スカンジウム()は原子番号 21 の元素。元素記号は Sc。遷移元素で、イットリウムと共に希土類元素に分類される。第3族元素の一つで、スカンジウム族元素の一つでもある。スカンジウムは銀色の軟らかい金属であり、空気中で酸化されて淡黄色もしくは淡桃色の酸化皮膜が生成する。また、常温でハロゲン元素とも反応する。比重は2.99、融点は1541 、沸点は2836 。常温常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP, α-Sc)。水や希酸には徐々に溶解し、熱水や酸には易溶。ただし硝酸とフッ化水素酸を1:1で混合した溶液に対しては反応せず、これは不動態層が形成されるためと考えられている。空気中で燃焼させると、黄色く輝く炎を発して酸化スカンジウム(III)を形成する。通常+3の酸化数を取る。スカンジウムの同位体はScからScまでに渡り、唯一の安定同位体はScである。また、Scは天然に存在する唯一のスカンジウムの同位体でもあり、7/2のスピン角運動量を有している。他の同位体は全て放射性同位体であり、最も半減期の長いものはScの83.8日、次いでScの3.35日であり、他に4時間のScや3.7時間のScなどがある。その他の放射性同位体の半減期は全て4時間未満であり、それらの大部分は2分未満である。スカンジウムはまた5つの核異性体があり、最も安定した物は半減期58.6時間のScである。Scよりも質量の小さな同位体の主な崩壊モードは電子捕獲であり、質量の大きな同位体はベータ崩壊である。前者ではカルシウムの同位体が、後者ではチタンの同位体が主な娘核種となる。地殻中においてスカンジウムは特に希少であるわけではなく、その存在度は18-25ppmと予想されておりコバルトと同程度である。スカンジウムは地球上で50番目(地殻中では35番目)、太陽中では23番目に存在量の多い元素である。しかしながら、スカンジウムは濃縮されることなく疎らに分散しているため多くの鉱石中で痕跡量しか存在していない。濃縮されたスカンジウム源としては、スカンジナビア半島やマダガスカル島で産出する希少鉱石のや、ガドリン石などが知られているのみである。トルトバイタイトでは、最大45%のスカンジウムが酸化スカンジウムの形で含まれている。スカンジウムの安定同位体は超新星爆発時に起こるr過程によって合成される。1869年、周期表の父として知られるドミトリ・メンデレーエフによって、原子量40から48の間の元素であるエカホウ素の存在が予言された。1879年、この元素はスウェーデンの分析学者ラース・フレデリク・ニルソンによりガドリン石およびから発見され、ニルソンは2グラムの高純度な酸化スカンジウムを合成した。彼はスカンジナビアを意味するラテン語のスカンジアから、この元素の名前をスカンジウムと命名した。ニルソンはメンデレーエフの予言を知らなかったが、ほぼ同時にこれを発見したペール・テオドール・クレーベによってスカンジウムがメンデレーエフの予言したエカホウ素にあたると判明した。1937年、カリウム、リチウムおよびの共晶混合物を700から800度で電気分解することで初めて金属スカンジウムが生成された。スカンジウムのアルミニウム合金向けの用途が始まったのは、1971年にアメリカで特許が出されて以降のことである。アルミニウム-スカンジウム合金はソビエト連邦でも開発されていた。ガドリニウム-スカンジウム-ガリウムガーネット(GSGG)レーザー結晶は、1980年代から90年代にかけてのアメリカの戦略防衛構想における戦略防衛の用途開発に用いられていたスカンジウムは反応性と価格が共に高いため、化合物の応用法の研究開発はあまり進まなかった。このため以前は有機化学の限られた分野で触媒としてわずかに用いられるにとどまっていたが、現在は用途の拡大に伴い新素材として注目されている。その筆頭格が照明での利用で、ヨウ化スカンジウム ScI をメタルハライドランプに使用してより強い光を得られる。ほかの用途としては、アルミニウム合金への添加、ニッケル・アルカリ蓄電池の陽極にスカンジウムを加えて電圧の安定や長寿命化を計ったり、ジルコニア磁器に酸化スカンジウム(III)を添加してひび割れを防ぐなどの用途がある。スカンジウムの重量比でみた主要な用途は、高機能素材であるアルミニウム-スカンジウム合金の形での、一部の航空宇宙用部品、スポーツ用品(自転車、野球のバット、射撃、ラクロスなど)の材料である。しかしこれらの分野では、軽さや強度が近いチタンの方がはるかに多く利用されている。スカンジウムをアルミニウムに添加すると、溶接における加熱部分での再結晶化や結晶粒成長が大幅に抑制される。アルミニウムは面心立方構造の金属であり、粒径の縮小はそれほど強度に対する効果がない。しかし AlSc が細かく分散することによって、合金中にいろいろな析出相が有るにもかかわらず、ミクロな単位で強度が増大する。本来の添加の目的は、溶接可能な構造材用合金の加熱時の過度な結晶粒成長の抑制であるが、添加によって二つの効果が促進される。一つは他の相がより細かく析出することによる強度の大幅な増大で、もう一つは時効硬化型合金における粒界の非析出帯の減少である。最初にアルミニウム-スカンジウム合金が使用されたのは、旧ソビエト連邦の一部の潜水艦発射弾道ミサイルのノーズ・コーンである。海氷を貫通してもミサイル本体が壊れないほどの強度を確保できたため、北極海での、海氷下に潜行中のミサイル発射が可能になった。は、有機化学においてルイス酸触媒として用いられる。1990年代半ばに東邦ガスの水谷らが、酸化ジルコニウム(IV)に酸化スカンジウム(III)を4-11 mol%固溶させたスカンジア安定化ジルコニアを固体酸化物燃料電池の電解質として見い出し、2000年になって第一稀元素化学工業の柿田らによって世界で初めて工業生産された。
出典:wikipedia
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