テクネチウム()は原子番号43の元素。元素記号は Tc。マンガン族元素の1つで、遷移元素である。天然のテクネチウムは地球上では非常にまれな元素で、ウラン鉱などに含まれるウラン238の自発核分裂により生じるが、生成量は少ない。そのため、後述のように自然界からはなかなか発見できず、人工的に合成することで作られた最初の元素となった。安定同位体が存在せず、全ての同位体が放射性である。最も半減期の長いテクネチウム98でおよそ420万年である。周期表中でモリブデンとルテニウムの中間に空欄があったことから、19世紀から20世紀初頭にかけて、多くの研究者がこの43番元素を発見するのに熱中した。この43番元素は他の未発見元素と比べると簡単に発見できるだろうと思われていたが、1936年にサイクロトロンで合成されるまで得られなかった。白金に似た外観を持つ銀白色の放射性の金属で、比重は11.5、融点は2172 (異なる実験値あり)。沸点は4000 以上。安定な結晶構造は六方晶系。363 nm、403 nm、410 nm、426 nm、430 nm、485 nmの特有スペクトルを持つ。わずかに磁性を持っており11.3 K以下にすると強磁性を示す。化学的性質はレニウムに類似する。フッ化水素酸、塩酸には不溶で、酸化力のある硝酸、濃硫酸、王水には溶ける。単体は、湿った空気でゆっくりと曇る。粉状のテクネチウムは、酸素中で炎を出して燃える。+2、+4、+5、+6、+7の酸化数をとる。酸化物には酸化テクネチウム(IV) TcO や酸化テクネチウム(VII) TcO がある。酸化条件下では過テクネチウム酸 TcO が見られる。テクネチウムは現在、いくつかの恒星のスペクトル線からも、天然での存在が確認されている(テクネチウム星)。地球上ではウラン鉱中に微量が自発核分裂生成物として見い出される。医療用に使用される同位体は放射性廃棄物中から単離して得る方法と、中性子を照射されたモリブデンの同位体から得る方法がある。テクネチウムは比較的軽い元素でありながら安定同位体が存在せず、標準原子量が定められない。これは、テクネチウムが置かれた「位置」による偶然の結果である。中性子数55の Tc が最も長寿命な核種だが、これも放射性同位体である。一般に原子核は、陽子と中性子の数がともに偶数だと安定し、ともに奇数だと不安定となる。さらに陽子数と中性子数の間には最も安定する比があり、ベータ安定線と呼ばれるが、テクネチウムの場合、ベータ安定線に一致するTc は陽子数43と中性子数55で奇数と奇数の不安定核種であった。もっともこれは、原子番号が奇数の元素に共通の現象であり、多くはその次に安定な核種が安定同位体となっている(例えばNb やRh 、詳細は核種の一覧参照)。ただし、「次に安定な核種」は自動的に「質量数が奇数の核種」となるため、同じ質量数を持つ核種のうちで安定核種は1つしか存在できない制約を受ける事となった。中性子数54のTc は Mo に、同じく56の Tc は Ru に安定性で劣り、不安定核種となってしまった。中性子数がさらに多い、または少ない核種は、そもそも安定性の土俵に乗れず、結果としてテクネチウム以外の元素は安定同位体を得たが、テクネチウムだけが安定同位体を得られなかった。かくしてテクネチウムは、安定同位体の存在しない、放射性元素となった。β線を放出せず適量のγ線のみを放つ Tc の特性を活かし、核医学という医療の一分野を支える重要な元素で、骨・腎臓・肺・甲状腺・肝臓・脾臓など身体各部に対するシンチグラムに用いる。利用例としては、血流測定剤、骨イメージング剤、腫瘍診断剤の放射線診断薬など。テクネチウムを含む物質を放射性医薬品として投与した場合の体内動態などは充分解明されている上、検査目的に応じた多種の注射剤が供給されている。日本ではテクネチウムを含む薬剤を用いた緊急検査も行えるほどの利用ノウハウが蓄積されているが、国産化されておらず、全量を輸入している。
出典:wikipedia
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