写真レンズ(しゃしんレンズ)とは、写真撮影に用いるレンズである。複数のレンズを鏡胴に組み込んだもので、カメラに取りつけて使う。写真用レンズともいうが、通常は単にレンズと呼ばれることが多い。写真レンズには、多くの場合絞りと焦点調節(ピント合わせ)機構が組み込まれている。レンズのスペックは口径比(F値)と焦点距離で表される。F値が小さいほど明るく、他の条件が同じなら速いシャッター速度で撮影できるレンズである。焦点距離によって標準レンズ、広角レンズ、望遠レンズなどに分類される。最近は焦点距離を変化させることのできるズームレンズも多い。大判カメラ用レンズでは、そもそも焦点調節機構を持たないし(ティルトやアオリや蛇腹で、ピント調節すれば良い)、全ての機種において、レンズ内にシャッターが組み込まれている(レンズ内シャッター方式)。カメラの歴史の初期には、1枚だけのレンズ(単玉レンズ)を用いていたこともあったが、その場合収差が大きく鮮鋭な像が得られず、比較的その影響を少なくするため口径を小さく(F値を大きく)すると、光量が少なくなって露出時間が長くなるという問題がある。このため複数枚のレンズを組み合わせて、より収差が少なく鮮鋭であり、かつ口径の大きなレンズを作る試みが長年続けられてきた。当初はレンズの焦点距離の固定された単焦点レンズであったが、後に焦点距離が可変のズームレンズも作られるようになってきた。以下に挙げる分類はあくまで概念的なもので、製品によって必ずしも厳密に当てはまらない場合もある。焦点距離が固定されたもの。焦点距離を連続的に変化させられるズームレンズの反対概念。ズームレンズと比べ、といった特徴を持つ。写真学校などでは、ズームレンズから入るとズームに頼ってしまい足を使わなくなってしまう(1点からの画角調整ばかりをして前後左右にアングルを調整することを考えない)ということから、まずは単焦点レンズで構図などの勉強をすることが多い。焦点距離を一定の範囲で自由に変化できるもの。その際ピント位置の移動が生じないものをズームレンズ、生じるものを可変焦点レンズ(バリフォーカルレンズ)という。最近ではオートフォーカス機構の普及により多少の焦点面移動があってもズームレンズと称するようである。なお、焦点面移動をカムによるレンズ群の非直線移動で補正する方式を「機械補正式」 (Mechanical compensation)、屈折力のバランスを計算してズーミングしても焦点面を一定に保つように設計段階から考慮した方式を「光学補正式」 (Optical compensation) と呼ぶ。焦点面移動の補正をカメラ側の自動焦点機能に依存することを「電子補正式」 (Electoronic compensation) と呼ぶ。現実的に今日の高倍率化、大口径化が進んだズームレンズの焦点面移動を機械補正や光学補正のみで補正することは困難で、残った誤差を電子補正で補うことは今や常識となっている。単焦点レンズに比べという特徴を持つと言われて来たが、光学設計技術の進歩により欠点は縮小傾向にある。さらに、ズーム機構部分に電動モータを付けた電動ズームがある。モータを通して、パソコンから正確に倍率制御できるようになった。拡大計測において、毎回ズームの変更による寸法補正は必要がなくなり、とても便利である。「広角ズーム」「標準ズーム」「望遠ズーム」に分けられる。近年の高性能化でズーム倍率が高くなりレンズ1本で広角から望遠まで撮影できる、といったレンズもあるが、そういったものは一応「標準ズーム」とされる(たいていは広角側か望遠側のどちらかに可変範囲が広い)。レンズ構成的には機械補正式の「2群ズーム」「3群ズーム」「4群ズーム」と光学補正式の4種類に大別できる。しかし近年の高倍率化のため2群ズームや3群ズームは最後部の凸成分をさらに2群や3群に分離してフローティング化することが普通で「多群ズーム」と呼ばれるなど、上述のように単純に分類できない光学系も増えてきた。通常のレンズではレンズ表面の曲率が一定な球面レンズを使用するが、球面レンズには平行光線を完全な形で一点に収束させられないという欠点がある。この欠点を解消するため曲率を連続的に変化させてレンズ形状を非球面状態にしたレンズが非球面レンズで、これを用いることで大口径レンズの球面収差補正、広角レンズの歪曲収差補正、ズームレンズの小型化が可能になる。レンズに光を通すと波長の違いによるスペクトル光が生じ、焦点のズレなどが生じる色収差が発生する。特に望遠、超望遠レンズでは焦点距離が長いため、色収差が顕著に現れる。写真レンズは屈折率やスペクトル光のずれ具合の異なる素材を使ったレンズの組み合わせによって色収差を補正するが、蛍石(フローライト、フッ化カルシウム)は通常の光学ガラスと比較するとスペクトル光のずれが異常に少ないため、これをレンズとした蛍石レンズを使用することで色収差補正における設計自由度が向上し、色収差を補正しやすくなる。また、通常の光学ガラスを用いて同等の色収差補正を実現するよりも小型・軽量化しやすくなる。しかし蛍石は研磨が難しい、結晶であるため割れやすいなど難しい点がありコストアップ要因であるため、蛍石レンズを使用した民生用レンズを販売しているメーカーでもごく一部でしか採用していない。近年では蛍石と似た低分散性を持つ異常分散ガラスを用いた異常分散レンズが開発され、高級製品から量産タイプまであらゆるレンズで用いられるようになっている。高い屈折率を持つ光学素材を使用することにより、画質を改善することができる。またレンズの軽量化にも有効である。トリウムを添加した高屈折ガラスは高屈折率と低分散特性を持ち、1950年代-1970年代までは一部のレンズで使用されていた。国内では旭光学(現在のペンタックス)のレンズを中心に使用されたが、数年で黄色や茶色に変色する点、微弱ながらガンマ線が放射される点などが忌避され使用されなくなった。酸化鉛を添加した鉛ガラスは高屈折率と高分散特性を持ち広く使用されたが、2000年過ぎ頃より鉛による環境汚染を防止すると称するRoHS対応のため徐々に使用されなくなった。現在は酸化ストロンチウムや酸化バリウムを添加したガラスが使用されるが光学性能はトリウムガラスや鉛ガラスには及ばない。光には障害物の端を通過する際に障害物の裏に回り込む「回折」という性質を持つ。この原理を利用し、レンズの波長の順序を逆転させることで、一般の屈折レンズと組み合わせて色収差を打ち消すレンズが開発された。これが回折光学素子(回折レンズ)である。これを用いることでより高画質の写真画像が得られ、さらに非球面レンズと同等の光学特性を持つことから球面収差の補正やレンズの全長の短縮も可能になる。キヤノンでは2-3層構造にした「積層型回折光学素子(DOレンズ、Diffractive Optics)」として一眼レフカメラ用レンズに、ニコンでは「位相フレネル(PF、Phase Fresnel)レンズ」としてコンパクトデジタルカメラ用テレコンバーターレンズに用いられている。超音波振動で駆動し、静穏かつ高速にオートフォーカスを可能にするモーター。カメラ用レンズとしてはキヤノンが世界に先駆けて搭載した。当初は高級レンズ群のみに限られていたが現在ではキヤノンレンズのほとんどに採用されており、ニコン、コンタックス、ミノルタ、ペンタックス、オリンパス、シグマの一部のレンズにも採用されている。また普及版など一部例外はあるもののフルタイムマニュアルフォーカス(後述)が可能である。オートフォーカスを作動させている状態のままレンズのフォーカス切り替えスイッチを変えることなくマニュアルフォーカスでピントの微調整ができる機構。超音波モーター搭載レンズの独擅場であったが、ミノルタ(現コニカミノルタ)はボディー、ペンタックスはレンズの構造を変更することで超音波モーターを搭載していないレンズの使用時においてもフルタイムマニュアルフォーカスを実現している。メーカーによって呼称が違いキヤノンでは「フルタイムマニュアルフォーカス」、ニコンでは「M/Aモード」、コニカミノルタ・ソニーでは「DMF (Direct Manual Focus) モード」ペンタックスでは「QSFS (Quick Shift Focus System)」オリンパスでは「フルタイム・マニュアルフォーカス、S-AF+MF/ C-AF+MF」などとメーカー別に呼称が違うので注意が必要である。大きく重いレンズのピント合わせで全群を動かすと、ピントリングが重くなり撮影者の負担となる。これを解消するため、レンズの最後部・もしくは中間部のみを動かすだけでピント合わせができるよう設計することで、ピントリングを軽くできる。またこの手法を使うことで、「レンズ全長が常時一定に保たれる」「レンズ系全体のコンパクト化が可能で、特にズームレンズでは一層の高倍率化が可能となる」「レンズ前玉部が動かないためレンズフィルター操作(とくに偏向フィルターやクロスフィルター使用時)に影響が出ない」などのメリットが生じる。オートフォーカス登場以前からあった技術ではあるが、オートフォーカスレンズではフォーカシング速度の向上に大きく寄与するため、さらに広く使われるようになった。なお。被写体との距離が短くなるほど画角が大きくなる=実焦点距離が短くなる、という特性がある。通常、一般的によく撮影される特定の撮影倍率を基準として各収差は補正されており、それ以外の倍率では収差が大きくなることがある。うまく設計することにより、一部のレンズの相対位置をずらしてフォーカス移動にともなう収差変動を制御できるため、全域に渡って収差が抑えられた写真レンズとすることができる。これをフローティングと言うが、高精度のカム加工を必要とし高価でもある。光がレンズを通るとレンズ表面で反射することによって光量のロスやレンズ内部での反射によるフレア、ゴーストの発生が生じる。これを防ぐために、コーティングを施して不必要な反射を防ぎ、これを単層膜コーティング(モノ・コーティング)という。やがて光学性能の要求の高まりと、蒸着技術の向上ととも1952年に千代田光学精工(後のミノルタ。現・コニカミノルタ)によって世界初の2層コーティングである、「アクロマチック・コーティング」が開発され、「緑のレンズ」とも呼ばれた。カラーバランスを保つにも有利な重層膜コーティングがこの後主流となっていく。そして旭光学工業(現ペンタックス)がOCLI(米)による技術供与により開発、1970年に発表され、当時は驚異的ともいえた最多7層膜、透過率99.8%を実現させた「スーパー・マルチ・コーティング」を端緒とし、現在は多層膜コーティング(マルチ・コーティング)が主流となっている。他に代表的なものとしてキヤノンの「スーパー・スペクトラ・コーティング」「SWC (Subwavelength Structure Coating)」、ニコンの「スーパー・インテグレーテッド・コーティング」「ナノクリスタルコート」、ペンタックスの「エアロ・ブライト・コーティング」、カール・ツァイスの「T*コーティング」、ローライの「HFTコーティング」などがある。また、光学性能の向上以外に、撥水・撥油効果やキズへの耐性等のメンテナンスの向上を狙ったコーティングも合わせて使用されることもある。代表的なものとしてペンタックスの「SP (Super Protect) コーティング」がある。レンズ内のジャイロ機構等によって手ぶれを補正する機構。通常の写真用フィルムに比べて、デジタルカメラのイメージセンサーは斜めから入ってくる光を捉える性能が低いといわれている。このため、特に広角レンズなどでフィルムカメラ用に設計されたレンズでは、周辺部が暗くなる(周辺光量の低下が目立つ)ケースが多い。他にも、斜めに入射する光がデジタルカメラ特有の画質劣化の原因となるといわれている。このため、デジタルカメラ対応を謳う設計の新しいレンズにおいては、できるだけイメージセンサーに対する入射角が垂直に近くなるような設計(このようなレンズをテレセントリック光学系とよぶ)が行われる。また、イメージセンサーの表面やローパスフィルターなどが光を全反射するため、レンズとイメージセンサーとの間で発生する光の反射が写りに悪影響をもたらす場合がある。これらを改善するためにレンズのコーティングや光学系を見直し、よりデジタルカメラに適した設計を行ったデジタル対応レンズが販売されている。さらに、小型イメージセンサーを持つ機種は、従来のフィルムカメラよりも小さなイメージサークルで対応できるので、イメージサークルを小さく設計し、性能の割に小型で低価格になるようにしたレンズも作られており、デジタル専用レンズとして販売されている。カメラメーカーでは、長い間レンズにブランドが付けられていたが、1990年代以後ニコン・フジなど一部を除いてレンズへのブランド使用を中止している。また製品のブランド名が定着し、ブランド名に社名変更した企業も多い。※ - レンズブランドが社名になった例である。いち早くレンズへのブランド使用を止めたのはキヤノンで、1957~1959年ごろにはすでにセレナー銘の使用を止めている。なお、ライカやカール・ツァイス、フォクトレンダーなど日本以外のメーカーではレンズ分類ごとにブランド名がつけられていることが多い。
出典:wikipedia
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