聴覚障害者(ちょうかくしょうがいしゃ)とは、聴覚に障害をもつ(耳が不自由な)人のことである。この聴覚障害者にはろう者(聾者)、軽度難聴から高度難聴などの難聴者、成長してから聴覚を失った中途失聴者、加齢により聴力が衰える老人性難聴者が含まれる。かつては聞こえに不自由がある人を指す言葉として「つんぼ(聾)」という言葉があったが、現在では差別に当たるとして「聴覚障がい者」「耳の不自由な人(方)」という言葉に改められた。また「つんぼ」は放送禁止用語(放送問題用語)・差別用語とされ、放送や出版物などメディアでの使用の自粛が行われており、日常会話で使われることもほとんどなくなっている。しかし過去の著名な文学作品・映画の作中では用いられており、筒井康隆はこれを龍の耳と書く美しい日本語であるとしている。尚、医学的に聞こえていても言語を理解しない場合も類似的に使用されることがある。漢字の「聾」を分解すると、上記のように「龍」「耳」になることから、日本ではタツノオトシゴが聴覚障害者の象徴として使われており、全日本ろうあ連盟をはじめ、一部の聴覚障害者団体のシンボルマークに用いられている。聴覚障害の原因には風疹などによる先天性と後天性がある。後者には、病気、薬の副作用(ストレプトマイシンが代表的)、点滴の副作用長期間にわたる重度騒音や頭部への衝撃、精神性ストレスによる突発性難聴、加齢などがある。一般的に、聴覚障害者は聴覚以外に身体的欠陥はないが、重複障害を持つものもある。聴覚障害のタイプには、"伝音性"と"感音性"と"混合性"がある。伝音性は内耳までの間の音を伝える経路に原因がある場合で、感音性は内耳から奥の聴覚神経や脳へ至る神経回路に問題がある場合である。混合性は"伝音性"と"感音性"の2つが合わさったものである。聴覚はセンサー機能について述べ、聴力は聞く能力について述べているといえる。つまり、ある特定の聴覚神経が欠けていると、その波長の音は聞こえない。一方、聴力は聞き取る能力が低下したりする場合にいう。大きな騒音環境にいて、一時的に聞こえの能力が低下した場合は"聴力低下"という。聴覚障害の程度は、医学的にはデシベル(dB)で区分する。デシベルとは音圧レベルの単位であり、音の大きさが大きいほど高い値を示す。これにより健康な場合に対しどれだけ聞こえが悪くなったか(大きな音でないと聞こえないか)が示される。両耳で70dB以上になると、身体障害者手帳を交付される。40dB前後を超えると「話すのにやや不便を感じる」レベルになる。身体障害者手帳が交付されない40~70dBの人達も含めると、聴覚障害者は全体で約600万人いると言われる。そのうち、約75%は加齢に伴う老人性難聴である。なお、欧米の聴覚障害判定基準は40dB以上である。<【参考】騒音(公害)の環境基準。夜間の住宅地は45dB以下。新幹線沿線住宅地は70dB以下。ただし、騒音の環境基準は、正確にはA特性の騒音レベルにより定められており、聴覚を表す音圧レベルはdBHLという単位である。>平均聴力レベルは次の計算式で求める。日本国内では労働災害の認定に6分法を用い、健康診断では4分法を用いる傾向が多い。日本国外では世界保健機関『難聴及び聴力低下の予防のためのプログラム (PDH)』が示す4分法を用いられる。日本では、身体障害者福祉法によって身体障害者等級を定めている。聴覚障害の程度に応じて以下の等級の身体障害者手帳が交付される。以下は、「身体障害者福祉法施行規則別表第5号」の「身体障害者障害程度等級表」による。同一の等級について2つの重複する障害がある場合は、1級上の級とする。ただし、2つの重複する障害が特に本表中に指定されているものは、該当等級とする。異なる等級について2つ以上の重複する障害がある場合については障害の程度を勘案して、当該等級より上の級とすることができる。5級および7級の欄には記載がない。また片側のみの難聴(一側性難聴)は等級外となるため、あくまでも制度上は障害者とならない。聴覚障害者の人は筆記用具を持ち歩いていることが多く、手話等を解さない人とは、正確を期すため筆談をすることが多い。また、「私の代わりに電話をかけていただけますか」と書かれたカードを持ち歩く人もいる。2006年度までは、聾学校が聴覚障害を対象とした特殊教育諸学校として機能していたが、2007年度の特別支援学校制度の開始に伴い、「聴覚障害を教育領域とする特別支援学校」が、聴覚障害者に対する教育機関となった。かつては、聾学校教諭(専修・1種・2種)の免許状の取得が必要であった(実質的には骨抜き規定で、一般の小・中・高の免許状を取得していれば教えることが可能であった)が、特別支援学校教諭免許状の制度が開始されたことにより、同免許の「聴覚障害者に関する教育領域」とする免許に変更され、旧聾学校の免許保有者は、「聴覚障害を教育領域とする特別支援学校教諭免許状」を保有している、と読み替えられる(骨抜き規定である点は、現在も変わっていないが、正式採用後に授与されることは推奨される)。なお、聴覚障害者に対する教育は聾教育とも呼ばれるが、学校教育法上は「聴覚障害教育」とされ、概念的には、「(心身に障害のある幼児、児童又は生徒の)教育課程及び指導法」を包括したものとなる(この場合の「心身」とは「聴覚」のことを指す)。「聴覚障害を教育領域」とする免許を取得する教職課程を設置した大学は、旧養護学校免許状に相当する「知的障害者に関する教育領域」・「肢体不自由者に関する教育領域」・「病弱者(身体虚弱者を含む。)に関する教育領域」とする3教育領域とする課程設置校に比べると絶対数が少なく(ただし、視覚障害を教育領域とした免許状を取得可能な教職課程を設置している大学に比べると、その数は比較的多い)、大学通信教育でも、「聴覚障害者に関する教育領域」を定めた免許状の課程を設けているのは、全国で1校しか所在しない(当該学校では、旧養護学校相当の3領域も当然ながら取得可能で、(旧)養護学校相当3領域か、聴覚障害を加えた4領域のいずれかの取得を基本とするカリキュラムが組成されている。ちなみに、「視覚障害者に関する教育領域」を定めた課程を設置した通信制大学は皆無である)。2011年(平成23年)7月29日、「言語」と規定された改正障害者基本法案が参議院本会議で全会一致で可決、成立し、8月5日に公布された。この改正により、日本で初めて手話の言語性を認める法律ができた。この後、2013年(平成25年)には全国で初めて鳥取県が手話は言語であることを明確に記した手話言語条例を制定されるなど自治体でも動きが出てきている。また平成27年4月に生まれつきの聴覚障碍者として初めて議員当選した家根谷敦子が同年6月22日、明石市議会で初の手話による一般質問を行った。
出典:wikipedia
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