『北斗の拳』(ほくとのけん)は、原作:武論尊、作画:原哲夫による日本の漫画作品。およびそれを原作・題材としたテレビアニメ(1984年)・ゲームなどを指す。本項では原作である漫画を中心に、その関連作品についても述べる。
核戦争によって文明と人々の秩序が失われ、水と食料といった残された資源をめぐって争いが繰り返されるという最終戦争後の199X年が舞台。暴力が支配する弱肉強食の世界に現れた、伝説の暗殺拳"北斗神拳"の伝承者・ケンシロウの生き様を描くハードボイルドアクションである。『週刊少年ジャンプ』(集英社)1983年41号から1988年35号に連載。1980年代の『週刊少年ジャンプ』を代表する作品の一つであり、漫画家・原哲夫と漫画原作者・武論尊の最大のヒット作にして代表作である。単行本は1984年から1989年にかけてジャンプ・コミックス全27巻が発売されたほか、愛蔵版、文庫版(それぞれ全15巻)が刊行されている。2004年には徳間書店からコンビニコミック形式で全12巻が出版されたほか、2006年には小学館より完全版全14巻が刊行された。本作品の「前史」を扱う作品『蒼天の拳』に関わっているコアミックスからは、2002年よりフルカラー化したマスターエディションが発売されたが、刊行は4巻までで頓挫。同社からは、付録としてフィギュアをつけた編集版全24巻も発売されている。累計発行部数は6000万部、全世界では1億部。宿命的な物語の他に、主人公の使う北斗神拳により人間の頭や胴体が破裂する描写、「ひでぶ」「あべし」「たわば」などといった断末魔の悲鳴(#断末魔の叫び参照)、ケンシロウが相手に対して「お前はもう死んでいる」と死を告げる台詞や、「秘孔を突く」といった表現などが人気を博し一大ブームを巻き起こした。西暦199X年、地球は核の炎に包まれた。だが、人類は死に絶えてはいなかった。暴力がすべてを支配する世界となった核戦争後の大地で、途中で出会ったリンやバットを連れ、北斗神拳伝承者・ケンシロウが暴徒を相手に拳を振るう。北斗神拳を共に修行した兄達、それぞれの宿星を持つ南斗聖拳の伝承者達が現れ、ケンシロウと激闘を繰り広げていく。分類はテレビアニメを基としたもの。原作では「第一部」や「〜編」のような表記は行われていない。TVアニメ版基調では『北斗の拳』第1部(〜シンの最期まで)を「サザンクロス編」、第2部(レイの登場〜最期まで)を「風雲龍虎編」、第3部(サウザーの登場〜トキの最期まで)を「乱世覇道編」、第4部(〜ラオウの最期まで)を「最終章」としており、『北斗の拳2』では第1部(〜修羅の国へ渡るまで)を「天帝編」、第2部(〜カイオウの最期まで)を「修羅の国編」としている。ケンシロウの胸に七つの傷を付けた上、婚約者・ユリアを強奪した北斗神拳と表裏をなす南斗聖拳のシンは、彼女のために巨大な街サザンクロスを築き、関東平野を支配し"KING"を名乗っていた。ケンシロウはシンと雌雄を決し勝利するが、シンからユリアの飛び降り自殺が伝えられる。リンやバットと旅を続けるケンシロウは、マミヤの率いる村にたどり着き、そこで知り合った南斗水鳥拳"義星"のレイと共に、村を狙っていた牙一族を倒す。さらにケンシロウの名を騙り暴虐を働いていた北斗三男ジャギ、次兄トキに成りすましていたアミバ、トキを幽閉していたカサンドラ獄長ウイグルを倒し、トキと再会。北斗の長兄ラオウは"拳王"と名乗り、世紀末覇王を目指していた。ケンシロウはラオウと対決するが、お互い死力を尽くした闘いは相打ちの引き分けに終わった。だが、先にラオウに挑んだレイは、死の秘孔を突かれて敗北し、南斗六聖拳の崩壊を招いた"妖星"のユダとの闘いを経て壮絶な死を遂げる。第2部・風雲龍虎編を更に細かく分別すると、2-1・牙一族編、2-2・ジャギ編、2-3・アミバ編、2-4・カサンドラ編、2-5・拳王編、2-6・ユダ編となる。南斗乱れる時、北斗現れる。"聖帝"を名乗り、愛を否定して覇道を突き進む南斗六聖拳"将星"のサウザー、それに抵抗する"仁星"のシュウとの争いに巻き込まれる。これに終止符を打つべく、ケンシロウは、少年時代に命を救われた恩人シュウに味方してサウザーと対決。一度は完全に敗れたものの、再戦で南斗聖拳最強のサウザーを倒し、野望を阻止する。サウザーの死により、覇王として天を掴もうとする者は、もはや"拳王"ことラオウただ一人。やがてラオウはトキの実兄であることが判り、トキは病の身を押して、兄ラオウの拳を封じるべく再び拳士として立ち上る。死力を尽くして2人は戦うが、トキは敗北して残り少ない余命を使い果たすこととなる。一方、天の平定を望みラオウの元に下っていた"天狼星"のリュウガは、ケンシロウの力を覚醒させて、その力を見究める為、トキを殺害したように見せかけケンシロウと戦う。しかしリュウガはすでに割腹しており、トキと共に事切れる。そして死の間際、彼がユリアの実兄であることが明かされる。第3部・乱世覇道編をさらに細分化すると、3-1・サウザー編、3-2・トキVSラオウ編、3-3・リュウガ編となる。ラオウの勢力下の町は荒廃していた。"南斗聖拳最後の将"を守護する南斗五車星達は、ラオウ軍に立ち向かう。やがて"最後の将"の正体が、実は存命していたユリアであることが判明する。ケンシロウは北斗神拳伝承者の誇りとユリアをかけて、覇道を完成させんとするラオウと拳を交わす。互いに究極奥義を身につけ、北斗神拳の奥義が全く通じない凄絶な闘いとなったが、一片の狂いもないケンシロウの無想の拳に対し、ラオウの闘気に乱れが生じ、その隙をついた必殺の拳がラオウの胸に突き刺さって決着した。敗れたラオウは自ら秘孔を突き、残った気を天に放出、「わが生涯に一片の悔いなし!!」と最期に発した言葉ともに天に帰り、ケンシロウは、ラオウの処置によって延命したユリアと共に去っていく。激闘の末、ケンシロウはラオウを破ったが、ケンシロウは巨木とはなりえなかった。平安の時代は短く、世は"天帝"による圧政の時代になっていた。ユリアと死別したケンシロウは再び立ち上がり、成長し「北斗の軍」を率いるリンやバットとともに、天帝による支配に立ち向かう。天帝側の人物が使う拳法として、北斗南斗に匹敵する元斗皇拳が登場する。伝承者ファルコは、かつてラオウに互角の力量と認められながらも、村の安全と引き換えに自身の脚一本を差し出したほどの漢だった。ケンシロウは、元斗の拳士との闘いを経て、天帝の威光を笠に着て悪政を繰り広げる元凶、総督ジャコウを倒す。ここからはあえて画風を変えて掲載されている。リンは、ジャコウの息子ジャスクにより、海を超えた"修羅の国"に連れ去られた。ケンシロウは天帝の血を引くリンを追って単身修羅の国へと渡り、そこで新たな敵、修羅の存在を知る。修羅は、手負いとはいえ元斗皇拳最強の男・ファルコを瀕死に追い込むほどの強さを誇った。修羅の国とは何か? かの国で流れるラオウ伝説の正体は? ケンシロウと北斗神拳の来歴が明らかとなり、もう一つの北斗である北斗琉拳の伝承者達との死闘が繰り広げられる。自身の実兄ヒョウと、ラオウの実兄であり北斗琉拳最強の男カイオウを倒したケンシロウは、リンをバットに託して再び旅立っていく(TVアニメではここまでが放送された)。「ケンシロウは、一体誰を北斗神拳の後継者にするつもりなのか?」その答えとして、彼はラオウの実子リュウを後継者に選んだ。リュウとの旅の途上、ケンシロウはサヴァ王家を和解させるなどの活躍を見せる。リュウを元拳王軍の良将バルガに預けたケンシロウは、再び旅を続けるが、マミヤからバットとリンの顛末を聞く。バットはリンの記憶を消し、ケンシロウを思い出させようとしていた。立ち去ろうとしたケンシロウもまた、ユリアの導きによって記憶を失い、2人と再会する。バットは身を引き、ケンシロウの身代わりとして彼を執拗に狙うボルゲと戦うが、凄惨な拷問を受ける。戦いの中で、ケンシロウ・リンともに記憶を取り戻す。デビュー作である『鉄のドンキホーテ』が短期で打ち切りとなった原に、堀江信彦が漫画家を続けることを勧める。原の作風に合わせて堀江が出した格闘技漫画のアイディアを元に、『北斗の拳』の原型となる読み切り作品「北斗の拳」を執筆。『フレッシュジャンプ』(以下、『FJ』と表記)1983年4月号に掲載された「北斗の拳」が、読者アンケート1位となり、さらに『FJ』1983年6月号に続編の読み切り「北斗の拳II」を掲載。これがまたも人気トップを獲得したため、堀江は編集長の西村繁男に掛け合い『週刊少年ジャンプ』での連載が決定した。週刊連載にあたり、原哲夫の「作画に時間が掛かるため、1人で週刊連載はとてもできない」との意を汲み、原、堀江にドーベルマン刑事以降ヒットの無かった原作者の武論尊を加えた3人による制作体制を確立し、以降、堀江は一貫して連載を担当した。読み切り版「北斗の拳」は、主人公霞拳四郎が北斗神拳で恋人ユキを殺した悪と闘うというもので、時代設定は現代である。「お前はもう死んでいる」の台詞も原は堀江の発案としている。『週刊少年ジャンプ』での連載にあたり、時代設定は核戦争後の近未来となり、奪われた恋人を探す設定となった。読み切り版「北斗の拳」は『鉄のドンキホーテ』単行本巻末に収録されている。読者アンケートでは連載初回で2位、2回目以降は3年間にわたり1位を維持する人気作品となり、落ち込み傾向にあった『ジャンプ』を救う看板作品となった。ラブコメ路線で30万部差までに追撃していた『週刊少年サンデー』を突き放し、1984年末に『ジャンプ』が400万部を達成。後の600万部体制の足がかりとなった。これについて西村は、書籍『さらば、わが青春の『少年ジャンプ』』において、「サンデーのラブコメ路線を北斗の一撃が粉砕した。これにより、他誌の人気ジャンルには正反対のジャンルの作品をぶつけるというパターンができた」と語っている。武論尊のストーリー作りは即興的で伏線の張り方も直感頼りであり、武論尊は「当時はよく先の展開が分からないと言われたけど当然だよね。だって作者が分かってないもの」と冗談交じりに語っている。武論尊と原は後述するケンシロウとラオウとの闘いの決着をもって物語を完結させる意向だったが、当時の『ジャンプ』の方針(編集部の業務命令:この時点の編集長は後藤広喜)により連載は延長される。武論尊はラオウの死後、新展開の構想のため2ヶ月間は休載出来ると思っていたが、実際には翌週から開始せねばならず、連載終了後は「ラオウ編以降はあまり覚えていない」と発言している。なお、堀江は本作の最終回に原哲夫や武論尊と同等の扱いで名前がクレジットされ、原らとは以後もコアミックスを立ち上げるなど良好な関係を続けている。悪党達のあの手この手の悪事と、それに対するサディスティックなまでのケンシロウの拷問・制裁というパターンは、「絶妙のボケとツッコミ」の一種のギャグ漫画とも解釈出来ることが、評論家の夏目房之介、岡田斗司夫らによって指摘されている。本作の特色及びギャグ性を現す要素の一つとして、作中で敵が断末魔(臨終)の際に上げる異様な悲鳴が挙げられる。代表的なものに「ひでぶ」「あべし」「たわば」などがある。これらはアニメでは多用されたが、原作では1回しか使用されていないものもある。ハートが遺した断末魔の叫び「ひでぶ」の由来は「ひで=痛て(ハートの「いてぇよお〜!」という台詞)」+体の破裂する音「ぶ」の合成である、と原が文庫版『北斗の拳』最終巻で解説している。それまでは、手書きのネームの段階では「ひでえ」だったものが、原が悪筆のために写植の段階で「ひでぶ」と誤植されたと勘違いされており、武論尊も誤植だと思っていた。アニメ版においては、千葉繁などのいわゆる「やられ役」要員の番組レギュラー出演者らにより、アフレコ現場で様々な断末魔演技が開発され続け、声優の言葉遊びの中から生じた叫び声もあり、物語が進むにつれてエスカレートしていった。神谷明のインタビューによれば、「今日は後期印象派で死のう」と打ち合わせておいて「ゴッホ」「ゴーギャン」などと叫んだこともあったという。これについては千葉の項も参照。『北斗の拳』の世界は、第三次世界大戦による全面核戦争が勃発した199X年から始まる。冒頭の「199X年、世界は核の炎に包まれた」というその199X年は1999年を意識して描かれたと、後に原哲夫は語っている。核戦争後の世界では、地上は荒土と化し、国家機構も崩壊している。これに伴い、通貨や貨幣も無価値となっている。また、電気を始め近代文明の所産の大半が失われているが、遺産として拳銃、自動小銃、火炎放射器、バイク、自動車などは残っており、アニメ・新劇場版ではヘリコプターや戦車も登場する(武器については後述)。また、水は飲料水や農業用水としての需要の高さが影響して、あまり存在しないのに対し、バイクや車の燃料となるガソリン、軽油などの石油製品は大量に存在している。その一方、水や食糧の生産・流通システムは崩壊し、独力での農耕や狩猟、あるいは物々交換、果ては略奪といった形で確保しなければならない。ただし、河川や湖や井戸といった物は存在しており、そこを拠点に水や魚を確保することは出来る。また、集落や町を基点に食料や奴隷などの物品を扱う商人もいる。核戦争を生き延びた人類は、各地で集落を築いて細々と暮らす人々とそういった村々を襲撃する暴徒の両極端に分かれており、暴力がすべてを支配する世の中になっている。北斗神拳伝承者であるケンシロウは、そういった暴徒を必殺の拳で次々と葬っていき、ラオウやトキら他の伝承者、そしてレイやシュウを始めとする「強敵(とも)」と拳を交していく。核戦争から時間が経過するにつれ、国家や文明崩壊による混乱の収拾が見られ、国家や秩序といったものが復活していく。しかし、国家や地域間において治安や生活レベルでは大幅に格差が存在する。また、農業などの食糧生産システムも時間をかけて回復していく。物語の開始時点での舞台は日本ということにされており、KINGが「関東一円を支配する暴力組織」であると解説されるほか、冒頭で聖徳太子の描かれた1万円札が登場している。また、KING編では日本語で書かれた文章が登場する。終章でも時間軸上冒頭の時点で書かれた、日本語の文章が登場している。ただし、その後は、地名や著名な建造物など日本を連想させる要素は登場していない。その他、後に登場した修羅の国に渡航できる海を「唯一残された海」としているが、新劇場版では“死の海”と呼ばれた「唯一残された海」の他に美しい海がそのままに残っているシーンがある。一方では、サヴァの国のような新興国や勢力が誕生したり、ブランカのような長い歴史と伝統を持つ国が存続している場合もある。一子相伝の暗殺拳であり、中国拳法の一派とされる。人間の潜在能力を全て活用し、そのエネルギーで人間の体に数多く存在するといわれる「経絡秘孔」を突くことで、人体を内部から破壊することを基本とする一撃必殺の拳法である。巨漢が体のあちこちの"秘孔"を指で突かれただけで、筋肉の異常な収縮により自分の体をコントロールできなくなったり、体が内部から破壊されて破裂するという描写となっている。アニメでの演出は前述の描写をシルエットや透過光を用いて残虐性を抑えているほか、電撃が走るような描写と効果音が入る。『北斗の拳』世界の人々は、子供を除き平均身長がかなり高い。作中では180cm台のケンシロウでも「チビヤロウ」呼ばわりされている。中には10m以上あるようにしか見えない者(デビル・リバース)が登場することもある。現実の成人男性よりもかなり大きな体格や、逆に小さな体格として描写される人物たちに関しては、作画担当の原哲夫は「体のサイズを誇張して描くことで、人物の勢いや印象がわかるように調節しているだけであり、フィクションとはいえ身長5mや10mの人間が作中で生活しているような想定は特にしていない」という趣旨のコメントをしている。作中に登場する巨大な馬である黒王号も作者はこの類の単なる誇張として大きく描いたと証言している。死の運命を背負った者には、北斗七星の脇に輝く小さな星「死兆星」が視認可能となる設定がある。なお、この星はアルコルという実在の天体であり、アマチュア天文学の方面では二重星の好例としてよく取り上げられる恒星である。視力が悪いと一つの星にしか見えないこともあり、人によって見えたり見えなかったりするため、「見えると死ぬ」「見えないと死ぬ」といった伝説が各地にある。古代ギリシャやローマ帝国では、徴兵合格基準として死兆星が視力検査に使われていて、死兆星が見える視力の良い者=戦争で大怪我や死に繋がるとされた。核戦争後の混沌とした世界が舞台であるため、村々を襲撃する野盗や暴徒の類は様々な武器を使用している。拳法を極めた類の人間であっても、こうした武器を使う必要がある場面も多く、需要は大きい。核戦争で文明が崩壊しているので、ミサイルや原子力潜水艦のようなハイテク兵器は残っていない。主要な武器は、剣や槍、斧や棍棒のような接近戦用の武器である。また、ウイグルの鞭といった何らかの仕掛けを備えた武器も存在する。この他、毒物や毒を仕込んだ武器も使われている。また、火薬を使用しない単純構造の飛び道具として弓やボウガン、ニードルガンが活用されている。ただし、アニメオリジナルキャラクターでシン(KING)の部下が使用するものとして、ヘリコプター、この世に1つしかないという戦車、砲台を装備した列車、要塞として改造された昔の軍艦、モンケン(鉄球付きの工事用重機)などの機械が登場した。また、アニメ版『天の覇王』では投石器が、ゲーム『北斗無双』では火炎瓶やバリスタ砲に不発弾のミサイル、さらにジャギが使う武器としてロケットランチャーや戦術核兵器が、またマミヤが使う武器として閃光弾が登場している。銃、ダイナマイトなどの爆弾の類は、多少は残っているものの数は極めて少ない。銃が登場するシーンでは、登場人物が弾丸の残量について言及している(アニメではフウガとライガに機関銃、サウザーに散弾銃を用いて挑んだキャラが一蹴されている)。こうしたハイテク兵器皆無、銃器は稀少という世界設定は、拳法家を活躍させるための都合上によるものであると原作者の武論尊のコメントがある。最終戦争後の世界の設定、登場人物の服装、主人公ケンシロウの性格設定などは、映画『マッドマックス2』(1981年)とその主人公マックス(メル・ギブソン)の多大な影響を受けていた。映画では他に『キリング・フィールド』の影響が言及されている。ケンシロウの容姿面では、初期においてはブルース・リーの影響が強く、ヌンチャクを操るシーンも何度かある。人物の隆々とした筋肉の描写は、原いわくフランク・フラゼッタの影響が強い。特定の作品ではないが、武論尊が連載前にカンボジア旅行で目撃した、ポル・ポトの虐殺によって荒廃した街の風景も、本作の世界観に影響を与えた。『北斗の拳』の大ヒットを受けて、以後のコミックやB級アクション映画などに本作の亜流・二番煎じが雨後の竹の子のように出現した。筋骨隆々の主人公が逆境に追い込まれた後、その武術と超人的な格闘能力で悪党をバッタバッタとなぎ倒し、その後ボスを苦戦しつつ倒し大団円になるという基本的筋書きが共通している場合が多い。更に、その『北斗の拳』の大ヒットは掲載していた『週刊少年ジャンプ』の編集方針にも大きな影響を与え、バトルアクションが主体の格闘漫画が増加するなど、多くの作品がポスト『北斗の拳』を目指したストーリー展開を行っていくこととなる。無際限に秩序の荒廃が進み暴力が横行する社会が描かれた『北斗の拳』の世界観から転じて、際立って治安が悪い地域や無行政状態の地域に対する比喩的表現として、特定の都市や地域が「リアル北斗の拳」「北斗の拳状態」「世紀末状態」などと形容されることがしばしばある。たとえば事実上の無政府状態にあるソマリアや、最悪期の南アフリカ共和国のヨハネスブルグなどのような状況である。ウータン・クランなどの活動で知られるヒップホップ・アーティストのRZAは、『獣兵衛忍風帖』と並び『北斗の拳』を一番好きなアニメとして挙げている。ヒップホップ・アーティストのJeru the Damaja『The Sun Rises in the East』冒頭で、映画版『北斗の拳』冒頭の音声が使用されている。角田信朗は自分の息子と娘にケンシロウ、ユリアと名づけているほか、『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』に赤鯱役の声優として起用もされている。漫画家の星野円は、同人誌活動では北斗の拳のパロディ同人誌をメインとしている。イギリスの元キックボクサー・アクション俳優のゲイリー・ダニエルズは自分が出演した『北斗の拳』の実写映画の縁で自分の三男にケンシロウ(Kenshiro)という名前を付けた。2013年1月31日には、テレビ朝日のバラエティ番組『アメトーーク』の番組企画として「北斗の拳芸人」が放送された。ゲスト芸人はキャイ~ン天野、土田晃之、よゐこ濱口、ペナルティ・ヒデ、シャンプーハット小出水、アンガールズ山根、ケンドーコバヤシ。なお、司会の宮迫博之が胃がん手術後初の企画収録となったこの回では、原哲夫が描き下ろした雨上がり決死隊両名をモチーフにした劇画タッチ「アメトの拳」の巨大イラスト作品が、番組に快気祝いも兼ねて贈呈された。その人気から1984年にTVアニメ化され、これを皮切りに以下の作品群が製作されている。1995年4月22日公開。ハリウッドで実現した実写版。ただし日本の東映ビデオと東北新社の共同製作であり、いわゆる「ハリウッド映画」ではなく東映Vシネマのアメリカ版である「Vアメリカ」として作られた。当時の『週刊少年ジャンプ』の特集記事によれば、制作費は2億円とのことで、原哲夫も「決して超大作ではない」とコメントしている。主演はゲイリー・ダニエルズ(英語版)。原作初期におけるケンシロウ対シンの物語を描いているが、南斗六聖拳や拳王の設定は一切登場しないため、シンは純粋な悪党に終始している。基本的に北斗神拳の描写は少なく、『マッドマックス』風の世紀末描写に通常の格闘アクションを加えた印象の作品になった。人体破裂描写は特撮で再現されている。鷲尾いさ子がユリア役、マルコム・マクダウェルがリュウケン役で出演しているほか、ジャギ風の敵役でショーン・ペンの弟のクリス・ペンが出演している。1997年夏に坂本浩一の監督による第2作の制作が予定されていた。日本語吹替版は、テレビアニメ版と同一のキャストによって吹替が行われている。2作品ともに、ツクダホビーより発売。2003年にケンシロウをメインキャラクターにしたパチスロ機『北斗の拳』がパチスロメーカーサミーから発売され大人気となった。このパチスロ機は史上最高の60万台を超える出荷台数を記録している。2006年に後継機『北斗の拳SE』が発売され、2007年にはラオウをメインキャラクターに据えて『北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章』が発売となっているなど、パチスロの分野でも人気は衰えていない。2002年・2005年にはパチンコ機『CR北斗の拳』も登場したが、こちらはパチスロ機ほどの人気は得られなかった。しかし2008年9月に登場した『ぱちんこCR北斗の拳 ケンシロウ』『ぱちんこCR北斗の拳 ラオウ』は、登場人物の3D表現が巧みになり、原作と遜色なく楽しめる派手な演出が人気を集めた。2011年には初代「パチスロ北斗の拳」を継承した「パチスロ北斗の拳・世紀末救世主伝説」が販売された。本作の完結後も以下の作品群が発表されている。
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