疫学(えきがく、Epidemiology)は、個人ではなく、集団を対象とし、疾病の発生原因や予防などを研究する学問。元々は伝染病を研究対象として始まったが、その後、公害病や事故などの人災、地震などの天災、交通事故、がんなど生活習慣病など、研究対象・調査対象は多様化している。集団を対象とするため統計学を多用する。医学部のみならず、現在では教育学部や経済学部など幅広い学生に勉強されている。国際疫学学会の定義は「特定の集団における健康に関連する状況あるいは事象の、分布あるいは規定因子に関する研究。また、健康問題を制御するために疫学を応用すること」である。他の定義の例として、「疫学とは生物集団における病気の流行状態を研究する学問」がある。すなわち、ある一時点/一期間での、ある一集団において、ある特定の病気が流行した場合、その流行の原因を調べ、その原因を除去することにより流行そのものを制御(終熄、予防)するための学問である。別名「流行病学」。「疫学は人間集団における病気の発生に関する学問」だとする定義がある。また人間以外にも拡張した説としては、「疫学とは病気の発生に関する学問」だとする定義がある。Wikipedia英語版 (22:05, 3 January 2009)は冒頭定義で次のように述べている。疫学的研究では、分析的手法として概念的な単位を微視的なものではなく生物一個体に置く。すなわち、集団における病気を持つ個体の数を測定することにより、流行状態を頻度(有病割合や発生率など)として数量化する。集団生活を営む代表的な生物は人間であるため、疫学は人間集団に流行する病気の制御に用いられることが多いが、人為的に集団生活を営む動物(例えば家畜、産業動物)に流行する病気にも適用される(ただし、集団として捉えることが困難な野生動物に疫学は適用し難い)。したがって、疫学的手法は医学、獣医学の分野において多用される。歴史的に見ると、はじめに疫学は急性疾患(とくに感染症)の流行の制御に対して大きな成果をあげた。この成果に伴い社会の疾病構造が急性疾患から慢性疾患(とくに生活習慣病)に変化したため、現在では長期間にわたる流行形態をとる慢性疾患の制御の研究にも疫学は用いられている。また、社会の高齢化に伴い、病気の流行現象ではなく、逆に健康の流行現象を対象とする疫学的研究も多くなった。この意味において「疫学(疫=疫病、はやりやまい)」と言う用語は不適切なものとなってきている。疫学は疫の字に病垂(疒)が付くのため医学であると誤解されているが、英語では(epi; upon広範な -demos; people人間の -logos; study学問)と書き、人間集団に対するあらゆる因果関係の確認に用いられる学問である。疫学の始まりはのコレラ研究にあると言われる。コレラのイギリス侵入(1831年10月)当時、コレラは空気感染すると考えられており恐れられていた。しかしスノウは同じ流行地域でも患者が出る家は飛び飛びである等の知見を得て空気感染説に疑問を持ち、「汚染された水を飲むとコレラになる」という「経口感染仮説」を立て、疫学的調査と防疫活動を行った。1854年8月、コレラ患者が多量発生したロンドンのブロード街にて患者発生状況の調査を行い、ある井戸が汚染源と推測、あてはまらない事例について調査を行い、「汚染された井戸水を飲んでいる人は罹る」と結論した。行政がこれに従い問題の井戸を閉鎖したため、流行の蔓延を防ぐ事が出来た。この出来事は『ブロード街の12日間』というノンフィクションにまとめられている。ロンドンの水道会社はテムズ川から取水していたが、当時のテムズ川は汚濁がひどく衛生的とは言えなかった。スノウは患者発生マップと各水道会社の給水地域との比較照合を行い、特定の水道会社の給水地域においてコレラ患者が多発していることを突き止めた。同社の取水口は糞尿投棄の影響を受ける位置にあったという。これは1883年にロベルト・コッホがコレラ菌を発見する30年前の事であった。スノウの疫学的研究は、感染源・感染経路の解明という疫学的手法により、生物学的要因(病原体など)が不明であっても、社会的要因、状況の観察から、感染症流行を止めることができることを知らしめた。現代の疫学研究も、本質的にはスノウの研究と変わりない。日本の疫学の祖と言われている高木兼寛は、日本海軍に多発した脚気を白米を中心とする食事にありとする栄養学説を唱えて、それを実験疫学的に証明したことで有名である。航海実験の結果に基づき海軍食に麦飯を導入、結果、1885年には海軍の脚気は激減した。これらの功績により1905年(明治38年)に男爵の爵位を授けられ、後に「麦飯男爵」とも呼ばれたという。これは1912年に鈴木梅太郎がオリザニン(ビタミンB1)を発見する実に27年も前のことである。研究手法には以下のような分類がある。本記事ではこれらの手法を公衆衛生の原則「大きく捉えて3つに分ける」。記述疫学(descriptive epidemiology)は、結果の頻度や分布を調べる事により、原因と結果に関する特性を調べたり、原因の仮説を立てる統計学である。「○○の原因は××である」と言う仮説を記述する事から記述疫学と言う。なお、因果関係の妥当性を調べるのが疫学である。この判定をするために測定学を適用する。記述疫学で仮説を立てたら、因果関係の妥当性を調べないといけない。因果関係の妥当性(criteria of causal association)は、記述疫学の結果を分析疫学で分析する前に、「少なくともこれは満たしていなければ仮説としておかしい」と言う基準である。妥当性を検証する基準は諸説あり、Kochの3(4)原則、Evansの8条件、Hill の9基準(視点)等がある。Surgeon General(米国公衆衛生局長諮問委員会)の5基準を以下に示す。記述疫学で立てた仮説が因果関係の妥当性を満たしていたら、次に分析疫学で解析する。分析疫学(analytic epidemiology)は、記述疫学で立てた仮説を検証する研究。幾つかの分類方法がある。どの方法でも交絡や系統誤差、偶然誤差に注意する。結果対照研究(case control study)は、まず調べたい結果が出た人達と出ない人達で分ける。「○○が結果だ」と考えられる物○○と、結果がでなかったと考えられるもの××の2つに分ける。結果の出なかった人達××は結果の出た人達と比べるときの基準となるので、これを対照(control)と言う。「△△が原因だ」と考えられる物△△を暴露要因と言い、暴露要因に影響を受けることを暴露されると言う。上の表をさらに、それぞれを暴露要因に暴露されていた人達と暴露されていなかった人達に分ける。結果対照研究はこの四分表を用いて因果関係を調べる研究である。要因対照研究(factor control study)は、要因があったグループ(暴露群)と要因が無かったグループ(非曝露群)を同じ数だけ集めてきて、一定期間観察し、それぞれの中で何個体が結果○○になったかを調べる研究。要因対照研究はさらに以下の二つに分けられる。介入研究(intervention study)は、観察集団に対して、原因だと考えられる物を人為的に加減して、結果の発生率を調べる研究。医学に応用される場合、明確に規定された人間集団の中で出現する医学上の事象を、その頻度、影響、分布を明らかにして、医学上の事象の有効な対策を研究する学問である。疫学は、直接の病因を明らかにしない。病気の頻度や分布を調べる事により、病因と病気に関する特性を調べたり、病因の仮説を立てる。医学における結果対照研究を患者対照研究という。症例対照研究とも言う。まず、一つの病気について、患者と患者ではない人を集めてきて2群を作る。それぞれをさらに暴露要因に暴露されたか否か2つに分け、四分表を用いて病因と病気の因果関係を調べる。病因があった人達(暴露群)と病因が無かった人達(非曝露群)を同数だけ集めてきて、それぞれの中で何人が病気であるか、もしくは、将来病気になるかを調べる研究。将来に渡って、追跡調査をする前向き研究(prospective study)の場合を、特にコホート研究(cohort study)と言う。医学におけるコホート研究では、大勢の人を長年追跡調査するため、国家プロジェクトとなる。医学における介入研究を臨床試験という。臨床試験の中でも、新薬の承認、あるいは既存薬の新たな適用の申請のために、製薬企業が行う臨床試験を治験と言う。企業においては臨床開発部門がこれを執り行う。日本においては医師主導型臨床試験の実施が少なく、臨床研究の不足を指摘されていたが、2002年改正薬事法が翌年7月30日より施行さると、医師や医療機関が主体となって治験を行うことができるようになった。なお、臨床試験は全て人間を対象とする実験である。動物による実験を臨床試験以前の基礎研究という。臨床医学で遭遇する問題に対して疫学を適用することを臨床疫学という。個々の患者に対して臨床的な予測を行う目的で、臨床的なパラメータを調べる学問である。古典物理学の運動方程式のような確定的な予測ではなく、確率による評価が利用される。健康の疫学とは、根拠に基づく医療の一環として根拠に基づく栄養学の理論と実践である。栄養疫学とも呼ばれる。交通事故の発生原因を分析し、発生防止に役立てる学問。商品の販売事由を分析し、販売促進に役立てる学問。しかし、この分野において根本的な意味で疫学はほとんど用を成さない。なぜならば、疫学は自然科学であるため再現性のある現象を対象とするが、商品の販売という社会現象において再現性を見いだすことは極めて困難だからである。疫学をテーマとした小説疫学がモチーフの映画
出典:wikipedia
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