皮膚呼吸(ひふこきゅう)は、皮膚を利用した呼吸のことである。この語は分野ごと、業界ごとに、異なった用法で用いられているのでそれぞれ解説する。生物学において皮膚呼吸(cutaneous respiration)とは、「体表を用いて行われる外呼吸」とされている(『岩波 生物学辞典』【皮膚呼吸】)。本来、体表面というのは、酸素を通過させる機能をもっている。動物は、体外とのガス交換のための器官を備えるものが多いが、そのような構造を持たないものもある。特別な呼吸器官をもたない動物は皮膚呼吸に頼ることになるという。例えば環形動物のミミズやヒル、触手動物のホウキムシやコケムシなどで行われている。特に小型の動物では皮膚呼吸だけで十分なガス交換ができるので、特定の呼吸器官を持たない場合が多い。それなりの呼吸器官を持つものでも、皮膚呼吸をする動物は多い。脊椎動物では両生類や爬虫類は、肺で呼吸と併用するかたちで、皮膚や粘膜を利用した皮膚呼吸も行っている。咽喉部や総排泄腔の内壁に毛細血管の豊富な部位があり、この部分がガス交換に関与している。ただし、呼吸器による呼吸と皮膚呼吸が併用されている場合では、全呼吸に占める皮膚呼吸の割合(酸素摂取量の割合)は、生物の種類および温度条件などによって異なっており、例えば、ウナギの場合では、温度が低いほどその割合は高く、10℃以下では皮膚呼吸による酸素摂取量の割合は全呼吸に対して60%以上に達する。(これが、ウナギが夜間には陸にはい上がることができる理由と言われている)。カエルの場合は、冬眠中かそうでないかで異なり、普通は皮膚呼吸が30~50%程度であるが、冬眠中は皮膚呼吸が70%になるという。鳥類や哺乳類では、皮膚呼吸の割合は低く、例えばハトやヒトでは、1%以下とされている。両生類の中にはプレソドン科やのように肺を持たない種もいる。「皮膚呼吸」という言葉は、美容や発毛の分野では誤った使い方をされている。化粧品会社の宣伝において、皮膚が美容、健康上好ましい状態で外気に晒されるのを、人体そのものに見立て、比喩表現として「皮膚呼吸」という言葉が使用されることがある。例:「皮膚呼吸が阻害されるとは、化粧品類を塗布した際に、分泌物が汗腺や皮脂腺からスムーズに分泌されるのが阻害され、皮膚が重く感じる現象のことを言う」この、比喩的な意味での皮膚呼吸の確保は、実際に肌の健康状態などに影響を与える(下記、注)。ただし、上記の用法を生物学的な意味での「ガス交換としての皮膚呼吸」と混同することは後述の誤解を招く原因となっている。「皮膚呼吸を妨げると命に関わる」といった説が広がっているとされる。この説の起源は明らかでないが、医学関係者は否定しており、迷信、都市伝説、あるいは疑似科学の類であるとされる。一般に、金粉に関して言われることが多い。金粉で全身を覆うと皮膚呼吸ができず死に至る、というもので、一説では、『007 ゴールドフィンガー』で、ボスを裏切った女性が全身に金粉を塗られて殺された場面が登場したことが起源とも言われているが、それより半世紀近くも前となる1914年に発表された谷崎潤一郎の小説『金色の死』では、全身に金箔を貼り「毛孔が塞がれた」ために死ぬ男が登場しており、このような俗説自体はより古くから存在した可能性が考えられる。一方で、一部の小学生向け雑誌などで、古くから「金粉を塗った場合、1時間が限度」と記載されるなど、広く知られていたことも確かである。また『鉄腕アトム』に、純金を敷き詰めた浴槽に入ることを趣味としていた人物が「金中毒」になる、というエピソードが登場している。金粉だけでなく、他の物質でも同様のことが言われる例もある。『医学パズル』(中野昭一著 光文社 カッパブックス 1975年初版)の209ページおよび210ページでは、大正年間に行なわれた仮装行列で、南洋の原住民に扮するため全身にコールタールを塗った男性が数時間で死亡した事実が挙げられているが、この場合も「皮膚呼吸はごくわずかで死因にはならず、全身がコールタールで覆われたため汗や放射による体温の調節ができず熱中症により死亡した」とされている。受刑者の全身にタールを塗るタール羽の刑も同様。死ぬという描写は『ハックルベリー・フィンの冒険』にも登場する。広範囲のやけどが致命的なものとなることがある(例えばアメリカ合衆国では年間3000~4000人ほどが重度のやけどのために死亡している、とされる。)このようなやけどの結果起きる死亡に関して「その要因の一つが皮膚呼吸の阻害である」という人々がいるというが、(医学書などでは)皮膚呼吸の阻害は生命にかかわるものとはされていないという。例えばメルクマニュアル医学百科は「皮膚呼吸の阻害」は挙げていない。やけどで死亡に至る原因は以下のようなものだという。
出典:wikipedia
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