山形新幹線(やまがたしんかんせん)は、狭義にはミニ新幹線方式により福島県の福島駅から山形県の山形駅を経て、同県の新庄駅まで奥羽本線を走行する東日本旅客鉄道(JR東日本)の新幹線電車を使用した列車の通称およびその列車が走行する同区間の通称である。ラインカラーはオレンジ()。「山形新幹線」はあくまで通称であり、正式にこの名称を与えられた路線は存在しない。東京駅 - 福島駅間で東北新幹線との直通運転を行っているため、広義には当新幹線の列車「つばさ」の走行区間である東京駅 - 山形駅 - 新庄駅間が山形新幹線と案内される。以下、特記なき場合は狭義の山形新幹線(福島駅 - 新庄駅間)について記述する。1992年、全国新幹線鉄道整備法に基づかない新在直通方式のミニ新幹線として開業した。名称の通り、福島駅 - 新庄駅間のほとんどが山形県内である。「新幹線」と案内されているものの、この区間は正式には在来線である奥羽本線の一部であり、この区間で運転される特別急行列車「つばさ」も在来線列車の扱いである。山形新幹線の在来線区間は設備的制約(踏切の存在、130km/hを超える速度での安全設備が未整備、福島・山形県境の急勾配区間の存在)のため、最高速度は130km/hである。また、この区間を走る普通列車には山形線の愛称が付いている。山形駅 - 新庄駅間の延伸(約61キロ)にあたっては、総事業費351億円全額を山形県観光開発公社(現・公益社団法人山形県観光物産協会)が事業主体のJR東日本に無利子貸し付けする形式をとった。地元が必要と思うものを地元の資金で建設するという画期的な形式での新幹線整備であったが、この方式で建設されているのは2012年時点ではこの区間のみである。朝と夜の一部列車を除き、東北新幹線内(東京駅 - 福島駅間)は「やまびこ」の仙台駅発着列車と併結して走る。なお、山形新幹線の運転開始当初、併結車両は2001年9月20日まで200系だったが、1999年4月29日からE4系(Maxやまびこ)となり、2012年3月17日から一部の列車が、同年9月29日以降は全列車がE2系(やまびこ)になっている。臨時列車も含め「やまびこ」と併結する列車の東北新幹線内の停車駅は、基本的に併結する「やまびこ」に合わせ東京駅・上野駅・大宮駅・宇都宮駅・郡山駅・福島駅であるが、全区間単独運転列車は上野駅・宇都宮駅は一部列車のみ停車し、郡山駅はすべて通過する。福島駅 - 新庄駅間の停車駅は「駅一覧」を参照。車体色は銀色に緑のラインである。開業当時はそれまで白やクリーム色といったイメージがあった新幹線の中で際立って目立っており、車体色も銀色で、窓周りは黒と緑の細帯に塗られていた。2014年春以降、車体色は白をベースに橙の細帯と屋根は紫に塗られる塗装に順次変更されている。なお、福島駅での連結・切り離しは、東北新幹線と奥羽本線を結ぶ連絡線とホームが、現在下り側に1本しか建設されていないため、上り・下りともに14番線(下り用のホーム)でのみ行う。そのため、上りの連結相手のやまびこも同駅の北で一旦下り本線を渡って14番線ホームまで入線しなければならない。連結したあと、再び下り本線を渡って上り線に合流する。そのため、ダイヤ改正時は必ず緻密な計算が求められる。新庄延伸後、東京発新庄行き「つばさ」において、始発駅の東京駅から山形駅までは、ホームや車体側面の行き先表記が「山形・新庄」行きと案内されており、仙台行き「やまびこ」との併結時のホーム列車案内は「仙台・山形・新庄」と、行き先が3つあるかのような表記がなされている。山形新幹線の線路では地域輸送のための普通列車も走っており、地域輸送については「山形線」と呼ばれる。なお、この区間を走る普通列車専用車両は、新幹線の軌道幅である標準軌に合わせ、JR線では初めて標準軌用として製造され投入された。なお、山形新幹線は関根駅 - 羽前中山駅間(北赤湯信号所付近を除く)と山形駅 - 新庄駅間のほとんどが単線となっており、新幹線が普通列車を待ち合わせるという珍しい風景も見られる(同じミニ新幹線方式で建設された秋田新幹線も同様で、どちらも速達性の障害となっている)。なお、新幹線は騒音への配慮や保守の関係から午前0時から午前6時までは定期列車は運転されないが、山形新幹線は前述の通り在来線扱いであるため、上り定期の始発列車「つばさ120号」は、新庄駅を5時41分に発車する。編成記号の「S」は、系列に関係なく非営業用車両全般に用いられている。山形新幹線「つばさ」で使用されている車両は次のとおり。(2015年3月14日現在)1000番台と2000番台の使い分けはなく、共通運用となっている。400系とE3系は運用上の区別はされておらず、共通の運用となっていた。2007年7月の定例社長会見において、2008年12月より新型車両(2008年10月にE3系2000番台に決定。7両編成12本の計84両)を導入の上、2009年夏までにすべての400系を置き換えることが発表された。2010年4月18日にはさよなら運転が行われ、400系の営業運転が終了した。E3系1000番台L51・L52編成は、新庄延伸時に導入された編成であった。2014年に0番台から改造された1000番台L54・L55編成への置き換えにより廃車となった。全列車に普通車(12 - 15号車は指定席、16・17号車は自由席)とグリーン車(11号車)を連結する。なお、JR東日本は2007年3月のダイヤ改正以降、東北・上越・山形・秋田の各新幹線および在来線特急列車のすべてを禁煙車とし、喫煙ルームなども設けていないため車内での喫煙はできない。なお、特急券については東北新幹線との乗り継ぎ料金制度がある。交通需要について国土交通省が2000年に調査した都道府県間鉄道旅客流動データによると、山形県を目的地とする鉄道旅客のうち、東北新幹線沿線(東京都・埼玉県・栃木県・福島県)からの年間旅客数は99.9万人であった。これらの各出発地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の66.5万人、次いで埼玉県の18.3万人、福島県の11.4万人である。一方、山形新幹線沿線(山形県)を出発地として東北新幹線沿線(福島以南)を目的地とする年間旅客数は113.3万人であった。これらの各目的地のうち最も旅客数が多かったのは東京都の75.4万人、次いで埼玉県の20.3万人、福島県の14.7万人である。沿線各都県間の旅客流動状況(2000年)は以下の通り。(単位:千人/年)また、秋田県の湯沢市や横手市など同県内陸南部からの需要も多い。同県内陸南部から東京方面へは秋田新幹線大曲駅を利用した方が所要時間が短く、本数も多いが、遠回りの経路であるため、山形新幹線新庄駅経由の方が数千円安く東京へ行けること、「こまち」・「はやぶさ」・「はやて」には設定がない自由席があるためや、新庄駅で平面での乗り換えが出来ること(大曲駅で秋田新幹線への乗り換えは必ず階段利用となる)、始発の列車で出発した場合は山形新幹線経由の方が早く東京に着くことなどがある。そのため、夏季や年末年始などの多客期には同県側から山形新幹線に連絡する奥羽本線列車は都心の夕ラッシュ時並みに混雑する。需要の多さに対応するため、多客期には臨時列車の「つばさリレー号」が同県側から運行される。さらに国道13号に面している新庄駅東口には1,500台の無料駐車場があるため、同県南部からのパークアンドライド利用者もいる。山形新幹線はミニ新幹線方式を採用したため、狭軌(軌間 1,067 mm)だった奥羽本線の山形新幹線走行区間(福島駅 - 新庄駅間)を標準軌(同1,435mm)に改軌する必要があった。しかし、それによって山形駅以南と在来線の仙山線や左沢線、新庄駅以北の各線が直通できなくなる不都合が生じた。なお、山形駅 - 羽前千歳駅間は狭軌・標準軌の単線並列のため、仙山線と左沢線は山形駅までは直通可能である。開業当時、踏切事故が起こった時は「新幹線踏切事故」と報道された。「新幹線」とはいえ、奥羽本線を改軌・改築した区間には130km/hの速度規制があるのだが、普通の新幹線並みの高速度で踏切事故を起こしたと誤解を招くものであった。開業後、各踏切はほかの在来線にはないゲート状の大掛かりなものに改良されている。前述の通り、「つばさ」は福島駅で「やまびこ」と増解結を行うが、奥羽本線とのアプローチ線が新幹線下り線(14番線)としかつながっていない(福島駅の山形新幹線用新幹線ホームはこの14番線のみであるため、「つばさ」の上下同時発着は不可)。上りの「やまびこ」東京行とつばさを連結する場合、とくに作業が煩雑になる。仙台方から入線した「やまびこ」は下り本線を横断し14番線に渡って「つばさ」を連結し、再度下り本線を横断して上り線に戻らなくてはならず、平面交差を2度行う必要があるため、福島駅の構造が運行上の障害になっている。なお、山形空港の年間利用客数は1991年に約70万人でピークとなったが、ドル箱路線の東京便と競合する山形新幹線の開通で1992年から減少に転じ、2009年にはピーク時の4分の1以下の約17万人にまで落ち込んでいる。そのため、空路維持を目的とした助成が行われている。新庄駅から酒田駅まで陸羽西線を単線標準軌化・交流電化・トンネル改修を行い、羽越本線を標準軌・狭軌並列、もしくは3線軌化するという構想。事業費は350億円を見込む。東京駅 - 酒田駅間を9分短縮するという構想が山形県庁内部で行われていた。高橋和雄山形県知事や山形県庁内部では、置賜地方から庄内地方までを1本の鉄路で直結することによる県土軸の構築が図れるとして推進する意見が強かった。しかし、当の庄内地方では推進派の酒田市に対し、鶴岡市はむしろ羽越本線高速化(ミニ新幹線ないしフリーゲージトレイン導入、在来線改良)に積極的であり、両市の意見対立があった。新庄から陸羽西線を経由して庄内地方に進入する場合、陸羽西線は酒田へ至り、庄内地方のもう一つの拠点都市である鶴岡市へは途中の余目駅で羽越本線にアクセスする必要がある。即ち、陸羽西線経由で酒田・鶴岡の両市へ向かう場合、「二股化」が起こり、両都市を一筆の路線で直結しにくい状況となる。この点も、本案における酒田・鶴岡の両市の対立の背景として無視できない。また、地理的歴史的経緯からも、奥羽本線及び並走する国道13号線に沿った奥羽新幹線の代替としての機能から、奥羽本線沿いへの延伸案(後述の案も参照)がより自然であるとの見解もある。前述の県土軸構想も、あくまで山形県内での交通網の完結に基づく発想であり、他県との連携や国土軸構想上の視点では羽越本線高速化の案が理に適うとする意見もある。2006年3月、山形県は山形新幹線の庄内延伸並びに新潟県と共同で行っていた羽越本線高速化調査の最終結果を公表、費用対効果では羽越本線を高速化し、新潟駅新幹線ホームでの対面乗り換えが有効との結論を下した。羽越本線高速化では新潟県にも費用分担を求めることが可能であり、国の幹線鉄道活性化事業に認定されれば補助金が受けられるのに対して山形新幹線延長では県単独の事業となり、国からの補助も見込めないことも障害となり、酒田延伸構想は立ち消えとなった。新庄から大曲駅までの延伸が沿線自治体の一部で論議されており、新庄駅構内に期成連絡会の事務所が構えられているが、現実問題として財源負担や時間短縮効果について問題点が多く、実現の可能性が低いと見られている。山形新幹線延伸早期実現期成同盟会と山形新幹線大曲延伸推進会議が実現を訴え、秋田県の「あきた21総合計画」では奥羽南線の高速化を2010年までに着手することが盛り込まれており、秋田県南では地元自治体主催の山形新幹線大曲駅延伸の集会などが行われているが、山形新幹線機能強化検討委員会の調査では、大曲延伸に530億円の費用がかかり、採算性が厳しいとされた。また、改軌延伸を困難にしている原因として山形新幹線の建設に際して改軌に使われた軌道連続更新機(愛称:ビッグワンダー)がすでに売却済みで日本国内には無い(秋田新幹線の開業工事に引き続いて山形 - 新庄間での工事に使われたあと、必要性がなくなったためJR東日本がタイ国有鉄道へ売却した)という問題も挙げられる。安全・安定輸送策を進めることや、雪害・降雨・防風など災害対策として、沿線の倒木対策、信号設備改良、融雪設備改良、踏切安全対策の実施、高速化を進めるために部分的な複線化、曲線半径の拡大や板谷峠に21.9kmのトンネルを掘って短絡路線を新設するなどの改良計画がある。2002年の山形県議会では、この事業費として840億円を見込み、所要時間が16分短縮されるとしているが、未着手である。2015年5月の山形県知事とJR東日本の社長との会談で、山形新幹線の運休や遅れにつながる大雨、豪雪対策については、2017年までの2年間で福島 - 米沢間の抜本的な対策に向けて調査すると述べた。
出典:wikipedia
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