サリチル酸(サリチルさん、)は、ベンゼン環上のオルト位にカルボキシル基とヒドロキシル基を併せ持つ物質で、示性式は CH(OH)COOH、CAS登録番号は 69-72-7。無色の針状結晶である。隣接するヒドロキシル基の影響でカルボン酸としては比較的強い酸 (p"K" = 2.97) である。そのまま飲むと胃穿孔を起こし腹膜炎の原因となる。酸性を弱め胃を通過できるようにしたものがアセチルサリチル酸(アスピリン)である。ヤナギの薬理作用については、ヒポクラテスの書物に登場するほかにシュメール、レバノン、アッシリアの文書にも登場する。また、チェロキー族などのアメリカ原住民もヤナギの仲間を解熱・鎮痛に用いていた。日本でも「歯痛には柳楊枝」として知られていた。しかし、これらの記録はヨーロッパでは知られていなかった。1763年、イギリスの司祭エドマンド・ストーンが柳の解熱作用を再発見。その後、1830年にフランスの薬剤師アンリ・ルルー (Henri Leroux) とイタリアの科学者ラファエレ・ピリア () が解熱成分(サリチル酸の配糖体)を分離してサリシン( 「柳」から)と命名。その後ピリアはサリシンを分解して新物質を発見、サリチル酸と命名した。1852年に、ドイツ人化学者ガーランドによって初めてサリチル酸が合成された。1853年にマールブルク大学のヘルマン・コルベはサリチル酸の構造を解明し、その合成法を確立した。フェノールに水酸化ナトリウムを反応させてナトリウムフェノキシドを得、それに高温、高圧(5–6 気圧、125 ℃)の下で二酸化炭素を反応させるとオルト位にカルボキシル基が導入されたサリチル酸ナトリウム(Sodium salicylate)が合成される。サリチル酸ナトリウムに硫酸を作用させるとサリチル酸が遊離する。これをコルベ・シュミット反応 (Kolbe-Schmitt reaction) という。一方、カリウムフェノキシドに同条件で二酸化炭素を反応させるとパラ位にカルボキシル基が導入されたパラヒドロキシ安息香酸が 90% 程度生じる。これのメチルからブチルエステルはパラベンとして防腐剤に用いる。サリチル酸は天然にも広く認められる。植物内(特に果実)にエステル体であるサリチル酸メチルやサリシンの状態で存在しており、これは消炎剤に用いられる。その他、一部の食品やハーブ系植物などにも含まれカレー粉に多く含まれるとの報告もある。植物では、サリチル酸がウイルスやバクテリアなど様々な病原微生物に対する抵抗性(全身獲得抵抗性)を誘導する鍵となる物質として働くことが知られ、この働きにおいてはジャスモン酸と拮抗的に作用すると考えられている。一種の植物ホルモンとされることもあり、分子生物学による植物免疫研究の対象である。19世紀には、苦味が強い柳エキスに代わって鎮痛剤に使われたが、強い胃痛という副作用があった。その後、副作用がより少ないアセチルサリチル酸(アスピリン)に取って代わられることになる。日本では、明治12年(1879年)から飲食物の、明治36年(1903年)以降は酒の防腐剤として用いられていたが、WHO の勧告や世論の反対運動などによって昭和44年(1969年)に全面禁止となった。また、腐食作用を利用してイボ取りの薬の主成分となっている。誘導体のパラアミノサリチル酸 (PAS) は、結核の治療薬として用いられている。サリチル酸の作用の1つはAMP活性化プロテインキナーゼの活性化であり、これがサリチル酸とアスピリンの効果の一部を説明できることが示唆されている。サリチル酸は、ヒトで未変化のままで(代謝されることなく)腎臓から尿中に排泄されることもある。このため、例えばアセチルサリチル酸の大量服用による中毒時などのように、ヒトの血中に大量のサリチル酸が存在する状態になると、尿中に大量のサリチル酸が排泄されてくる場合がある。特に、尿のpHがアルカリ側に傾くと、尿中へのサリチル酸のままでの排泄量が増える。そのような時の尿に塩化第二鉄の水溶液を加えると、サリチル酸はフェノール性の水酸基を持っているために呈色反応を起こし、尿が変色する場合がある。尿中にサリチル酸が50 (μg/ml)以上の濃度で含まれていると、塩化第二鉄水溶液による呈色反応が起こる。
出典:wikipedia
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