命名権(めいめいけん)は、人間や事物、施設、キャラクターなどに対して命名することができる権利である。1990年代後半以降、スポーツ、文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立した。また、科学の世界においても、新発見の元素や天体に対して発見者が、生物の学名は記載者が、それぞれ命名権を持つ慣習がある。日本では、特に施設命名権をネーミングライツ(Naming rights)と呼ぶことが多い。世界の多くの地域では、親または親から委託を受けた者が新生児を命名している。日本でも親が子を命名するのが一般的であるが、その命名権の保有・行使について、命名権は親権に含まれるとする意見がある一方、本人固有の権利であるが親が代行しているとする意見など、議論は分かれており法学的な定説はない。法務行政上は、命名権の濫用と認められる場合、社会通念上不適当と認められる場合には、戸籍の届け出が受理されないことがある(例:悪魔ちゃん命名騒動)。元素については、名称が未確定な新元素はIUPACの命名法による元素の系統名で呼ばれる。IUPAC及びIUPAPによって発見が認定されると、発見者に命名権が発生し、IUPACによる承認を経て最終的に名称が確定する(未発見元素の一覧#発見の定義参照)。天体については、小惑星についてのみ発見者に命名提案権が与えられており、IAUの小天体命名委員会による審査を経て命名される(小惑星#命名規則参照)。準惑星については命名規則は定められていないが、エリスの場合には発見者グループが提案した名称が採用されている。生物の学名は、記載者が命名権を持つ(学名#命名参照)。従来から、スポーツ大会などにスポンサーの名称を冠する形での命名権ビジネスは存在していたが、1990年代後半頃から、アメリカにおいてスポーツ施設等の名称に企業名を付けるビジネスが広がった。まず、メジャーリーグでクラシカルな新球場が多く建設されたとき、その名称に企業名が命名され始め、高い費用対効果が認められたことから、他のスポーツ種目やヨーロッパのスポーツ界へと広がっていった。日本においては、2000年代前半から赤字の公共施設の管理運営費を埋め合わせる手段のひとつとして導入され、その範囲はスポーツ施設や文化施設、路面電車の停留所などに及んでいる。ちなみに地方自治法において命名権売却は「公有財産の処分」にあたらないため、各自治体の議会での議決は必要ない。施設等の管理者にとっては、命名権を販売することにより収入が得られるメリットがあり、命名権を購入する企業にとっては、スポーツ中継やニュースなどで命名した名称が露出する機会を得られ、宣伝効果が見込まれる。なお、国際大会では主管団体の規定により命名権が使用できない場合がある。この場合、命名権を導入している施設については施設名に正式名称を使用することが義務付けられる。正式名称そのものが命名権によるものになっているケース等では、別称を付けて対応することとなる。NHKが命名権により商標が付けられた組織、施設をニュース等で取り上げる際には、繰り返しを避けて抑制的に名称を用いる、としている。大会等の名称に商標が付けられた冠大会についてはできるだけ言い換えるが定着している場合には抑制的に用いる、としている。同一の施設でありながら、契約満了または契約変更によって比較的短いスパンで別の名称に変わることを問題視する意見がある。例えばYahoo!BBスタジアム→スカイマークスタジアム→ほっともっとフィールド神戸について、アメリカでの命名権(20年契約などの長期契約が基本)と比較して「球場名に愛着を抱くファン心理への配慮」が足りないことを示唆する批判がある。税金で建設された公共施設を、一私企業の名称に変更することは公共イメージが損なわれるという意見もある。事実、ナイキジャパンは宮下公園の命名権を取得し「宮下NIKEパーク」と改称する予定だったが、反対運動が相次いだことで命名権行使を撤回した(ただし、命名権使用料の支払いは継続)。また、京都市美術館については、2019年に新館建設などリニューアルを実施するのに合わせ、京都市は2016年9月1日から31日にかけ、費用の獲得と愛称を決める目的で命名権を募集したが、市民団体や有識者などからは、「公共の文化財に一企業の名称が被るのは相応しくない」などの異論が出ている。新しい名称がなかなか定着せず、旧称を併記した結果、契約違反に問われることがある(中台運動公園におけるサウンドハウスとの命名権契約解除事例)。命名した企業に不祥事が発覚した場合、命名権を導入した側に批判が寄せられるケースもあり(オリンパスホール八王子に対する八王子市への批判など)、実際に命名権契約が解除され名称が変わることもある(西武ドームにおけるグッドウィルとの契約解除など)。また、命名権の契約金の高さから企業の買い手がつかない場合というケースもある。一例として、札幌ドームでは2011年に「5年間5億円、札幌ドームの名称を基本的に使うこと」を条件に募集したが、初回募集の1社とは折り合いがつかず、再募集の時には応募企業がなく、その後契約年数を延ばし実質的値下げにも踏み込んで下交渉を行ったものの見通しが立たないことから2011年内の再々公募を見送った経緯がある。施設管理者が一方的に命名権の導入を試みた結果、その施設を本拠地として使用しているプロスポーツチーム等の反発を招くことがある。前述の札幌ドームのケースでは北海道日本ハムファイターズが「(札幌市が自分たちへの)連絡なしに命名権を公募することに疑問を感じる」と猛反発している。一方で、キンチョウスタジアム・QVCマリンフィールドなどのように、施設命名権の契約にプロスポーツチームが関与した場合、契約料をプロスポーツチームと折半する(施設の命名権による収入が全額施設のものとなると限らない)ケースもある。都道府県や市町村などの地方自治体が所有している公共施設が命名権を導入する場合、施設の呼称そのものを対象とするケース(横浜市・新潟県など)と、施設の愛称のみを命名権の対象とし、正式名称も従来通り使用するケース(岡山県・香川県など)とがある。特に前者の場合、マスメディア等で対外的に施設名称を表示する際には、命名権による呼称のみを優先的に使用しなければならない旨について自治体側が規定を設ける場合がある。但しいずれの場合も、命名権によって制定された呼称を条例上の施設名称にまで及んで改称したケースはほとんど無く、条例上の施設名称は本来のものを継続して使用している。国際サッカー連盟 (FIFA) や国際陸上競技連盟 (IAAF) など国際競技団体の一部は、自らが主催・主管する大会に於いて「企業名・商標名を冠する競技施設では公式戦を開催できない」と規定している。また大会・興行の公式スポンサー以外の企業名称が使用できない場合や、命名権を取得している企業の同業他社がスポンサーに付くケースもある。これらのケースにおいては施設名には正式名称(旧称)を使用する。また必要に応じて、場内に掲出されている企業名のロゴを覆い隠す措置を執ることもある(FIFAではこれらの規定を「クリーンスタジアム」と称している)。また珍しいケースではあるが、命名権を購入した企業側が「旧名称のままとするのが望ましい」として呼称変更をあえて行わないことがある。鎌倉市の海水浴場3ヶ所の例では、2013年に『鳩サブレー』で知られる菓子店の豊島屋が権利を購入したものの、一般公募の結果呼称変更を行わず旧名称のまま運営を続けている(ただし形式上は「命名権を行使して、旧名称と同じ呼称を名付けた」形である)。公共性のある施設に企業名・商標名を冠していても、必ずしも命名権によるものとは限らない。下記はその例。主に施設を所有している(いた)企業が自社の社名やブランド名を冠する場合が多い。日本のプロスポーツにおいて、公式戦開催時のみ場内の特定施設(観客席など)に命名権を採用するケースがある。神戸市御崎公園球技場(神戸ウイングスタジアム)では、Jリーグのヴィッセル神戸の主催ゲーム限定で2005年3月より観客席の名称に命名権を採用しており、メインスタンドを「楽天スタンド」、バックスタンドを「Kawasakiスタンド」と称している。施設全体に企業名を冠する場合とは異なり、スタジアムではなく、興行主のヴィッセル神戸(運営会社クリムゾンFC)に2社から広告料が支払われる。阪神甲子園球場では、2008年からプロ野球開催日のみ、新設されたフィールドシートに「SMBCシート」(1・3塁側 2012年まで「みずほ銀行シート」)「東芝シート」(バックネット裏)の命名権が、また、2009年からプロ野球開催日のみ、3塁側に新設された掘りこたつタイプのボックスシートに「三ツ矢サイダーボックス」(アサヒ飲料)の命名権が取り付けられた(2012年からは1塁側にも新設・命名)。さらに2013年から1塁側アルプス席の最前列にセブンイレブンジャパンと締結した「セブンイレブンエキサイトシート」(ライトポール側付近)、「セブンイレブンファミリーシート」(アイビーシート側付近)が設置される。球場そのものの命名権は現在予定されていない。広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)では、プロ野球開催日のみ、正面及び内野砂かぶり席と2階テラスシート、ライトポール際観客席(びっくりテラス)、ライトスコアボード際観客席(寝ソベリア、2011年シーズン - )に命名権を採用しており、正面砂かぶり席を「東芝シート正面砂かぶり」(2009年シーズン、東芝))→「ビックカメラシート正面砂かぶり」(2010年シーズン - 、ビックカメラ)、内野砂かぶり席を「KIRINシート砂かぶり席」(キリンホールディングス)、2階テラスシートを「コカ・コーラテラスシート」(日本コカ・コーラ/コカ・コーラウェスト)、ライトポール際観客席を「エバラ黄金の味 びっくりテラス」(エバラ食品工業)、ライトスコアボード際観客席を「セブン-イレブンシート寝ソベリア」(セブン-イレブン・ジャパン)と称している。この場合は、同球場の指定管理者の広島東洋カープとともに同球場の共同運営を行う三井物産に3社から広告料が支払われる。宮城球場(2014年より「楽天koboスタジアム宮城」)では、2009年設置の「グループシート5」に2010年まではローソン、2012年からはセブンアンドアイホールディングス/セブンイレブンジャパン、また「ボックスシート5」にも2012年よりみちのくコカ・コーラボトリングが命名権を取得し、前者は「ローソングループシート5→セブンイレブングループシート5」、後者は「コカコーラボックスシート5」とされている。札幌ドームでは、それまでプロ野球開催日のみ設置していた3階席「スカイビューボックスシート」を、2012年よりローソンと契約を結び「ローソンスカイボックスシート」、三塁側外野席で陽岱鋼の背番号1をかたどった後方一部エリアを2013年シーズンより「ローソン 岱鋼シート」・中田翔の背番号6をかたどった一部エリアを2014年シーズンより「ローソン 中田翔フルスイングシート」、また一塁側内野A指定席一部の女性向け座席「シンデレラシート」をセブン-イレブン・ジャパンと契約を結び2013年シーズンより「セブン-イレブン シンデレラシート」、2015年よりシンデレラシートエリア下の一部座席を2015年シーズンより「セブン-イレブン ビジョンシート」と命名している。横浜スタジアムは2013年の内野ファウルゾーンにエキサイティングシートというフィールドシート席が設置されるが、このうちの1塁側の箇所をセブンイレブンジャパンと締結し「セブンイレブンエキサイティングシート」と命名されている。京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場(西京極スタジアム)では、Jリーグの京都サンガF.C.の主催ゲーム限定で2011年3月より入場ゲート(第4ゲート)に命名権を採用しており、「auゲート」(KDDI)と称している。鈴鹿サーキットでは、最終コーナー直前のシケイン(ターン16・17)に命名権を採用、2014年3月1日に日立オートモティブシステムズとパートナー契約を締結し「日立オートモーティブシステムズシケイン」と命名されている。施設以外に、組織、作品、イベント、機器等に命名権が導入されるケースがある。単発の大会やトーナメント戦の冠スポンサーではなく、リーグ戦の命名権者(タイトルパートナー)となった事例。日本野球機構(NPB)管轄のプロ野球では、現在は命名権に基づくチーム名は存在しない(チーム名に含まれる企業名は基本的にオーナー企業の名称)が、二軍に限定すれば過去には複数の事例がある。独立リーグでは、2014年以降、命名権に基づくリーグ名・チーム名が誕生している。また、実現しなかったものとして、2004年に計画された大阪近鉄バファローズの命名権導入が挙げられる。親会社の近畿日本鉄道(近鉄)の経営改善強化策の一環によるものだが、他球団からの反対により断念。このことが結果的に2004年のプロ野球再編問題の引き金となった。このほか1970年代までに以下のようなスポンサー名への球団名変更の事例がある。ただしこれらは「球団自体へのスポンサード(経営に関与しない資金提供のみ)に付随する球団名の変更」であり、球団名のみを売却したわけではない。なお、広島東洋カープの「東洋」は球団の筆頭株主であるマツダの旧社名(東洋工業)に由来するが、実質的にはマツダの創業家である松田家による同族経営がなされており、「親会社の名称によるチーム名」と「命名権(スポンサード)によるチーム名」の両方に類するとも、あるいはどちらでもないとも言える。B.LEAGUEではチーム名に企業名を入れることを原則として禁止しているため、今後新たに命名権を取り入れることはできない。ただし、前身リーグより企業名入れているクラブについてはクラブ公式文書で使用する場合に限り継続して使用することが可能である。B.LEAGUEの前身のひとつであるJBL→NBLでは命名権を取り入れたクラブが存在した(他チームに含まれる企業名は運営企業の名称)。なお、Jリーグ所属クラブ(準加盟も含む)には企業名が禁止されている為、命名権をつけたチームはない。JFLでは可能とされているが、今まで命名権を採用したクラブは存在しない。日本のプロボクシングジムにおいては命名権を売却するケースは非常に多い。代表的な例として、以下のような事例がある。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。