4、最高音はE6までというものが一般的であるが、B6までの運指が知られており、A6あたりまでは出しやすい楽器もある。D管であるが、楽譜は実音で記譜され、移調楽器ではない。キーが設けられた半音は出しやすくなったものの、それ以外の半音は相変わらずクロスフィンガリングによって出す弱々しく不安定な音なので、長調について考えると、D-dur(ニ長調)、G-dur(ト長調)、A-dur(イ長調)は比較的大きな音量で演奏できるが、それ以外の調(五度圏の図でニ長調から遠い調)の曲を演奏するのは容易ではない。しかし、多様な音色を持ち、繊細で豊かな表現が可能であることから、バロック・フルートは今日なお復元楽器が多数製作されている。18世紀半ばから19世紀前半にあたる古典派の時代になると、より多くの調に対応できるよう、不安定な半音や高音域の出しにくさなどを改善するために、新たなトーンホールを設けて、これを開閉するキーメカニズムを付け加えたり、管内径を細めるなどの改変が行われた。これらの楽器もフラウト・トラヴェルソに含まれるが、バロック時代の「バロック・フルート」と区別して、「クラシカル・フルート」「ロマンチック・フルート」と呼ぶこともある。この時代になると、表現力に劣る縦笛(リコーダー)は廃れてしまい、フルートといえば横笛を指すようになった。この頃一般的に使われていたのは4キーから8キーのもので、音は明るさや軽やかさを増した。管体は相変わらず円錐形で木製のものが多く、最高音はA6あたりであるが、中にはC7付近まで出る楽器もある。しかし、これらは当時の楽器製作者たちが、それぞれの考えに基づいて改良していったため、操作法が統一されておらず、運指も複雑となって、必ずしも十分な効果が得られたわけではなかった。こうしたフルート乱開発の時代に終止符を打ったのがテオバルト・ベームである。1820年ごろから活躍していたイギリス人フルート奏者 C. ニコルソン(Charles Nicholson 1795年 - 1837年)は、その手の大きさと卓越した技術によって通常よりも大きなトーンホールの楽器を演奏していた。ドイツ人フルート奏者で製作者でもあったテオバルト・ベームは、1831年にロンドンでニコルソンの演奏を聴いてその音量の大きさに衝撃を受け、自身の楽器の本格的な改良に着手した。1832年に発表されたモデルは以下のようなものである。このモデルはGisオープンの機構を除いてフランスで受け入れられたが、管体はまだ木製で円錐形のままであったことから、今日では「円錐(コニカル)ベーム式フルート」などと呼ばれている。ベームはその後も研究を続け、1847年に次のようなモデルを発表した。このモデルもGisオープン式ではあったが、現在のフルートとほとんど変わらず、極めて完成度の高いものであった。これ以降今日までに加えられた大きな改変は、イタリアのジュリオ・ブリチャルディ(Giulio Briccialdi 1818年 - 1881年)により、フラット(♭)系の調を演奏するのに便利な、いわゆるブリチャルディ・キーが付け加えられたことと、より運指が容易なGisクローズ式が主流となったこと程度である。今日の最も一般的な C足部管付きベーム式フルートにはトーンホールが16個あり、キーは数え方によるが、指が直接触れるものだけを数えると15個である。これらが右手親指を除く9本の指で操作できるようになっている。後述のように、メカニズムの関係でベーム式フルートにも鳴りにくい音はあるが、ほとんどの音は良い音程で確実に鳴る。ベーム式フルートは、最初にフランスでその優秀性が認められ、次いでイギリスでも使われるようになったが、発祥の地であるドイツでは20世紀に入るまで受け入れられなかった。旧来のフルートとは運指が異なることに加えて、この頃のドイツ音楽界に大きな影響力を持っていたワーグナーが、ベーム式フルートの音色を嫌ったことも、ドイツでの普及を妨げた大きな要因といわれている。ベームが1847年に発表したフルートは、カバードキーでGisオープン式であったが、フランスの楽器製作者であるヴァンサン・イポリト・ゴッドフロワやルイ・ロットらの手によって、リングキーのいわゆるフレンチスタイルのフルートが生み出された。さらに、より運指が容易なGisクローズ式に変更されるなど細部にわたる改良を経て、モダン・フルートはほぼ完成の域に達した。1860年にパリ音楽院教授となったルイ・ドリュによって学院の公式楽器に認定されると、アンリー・アルテ(アルテスとも)、ポール・タファネル、フィリップ・ゴーベール、マルセル・モイーズらフルート科教授によってその奏法の発展と確立がなされ、ドビュッシー、フォーレをはじめとする作曲家たちが多くの楽曲を書いた。それまでは装飾的・限定的に使われていたビブラートも積極的に採り入れた演奏様式を確立してフランス楽派と呼ばれ、フランスは一躍フルート先進国となったのである。アルテの著した教則本は、今なお最も有名なモダン・フルートの入門書である。一方、ドイツやオーストリアでは、大径のトーンホールから出る倍音を多く含む音色を好ましく思わないながらも、ベーム式キーメカニズムの長所は認めざるを得ず、20世紀に入る頃には管体は木製だがメカニズムはベーム式という折衷型の楽器が用いられるようになった。しかし、トーンホールの径を大きくして音量を増すなどの改良が加えられた多キーのメイヤー式フルートも、フランスを除くヨーロッパやアメリカでは、1930年代まで使われていた。ベーム式フルートも、改良の余地がないほど完璧なものではないので、その後もフルートの改良はさまざまな形で試みられ、中には商品化に至ったものもあるが、ベームの基本設計を凌駕するほどのものは今日に至るも現れていない。ベーム式フルートはその地位を確固たるものとし、フレンチスタイルの登場以降は構造面に特段の変化はないが、奏法の面で大きな発展が見られる。第二次世界大戦前から知られる特殊奏法としては、巻き舌によるフラッターツンゲやハーモニクス奏法がある。戦後はレコードの普及や放送技術の発展とともに、ランパルがソリストとして活躍し、フルートの魅力を世界中に示すこととなった。またモイーズが、教育者としてカリスマ的といえるほどの影響力を長い間保ち続けたこともあって、世界中でフランス風の演奏スタイルが大きく広まっており、ビブラートを常にかけるのが一般的であるが、クラシック音楽においては今なおビブラートを乱用しない演奏スタイルも好まれる。前述の通り、ドビュッシーはフルートにおけるレパートリー拡張の第一人者であるが、中でも独奏曲『シランクス』はフルート独奏のための曲として歴史上重要な位置を占めている。エドガー・ヴァレーズは『密度21.5』において、キー・パーカッションと呼ばれるアタックの音の変化を求めた特殊奏法を開発し、また超高音域を執拗に求めて、演奏における音域の拡張に成功した。現代音楽では、まずフルート奏者のブルーノ・バルトロッチが重音奏法を体系化した教本を出版し、またピエール=イヴ・アルトーやロベルト・ファブリッツィアーニなどその他多くのフルート奏者、またサルヴァトーレ・シャリーノらの作曲家によって息音を含む奏法、ホイッスルトーン、タングラム、リップ・ピッツィカートなど新しい奏法も次々と開発された。ルチアーノ・ベリオの『セクエンツァI』などの優れた曲は現在も「古典」として多くの奏者によってコンサートや教育現場で取り上げられ、聴衆にも親しまれている。フルートの発音原理に関しては、大きくわけてふたつの説が存在する。ひとつ目の説は、唇から出る空気の束(エアビーム)を楽器の吹き込み口の縁(エッジ)に当てることでカルマン渦が発生し、これがエッジトーン(強風のときに電線が鳴るのと同じ現象)を生じて振動源になるというもの。ふたつ目の説は、エアビームの吹き込みによって管の内圧が上昇し、これによってエアビームが押し返されると内圧が低下し、再びエアビームが引き込まれるという反復現象が発生して、これが振動源になるとするものである。このようにして発生した振動に対し、管の内部にある空気の柱(気柱)が共振(共鳴)して音が出る。トーンホールを開閉すると、気柱の有効長が変わるので共振周波数が変化し、音高を変えることができる。コンサート・フルートの基本的な音域はC4(中央ハ)から3オクターヴ上のC7までであるが、H足部管を用いれば最低音がB3となる。チューニングする(他の楽器とピッチを合わせる)際には、オーケストラではA5を、吹奏楽ではB♭5を用いる。低音域は基音であるが、中音域と高音域は倍音を用いて発生させる。なお、音域に関する呼称は厳密なものではなく、例えばC6を中音域とするか高音域とするかは時と場合に依るし、人によっても異なることがある。最低音からB4までの音域は、低音域あるいは第1オクターヴなどと呼ばれる。音量は小さく、特に最低音に近いいくつかの音は明瞭な発音が難しいが、幅広く柔らかい音色を特徴とする。C5からB5までの音域は、中音域あるいは第2オクターヴなどと呼ばれる。C#5の音はトーンホールが小さいため響きがあまりよくなく、E5からF#5は音が割れやすいなど難しいところもあるが、表情豊かな音色を持ち、音量の制御も比較的容易である。C6からC7の音域は、高音域あるいは第3オクターヴなどと呼ばれる。後述のようにキーメカニズムの関係でE6やF#6などの音が出しにくい上、用いる倍音モードが音によって変わるため音色を揃えるのが難しく、運指も不規則で覚えにくいが、明るく輝かしい音色で、音量も比較的大きい。標準的な運指を用いた場合の倍音モードの概略は下記の通りである。例えばC7はC4の第8倍音であるが、息の圧力で第8倍音を出すことは難しいので、実際はCとGisとF以下のトーンホールを開けてやる(Esは閉じた方が良い)ことにより、C5の第4倍音かつG#4の第5倍音かつF4の第6倍音として発生させている。第3倍音、第5倍音、第6倍音によって出す音は、多少なりと平均律からのずれが生ずることなどもあって、高音域の音程はあまり良くない。モダン・フルートは、すべての木管楽器の中で最も論理的に設計されているが、様々な制約から妥協せざるを得ない部分もあるので、特に高音域には上記のように問題が多い。これらを完全に解消することは、設計上どのような工夫を以ってしても不可能であり、最後はアンブシュアの微妙な調節など、奏者の技術に委ねられている。C7より上の音域は、第4オクターヴと呼ばれ、F7までの運指が比較的広く知られているが、高い音ほど発音が難しい。この音域が開発されたのは20世紀に入ってからであり、現代音楽で使用されることがあるが、楽器によって発音の難易度やピッチのばらつきが大きく、運指法も一定していない。フルートは全体を三分割して保存・携帯する。歌口(吹き込み口)がある部分を頭部管、一番長い部分を胴部管、一番短い部分を足部管と呼ぶ。頭部管を挿入する長さを変化させることにより全体の音高が変わるため、他の楽器とピッチを合わせる(チューニングする)ことができる。一般的なコンサート・フルートの場合、歌口の部分で内径17mm、胴部管と接続する部分で内径19mmの略円錐形である。歌口に近い方の端がヘッドスクリューで塞がれている。管内の歌口に近い位置に反響板(反射板)があり、ヘッドスクリューと連結されている。反響板の位置は歌口の中央から17mmが適切であり、ここからずれているとピッチに支障がある。歌口は楕円形ないし小判形(角の丸い矩形)であるが、メーカーによって異なっており、フルートの音色・音量・発音性などに大きく影響する。このことから、歌口形状の異なる複数の頭部管を製作しているメーカーもある。内径19mmの円筒形で、標準的なコンサート・フルートの場合、頭部管に近い位置に比較的小さなトーンホールが3つと、より大きなトーンホールが10個、管体上面および側面にある。トーンホールが指で押さえられないほど大きく、またその数が指よりも多いため、一部が互いに連結されたキーシステムによってトーンホールを開閉する。キーの裏側には後述のタンポ(パッド)が組み込まれており、トーンホールを閉じた際の気密性を確保している。足部管は胴部管と同じ内径の円筒形で、3つまたは4つのトーンホールを持つ。トーンホールが3つのものはC足部管で、最低音はC4である。トーンホールが4つのものがH足部管で、最低音はB3である。英語式にB(ビー)足部管(B foot joint)と呼ぶこともあるが、日本ではドイツ音名により H(ハー)足部管(H-Fuß)と呼ぶのが一般的である。イタリア語ではトロンビーノ・ディ・シ (小さなラッパ)、 フランス語ではパット・ドゥ・シ (蹄)と呼ぶ。 H足部管は長いので、通気が多少なりと阻害され、音色がわずかに暗めになるとされている。これを補うため、通気の良いリングキーを併用する楽器が多い。もっとも一般的に使われているタンポは、フェルトにフィッシュスキンを巻いたものである。これは金属のフルートをテオバルト・ベームが開発した時代から変わっていない。その他、ゴム、シリコーン、コルク等を用いているものもある。フルートは、タンポとトーンホールの間に「髪の毛1本の隙間があっても音が鳴らない」と言われており、調整には高い技術が必要である。胴部管上側面のキーがすべて一直線に並んでいるものを「インライン」、左手の薬指にあたるキーが外側(左腕に近い方)に少しずれているものを「オフセット」と呼ぶ。その中間となる「ハーフオフセット」の楽器もある。オフセットは薬指がGキーに届き易いよう配置したもので、ベームが製作した楽器はすべてオフセットであった。楽器の購入の際にオフセットを選ぶかインラインを選ぶかは奏者の好みや手の大きさによるのであって、初心者向けか上級者向けかといった区別はなく、構造上大きな優劣の差があるわけでもない。カバードキー(クローズドキー、ジャーマンモデル、ジャーマンスタイルともいう)は、キーに取り付けられたタンポでトーンホール全体をふさぐ物である。対して、リングキー(オープンキー、オープンホールシステム、フレンチモデル、フレンチスタイルともいう)の楽器は、指が置かれる5つのキー(右手の人差指、中指、薬指、左手の中指、薬指)の中心に穴があいており、指でその穴をふさいで演奏する。特徴は軽く明るい音色である。穴をふさぐ程度を変化させることによって、ポルタメント、微分音などの技法が楽に演奏できるようになるほか、ピッチ調節などのための替え指もカバードキーより多く利用でき、重音のための特殊な運指の幅も大きく広がるが、穴を正確にふさがなければならないため、手が小さい、あるいは指が細い奏者には演奏が難しいこともある。Gisトーンホールを1つだけ持つものがGisオープン式、Gisトーンホールを2つ持つものがGisクローズ式で、ベームが製作した楽器はGisオープン式であったが、今日ではGisクローズ式が主流である。Gisオープン式の場合、後述のEメカニズムを設ける必要が無いのでコスト面で有利である上、小指を押すとG、放すとG#が出る(音程が上がる)ので、運指としても自然である。つまり、一見Gisオープン式の方が、いわゆる「理にかなった」構造のように思える。ところが実際に演奏すると、Gisオープン式ではほとんどの音で左手小指を薬指と同じに動かさねばならず、Gisクローズ式より小指が忙しくなって運指が難しい。この点がGisクローズ式が広く世界に普及した大きな理由である。今日主流となっているGisクローズ式のフルートでは、第3オクターヴのホ音(E6)が出しにくく、ピッチが高い場合が多い。E6はE4の第4倍音であると同時にA4の第3倍音なので、右手はEから下のトーンホールを開け、左手はAのトーンホールだけ開けてやればよいのだが、Gisクローズ式フルートではキーメカニズムの関係上、常時開のGisトーンホールも開いたままになってしまうからである。これを解消するために考案されたのがEメカニズム (Split E mechanism) で、キーシステムを追加することにより、E6の運指で常時開のGisトーンホールが閉じるようになっている。Eメカと略称されることも多い。これによってE6の出しやすさとピッチは改善されるが、特定の替え指およびトリル運指が使えなくなる。Gisオープン/クローズいずれのフルートでも、第3オクターヴの嬰ヘ音(F#6)が出しにくい。F#6はF#4の第4倍音で、かつB4の第3倍音であるから、右手はFisから下のトーンホールを開け、左手はHトーンホールのみ開けたいわけだが、キーメカニズムの都合上、Aisトーンホールも開けざるを得ないからである。これを解消するために考案された機構がFisメカニズムであるが、構造の複雑さや耐久性の低さ等の理由から、商品化しているメーカーは少ない。B-C#のトリルでは、左手親指と人差し指を同時に動かさねばならない。これを容易にするために考案されたのがCisトリルキーで、Aisレバーの上流に設置され、右手人差し指だけでB-C#のトリルが可能になる。Cisトリルキーを用いると、B-C#のトリルだけでなく、第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルも容易になり、弱奏におけるG#6の発音も容易になる。また、通常のCisトーンホールは極端に小さいため、発音の困難、ピッチの不安定、音色の問題を伴うが、Cisトリルキーを用いると、これらの欠点を補うこともできる。しかし、楽器が重くなる、外観を損なう、取り付け費用が高価であるなどのデメリットもあるため、Cisトリルキーを標準装備するメーカーはほとんどない。第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルを容易にするためのキーである。かつてドイツにおいてよく使われたメカニズムであるが、現在では同じ機能をCisトリルキーで実現できる上、前述のように用途も広いためCisトリルキーに取って代わられつつある。金属製の楽器の場合、トーンホールが管体から立ち上がってキー(タンポ)と密着しているが、この立ち上がり部分をどのようにして製作するかによる分類である。「ソルダードトーンホール」は管体となるパイプに別の部品をはんだ付けすることによりトーンホールを作成するのに対して、「ドローントーンホール」はパイプそのものを引き上げ加工して、トーンホールを形成する。フルートは他の管楽器に比べ、使用する材質のバリエーションが幅広い。当然高価な貴金属製になるほど値段も高いが、音質に関する限り、管体の材質によって人間に聴き取れるほどの差異が生ずることはなく、ボール紙で作っても音は変わらないとされている。なお、以下に述べるのは管体やキーなどの材質であり、キーメカニズムの芯金やネジ、バネなどには下記と異なる素材も使用される。フェルトやコルクなども部分的に使われている。フルートは近代音楽や現代音楽において特に特殊奏法が数多く開発された楽器であるが、これらは作曲者や奏者によりさまざまな呼称、技法、記譜法があって、未だ発展途上にある。楽器や奏者により、あるいはそのときの調子によって、ねらった通りの効果が得られないこともある。上記の特殊奏法を組み合わせ、新たな音響を作り出すこともできる(例:フラッター+発声奏法、重音奏法+スラップ・タンギング)。モダン・フルートの教則本は数多く出版されているが、最も有名なのはパリ音楽院のフルート科教授だったHenry Altès(アンリー・アルテ/アンリー・アルテス)によるものである。フルート属には次表のようなものがある。これらのうち、コンサート・フルートとフラウト・トラヴェルソは実音楽器であるが、その他の派生楽器は、慣例的に記譜上の音域および運指がコンサート・フルートとおおむね合致するよう移調楽器として扱い、ト音記号を用いて記譜される。
出典:wikipedia
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