罰金(ばっきん)とは、刑罰の一種であり、行為者から強制的に金銭を取り立てる財産刑である。自然人だけでなく、法人に罰金刑を科すこともできる。なお、罰金に限らず刑罰はあくまで「国家が自然人や法人に科すもの」であるから、自然人や法人同士の間では、刑罰である罰金を科すことはできない。罰金の金額は、1万円以上と定められているが、減軽する場合においては1万円未満に下げることができる ()。刑法では上限については一般的に制限していない。そのため、個々の条文で罰金額の上限を定めている。特に、独占禁止法や金融商品取引法、(特別背任罪)ような経済犯罪については、法律によって非常に高額な罰金が定められることもある。現在のところ法定刑の最高額は、金融商品取引法207条が規定する、法人に対する罰金7億円である。また、脱税および偽造通貨等収得後知情行使(刑法152条)については、脱税額および偽造通貨等の使用額面に比例して罰金を課すことができる(例えば所得税法第238条第2項では、脱税額が500万円を超える場合は、脱税額と同額の罰金を課すことができると規定している)ため、いわゆる青天井になっている。支払われた金銭は科料の金銭とともに国庫に入り、国を運営する経費に充てられる。交通違反の際に課される「反則金」や、行政上の手続違反の際に課される「過料」を「罰金」と呼ぶことがある。しかしこれらは「行政罰」であり、刑事罰たる罰金とは法的性質が異なる。端的に言えば、罰金は前科もしくは前歴になる刑罰であるのに対して、反則金や過料はそれにはあたらない。また過料は最高額が2000円を超えることは出来ないと定められている。50万円以下の罰金刑が言い渡された場合においては、情状によってその刑の執行を猶予することができる。もっとも、罰金に執行猶予が付されることは滅多にない。2002年以降では、毎年数十万人が罰金判決を受けているが、執行を猶予されたのは毎年1桁の人数である。罰金を完納出来無い場合は、労役場に留置され、判決で決められた一日あたりの金額が罰金の総額に達するまでの日数の間、例えば略式命令の場合だと、日給5,000円の労務(封書貼りなどの軽作業)に服することになる。労役場留置の期間は、1日以上2年以下である(罰金を併科した場合は3年以下)。未決勾留されていた被告人が罰金刑を言い渡された場合に、主文において未決勾留日数を金額換算(1日当たり5,000円が多い)して刑に算入することがある。この場合、算入されなかった罰金の残額のみ納付すればよい。換算した金額が言い渡された罰金額を上回れば、罰金を納付しなくて済む(罰金刑の事実が消えるわけではなく即日納付同等になる)。罰金刑を言い渡された者が罰金を納付しないまま死亡したときは、その執行もできなくなる。ただし、刑事訴訟法491条に規定する犯罪(租税その他の公課若しくは専売に関する法令の規定により言い渡した罰金)に該当する場合に限って、相続財産について罰金刑を執行できる。罰金を科す有罪判決または、(略式手続)が確定すると、前科として扱われる。具体的には、罰金以上の刑を受けた者は、一定期間、市町村役場に備置される犯罪人名簿(戸籍や住民基本台帳ではない)に登載される。また、検察庁の犯歴記録は、道路交通法違反による罰金以下の刑に処された者についても、記録の対象となる。前科は、一定期間(罰金の場合5年)を経過することにより消滅する(刑の消滅、前科抹消)。前科ありの場合、たとえ不起訴処分となるような小額の窃盗事件や傷害事件であっても、刑事訴追され有罪(これも刑が重くなる)となる。前科者として登載・記録されると、結果として海外移住ができなくなるといわれることがあるが、諸外国の入国や査証申請の取り扱いにおいて、犯罪経歴証明書(無犯罪証明)の提出を求められることがあり、犯罪経歴があると申請が拒否される場合があるためである。窃盗罪などの財産犯や、公務執行妨害罪などの国家的法益に対する罪は、従来、選択刑として懲役のみが定められ、罰金は定められていなかった。これは、「窃盗は金のない者が犯すのであるから、罰金を科しても実効性がない」ことや、「国家的法益に対する罪は罰金になじまない」ことなどを理由とした。しかし、少額窃盗(万引きなど)や、軽微な公務執行妨害(喧嘩の仲裁に入った警察官を突き飛ばした場合など)では、懲役を科すのは重すぎると考えられることもある。特に、公務員や公認会計士などは、禁錮以上の刑に処されると執行猶予が付いても失職・欠格となるので、軽微な犯罪で有罪になると酷な事態を招いてしまう。そのため、これまでは起訴猶予で処理されてきた事件が多かった。そこでこれらの犯罪への処罰にも柔軟に対応するため、選択刑として罰金が定められた(平成18年法律第36号、平成18年5月28日施行)。一般の市民が「罰金」を科されたと考える最も多い例は、道路交通法違反による反則金であろう。しかし、法律用語としては、反則金は行政処分の一種であり、刑罰としての罰金とは異なる。戦後、自動車台数の急増に伴い、道路交通法の違反者も急増し、迅速な事件処理に支障を来した。これに対処するため、1968年(昭和43年)に交通反則通告制度(交通反則金制度)を創設して、従来の交通事件即決裁判手続(交通事件即決裁判手続法)に替えるものとした。交通反則通告制度は、道路交通法違反の罪のうち比較的軽微な形式犯を行った者に対し、警視総監または道府県警察本部の長が、行政処分として反則金を納付させ、反則金を納付した者については刑事訴追を免ずる制度である。反則金と罰金の差異については、厳密には異なるとされているが、実質的には、違反者に対し、簡略な行政上の手続きにより、罰金と同様の財産刑ないし金銭的制裁を与えるものと言える。交通反則通告制度の対象となるのは、スピード違反、駐車違反、信号無視などの比較的軽微な違反行為である。これらの違反行為を警察官によって現行犯として現認されるか、自動速度測定などによって認知されると、「交通違反告知書」(俗に「青切符」と呼ばれる書面)により、反則金納付の手続きなどが通知される。指定された期日までに納付しない場合には、通常の刑事事件として刑事処分の対象となる。過度のスピード違反(速度違反であれば一般道で時速30km、高速道で時速40km以上のオーバー)や、無免許、酒気帯びを伴う場合、または交通事故を引き起こすなど、比較的重大な違反行為の場合には、俗に「赤切符」と呼ばれる書面により、検察庁(区検察庁)への任意出頭などが通知される。この場合には反則金納付による刑事訴追免除が認められず、通常の刑事事件として、刑事処分の対象となる。検察庁へ出頭すると、簡易裁判所での略式手続により、略式命令で罰金が科される。略式手続による処理に異議を申し立てると、通常の刑事訴訟手続に移行する。なお、罰金の目安は「違反速度×2000円(上限10万円)」と言われている。「違反者が少年の場合は罰金が科されることはなく、代わりに家庭裁判所に保護者同伴で行くことになり、『保護観察』などの保護処分を受ける」と言われているが、違反の内容が悪質と判断された場合少年の場合も罰金が科される事がある。古い刑罰法規の中には、インフレーションにより罰金刑の額が現在の物価からすると、かなり金銭価値が安くなってしまった規定もある。そのような事情に対応するために、罰金等臨時措置法が定められ、罰金刑の額が個々の刑罰規定における額に関わらず、一定額に引き上げられており、実際の法定刑は個々の刑罰法規に罰金等臨時措置法を適用したものになる。なお、一部法では「罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律 」により金額などが直接改正された。罰金判決が確定した件数は次のとおりである。( )内は、そのうち執行を猶予された件数である。年を追って減少傾向にある。2013年に言い渡された第一審判決312,836件では、通常第一審(通常手続)が2,608件、簡易裁判所での略式手続が310,228件であり、後者で99%以上を占めている。罪名別では、道路交通法違反が213,291件(68%)、自動車運転過失致死傷罪・業務上過失致死傷罪が51,984件(17%)を占めている。労働契約における「罰金制度」については賠償予定の禁止を参照。アメリカ合衆国では、2010年メキシコ湾原油流出事故の当事者であるBPに対して、45億ドルの罰金が求められた例がある。
出典:wikipedia
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